ほかげのレビュー・感想・評価
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戦争孤児と戦争未亡人の仮りそめの幸せ
さすが塚本晋也です。令和の焼跡闇市映画。見応えありました。短編映画だった?と思うほど濃密な時間があっと言う間に過ぎ去った感じ。完璧に近い脚本と映像でした。
朝ドラのブギウギの趣里とはまるで別人。凄みがありました。魂のこもったセリフ。焼酎瓶を定期的に持って来るオヤジが斡旋屋で、焼け残った小料理屋で商売させられていた。
後半最後のほうで顔を見て逃げて行ったところをみるとひどい梅毒疹が出来ていたんでしょう。それで少年には入って来るなと。
闇市でなけなしの1円札で薬を買おうとするけなげな少年。闇市まで聞こえてきた銃声はおそらく彼女が自殺したんでしょうね。出征前は小学校教師だった兵隊は廃人に。結局、疑似家族にはなれませんでしたが、短い夏に女が見た仮りそめの幸せが不憫でなりません。
ほかげは帰還兵が飯盒の蓋の上に灯した固形燃料の灯りで彼女の仮りそめの幸せをの象徴なんだと思いました。
森山未來の役の元兵隊はこれでやっと戦争が終わったと言ってましたね。
彼を通して少しはカタルシスを感じました。
少年は闇市の煮込み売りのオヤジにくっついて生き残れたのか?
戦争孤児の少年は自分が拾った一丁の拳銃がもたらしたトラウマをも抱えて生きていかねばならないのは辛すぎます。
早くNHKで地上波放映しないといけませんね。でも、JKが観てわかるかな~
終わらない悪夢のその果てに。
戦後間もない日本。焼け残った居酒屋で体を売る女、盗んで生きる戦争孤児、元教師の復員兵、何かを成し遂げようとする謎の男。戦争が終わったからといってすぐそこに未来や希望がある訳ではない。皆今日食べるものすらない。
戦争で心まで焼かれた人間の痛みや、恐怖や、執念が小さな炎に照らし出される。その禍々しさ。その残酷さにスクリーンに釘付けになった。あんなに幼い子供が1人で生きていかなくてはならない。きっと優しかった先生が痩せ衰え虚ろな目で朽ちてゆく。そして闇市の喧騒をつんざく破裂音に絶望を見る。
これで自分の戦争がやっと終わったと空に手を伸ばし呟く。それでもきっと悪夢からは逃れられない。そして何度でも繰り返される。
前半と後半の異なるエピソードを少年が繋ぐ構成が見事だった。4人の圧倒的な演技も必見。戦争の映画は絶対この世から失くしてはならない。どうか作り続けて下さい。
おから寿司
闇市を描いた「ほかげ」
ほかげ
神戸市内にある映画館「シネ・リーブル神戸」にて鑑賞 2023年12月6日
パンフレット入手
「ほかげ」とは何か?パンフレットから引用します。
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「火と、その揺れに合わせて姿を変える影。
その影の中に生きる人々を見つめ、耳をすませます。
終戦と銘うって準備撮影をすすめた『ほかげ』
世界の動きが怪しくなってきた今、どうしても作らずにはおられなかった。
祈りの映画になります。」
塚本晋也
(ほかげパンフレット12ページ目より)
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「闇市」を描きたいというのが映画監督の思い
終戦後、残暑厳しい時か 女は暑い暑いと言っていた
電気、ガスなどインフラが復旧していないのでしょう。
女は半焼けになった小さな居酒屋で一人暮らし。体を売ったりしてその日暮らしをしていた。
空襲で家族を失った子は、闇市で果物などを盗んで暮らしていたが、女の居酒屋で入りびたりするようになりなる。
若い兵士が客として居酒屋へ行くが、入りびたりするようになる。三人はまるで家族のような状態になる。
若い兵士はおかしい状態となり去ってしまい、ふたりはお互い親密になっていくが、こどもは闇市にいる男と旅に出てしまう。
こどもはいろいろと経験をし、女のもとに戻ってくるのだが、拳銃を所持していたことがわかり、女はこどもから拳銃を取り上げ、缶のような容器にいれて保管する
また旅に出てはこどもが戻ってくる。
女はこどもを「坊や」と呼ぶようになる
そんなある日、拳銃は子供からやさしそうな男に渡ってしまう。
正体は元兵士だったようで戦争の時に、強い恨み、怨念を抱いていたのだろう。
男は拳銃を復讐のために使うことになった。
兵士の名前を叫び、銃を一発ずつ放つ。最後のトドメの一発は放たず、殺さない状態にしておく
こどもは女の居酒屋に戻るが、感染症なのか会えないことに。女は坊や、坊やと優しくもかなしく語りかける。
こどもはもう会えないことを確信した。別れの時となった 女は坊や、坊やと・・・
闇市にこどもの姿、無断で皿洗いをやっているが怒られてしまう。理解されたようで子供はわずかな収入を得ている。
そのあとこどもは闇市の中へとすすんでいき、姿が見えなくなる。
映画は終了・・・このレビュー書いてたら涙
女優の趣里 迫真の演技力に感激します。
坊や、坊や・・・
終戦当時、多くの人に起こった悲劇。今残しておかなければ、観ておかなければいけない。
趣里ちゃん、違う感じやね。
女性と戦災孤児は逞しい。
兵隊さんは、気力がなくなる。
復讐に燃えるか?
どっちかか?
戦災孤児の男の子は、キリッとした顔だな。
森山未來なかなかいい。
戦争は、人々を傷を負わす。
戦後ってどんな時代だったのか
趣里、森山未來の熱演、塚尾桜雅の目力
第二次世界大戦直後、戦争で夫を亡くし焼け残った小さな居酒屋に1人で住む女は、体を売り希望のない日々を過ごしていた。そんなある日、空襲で家族を失った子どもが、女の居酒屋へ食べ物を盗みに入り込んだ。それ以来、子どもはそこに入り浸るようになり、女はその子どもと一緒に生きようとしてる時に病気になりその子を追い出した。そして・・・てな話。
終戦直後、生きるために体を売るしかなかった女性も多くいたのだろう。親を亡くした子どももたくさんいたのだろう。なんか切なくなった。
戦争に行って復員出来た元兵隊の人たちも悲惨な生活だっただろうし、その戦場でのおぞましい記憶に悩む人たちがいたことも容易に想像出来る。
趣里や森山未來の熱演に引き込まれた。
戦争孤児役の塚尾桜雅の目力も素晴らしかった。
悲しい話だが、戦争をしてはいけないというメッセージを受け取れた秀作だった。
けっこうよかった
室内劇なのかと思ったら最後の方は闇市のセットでスケール感のある場面があって開放的な気持ちになる。里親映画的な展開があるのだけど、子どもに仕事を断って来いと外に出す趣里には、一緒に行ってやれよと思う。戦争のPTSDを描く。
復讐をあっさり果たす場面がとてもいい。そうでなくっちゃと思う。
『ブギウギ』を見ていて、今日米開戦2年目だ。その数年後のスズ子(趣里)の姿がまさかこれ?と変な感覚に陥る。
戦争‥忘れてはいけない歴史
戦争。それを市民の視点から描くことに拘る塚本晋也監督。そのエネルギーたるや凄いものがあります。「野火」も「これが人間か!」と信じたくない自分、そして理解しなければいけない自分、その2つが闘う作品でした。この「ほかげ」は戦地を描くものではありませんでしたが、戦争という残酷な産物が人生をいかに狂わせるか‥痛すぎるほど伝わる作品でした。
主演の趣里さんも迫力の演技。朝ドラの「ブギウギ」とは真反対の役柄でした。そのギャップ、演技の幅の広さを見せつけられて、それにお金を払ったとしても損はありません。
戦争自体が終わっても人の心に本当の意味で終わりが来るのはいつになるかわからない長い旅。今だって癒えていない人がたくさんいるはず。僕たちはそれを忘れずに日々を生きたいですね。
戦争後の大変さ
希望の見えない生々しい戦後の風景
涙がでていました
「野火」が戦争の狂気を描いていましたが、「ほかげ」は戦争による傷跡を描いた作品。
夫と子どもを亡くした者、孤児になってしまった者、身体が不具になった者、そして何よりも深い心の傷でしょう。
今回もスクリーンの色味が素晴らしく、そのしっとりとした質感がよいですね。
音楽もすごい合っていて、すごいの見つけてきたなと思っていたら、まさかの石川忠。エンドロールで名前を見た時は目を疑いました。
後に知ったのですが、気がついたら石川忠の音で作り始めていたんだそうです。
6年前に亡くなっているのですから、制作途中だった「斬、」とは話が違います。これを作り上げるのはとんでも無い事ですよね。
主演の趣里は塚本作品にすごいフィットしていて、太い芝居がとても良かったです。
またその先に位置する坊やもとても輝いていおり、その瞳がすごい印象的。
それと何度も投げ飛ばされても器を洗いに向かう、絶対に約束を破らない決意には心を打たれました。
そうしてその覚悟を認められた時には、何故だろう?涙がでていました。
戦争を生き延びた人々が抱える闇と傷、そしてそこから立ち上がる光。
やはりズシリと残る作品でした。
夜の家族
この作品との直接的な関係はないが、今年公開された『ゴジラ マイナスワン』との繋がりを感じさせられた。
戦後のどん底から復興を遂げゼロに戻った日本が、ゴジラによって再びマイナスへと叩き落される。
あの映画でも自分の中の戦争が終わらず、苦しみ続ける人々の姿が描かれていたが、この作品で描かれる戦争の後遺症はさらに生々しい。
日本全土が復興していく裏では、戦争によって受けた心の傷により、マイナスのまま立ち直ることが出来ずに打ち捨てられた人々がいたのだ。
まずは戦争により家族を失い、売春を斡旋されることで無気力に日々を生きる一人の女。
彼女のもとにかっぱらいをしながら野良犬のように生きる一人の坊やが転がり込む。
そして金を作ることが出来ないのに、一人の復員兵の男も毎晩彼女のもとを訪れる。
いつしか三人は夜になると集まる疑似家族になる。
復員兵の男はかつて教師だったらしく、坊やに勉強を教える。
その姿は実直な若手教師そのものだ。
しかし男は昼になると働くこともせずに抜け殻のように蹲っているらしい。
夜、女と坊やのもとを訪れる時だけ人間の生活に戻ることが出来る。
彼が心に受けた傷は重大だ。
大きな音がすると過敏に反応し、恐怖のあまり理性を失ってしまう。
そしてついに彼は二人に暴力を振るってしまう。
坊やは女を助けるために銃を男の頭に突きつける。
坊やが誰にも見せずに肌身離さず持ち歩いていたものが銃であったことに脅威を感じる。
男は何処へと消えていくが、女は坊やと本当の家族になることを願う。
夜だけの家族という形は変わらないが、彼女の坊やへの愛は日増しに強くなっていく。
母と子という関係よりも、まるで男女の関係のように見える二人の姿が危うい。
坊やはなかなか普通の仕事にありつくことが出来ずに、危険な仕事に手を出してしまう。
それを女は必死で咎める。
坊やはある親切な男から仕事をもらったと女に報告するが、その仕事に銃が必要だと知り、女はすぐに断るようにと鬼のような形相で坊やに言い放つ。
そして坊やが再び戻った時、もうこれっきりであると縁を切ってしまう。
坊やは結局仕事を与えてくれたアキモトという男と行動を共にする。
仕事の内容は分からないが、アキモトの様子から真っ当な仕事ではないことが分かる。
そして彼自身が自分の果たそうとしていることに踏ん切りがつかないでいるらしい。
この映画の中では誰もが戦争による後遺症に苦しめられている。
坊やが寝ている時にうなされる姿は尋常ではない。
女は襖の向こうに何かを隠しているし、アキモトもまた夜になると坊やと同じように夢にうなされ、子供のようにすすり泣く。
うまく復興の波に乗れた者に対して、あまりにも彼らの生き方は惨めだ。
この映画の中で、明日への光を感じさせるのは坊やだけだ。
映画の中で銃声が何度も聞こえるが、終盤になってその意味が分かるような気がした。
銃声は戦争によって心を壊された者が、自らの戦争を終わらせるために放つ音なのだろう。
その中にはマイナスのまま立ち直れずに、自ら命を断った者もいるだろう。
あまりにも哀しい余韻を残す作品だ。
塚本晋也監督の作品は本当に画面から放たれるエネルギー量が凄まじい。
これこそ反戦映画といえる心に重くのしかかる傑作だった。
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