ほかげのレビュー・感想・評価
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猛烈な戦争への批判
半分以上は、主人公の女(趣里)が住む居酒屋が舞台で、室内劇。
内容的には、塚本監督作『野火』の延長上にあり、戦後のバラック&闇市の中で、生き延びた人間も復員兵もPTSDに苦しみ、心の中の戦争が終わらない苦悩を描いていて。
その中で見出した一筋の希望が、戦災孤児となった子どもっていうのが切ない話でした。
擬似家族を形成するのが、奇しくも構造的に『ゴジラ-1.0』と相似形で、時代の表と裏のような作劇だったなと。
二作とも「これで戦争が終わる」というセリフがあったし。
戦後すぐの頃には、生きるのが辛く闇に包まれた側面と、(闇市を代表とした)これから復興するんだという明るくパーっと盛り上がる側面と、明暗両面があったわけで。
本作の闇のみを写す作り方は、猛烈な戦争への批判が込められていて、あの惨劇を繰り返してはならないという警鐘となっていました。
いまひとつ
塚本晋也監督、古くは鉄男、そして野火など大好きな作品が多く期待して鑑賞したのですが、素晴らしい俳優陣たちのお芝居ながらも、ずっと舞台が同じで単調で暗い。ストーリーの展開が少なく自分には残念ながらところどころ睡魔と戦いながら鑑賞してました。
趣里さんが強烈なインパクトを刻んだ
2014年の「野火」で戦場の極限状態に置かれた人間を描いた塚本晋也監督。今作では終戦直後の絶望的な状況の中で生きる人々を描いた。
焼け残った居酒屋に一人住み、体を売りながら呆然と生きる女(趣里さん)、そして戦地で心身ともに深い傷を負い、卑劣な行為を強いた上官に復讐せんとする男(森山未來さん)。
空襲で孤児となった少年(塚尾桜雅くん)が偶然二人と出会い心を通わせた。
空襲で生き残った者、戦地で生き残った者。戦争の後の傷をえぐるような厳しい作品だった。
「生きてるだけで、愛。」の趣里さん、今作でも強いインパクトを残した。
壮絶な戦後の生々しさ
「ゴジラ-1」の典子になれなかった女性と「鬼太郎の誕生」の水木になれなかった男たち、そして、それを見つめる少年の物語。
ごくミニマムな舞台ながらも、戦争が生み出すモノを観客に強烈に突きつける。
同じ様な事が、現在も世界のどこかで起こっているのだろう。
塚本晋也監督の描く生々しさと、じっと見つめる視線は健在だ!
「あれは戦地のことだから」ー 「これで戦争が終わった」
上野駅の銀座線地下鉄改札口へ緩やかにくだる通路は今はとてもきれいだ。その緩やかなスロープは雨露しのげて暖かいからか、昔、沢山の男の人達や子どもが通路の端に座っていた。もわっとした匂いがした。私はまだとても子どもだったけれど大人の男の人達は兵隊さんの格好であったり包帯して足が半分ない人も居たから、それが戦争と関係あることはわかっていた。今もそこを通ると匂いと共にその人達が見える気がする。皆、辛くて痛くて怒りと恐怖と飢えにまみれていたんだろうか、それとも希望が見えてきた頃だったんだろうか。
登場人物は誰もが口数少ない。だから森本未来の最後の言葉は饒舌で、正確に戦地でのことを覚えていて、それだけに如何に怒りと悲しみから解き放たれていなかったかが強く伝わった。
塚本監督の映画を見たのは今回が初めて。映像と音響が良かった。今度は「野火」を見よう。
おまけ
趣里は成長していい俳優になっていってると思った。初めて見たのは、舞台「クライムス・オブ・ザ・ハート」地人会新社(2015)。趣里はガリガリといっていいほどスリムで、三人姉妹の(大変なことをしでかした)末娘役をキュートに(いっぱいいっぱいで)演じていた。次がTVドラマ「ブラック・ペアン」(2018)の看護師役。クールで有能でよく眠る猫みたいな役。ここまでの趣里の顔は同じ感じ。そして今回の映画。大切な家族を失い孤独の中、坊やに会えて光が見えて、最後の希望を坊やに託した女をよく演じていたと思う。声、そして目。柔らかで深みのある大人の顔になっていた。朝ドラ見てないので、ブギウギのまとめを年末に見たい。
戦後の闇市
監督で俳優でもある塚本晋也さんの、トークショーとサイン会の付いた上映に行ってきました。
塚本監督といえば『鉄男』
そのイメージが強く、シリーズ全て観てますが、
他で観たのは、中村達也さんが出てたから観た『バレット・バレエ』です。
上映後のトークショーで、おっしゃってましたが、
最近、戦争モノばかり作っているのは、戦争が再び起きそうな気配を感じ、危機感を持っているからそうです。
観終わってから聞いたのですが、そんな話を聞くと、この作品の重さも変わります。
映画の内容は戦後の闇市を描いていて、ずっと前から闇市を描きたかったとの事。
ホラーにも通じるような、不穏な雰囲気、張りつめた空気、緊張感、が漂っています。
戦争の後遺症に苦しむ人々、色々と考えさせられますね…
監督は、とても、お優しそうな方でした(笑)
深み
立川での上映に間に合わず、愛車ホーネットを駆って2時間、船堀で鑑賞。直接の言及が限られていても我々には想像力がある。人が極限状態で何をしてしまうのか、先の大戦が彼方に遠くなる中、薄まろうとも伝え続ける意味を感じる。
役者は子役の表情が良かった。趣里は表情は良かったのだが、発声が良すぎ声を張りすぎ。セリフ、意識と声に違和感。まあ監督がOKしてる以上彼女の問題ではないのだが。
戦争孤児と戦争未亡人の仮りそめの幸せ
さすが塚本晋也です。令和の焼跡闇市映画。見応えありました。短編映画だった?と思うほど濃密な時間があっと言う間に過ぎ去った感じ。完璧に近い脚本と映像でした。
朝ドラのブギウギの趣里とはまるで別人。凄みがありました。魂のこもったセリフ。焼酎瓶を定期的に持って来るオヤジが斡旋屋で、焼け残った小料理屋で商売させられていた。
後半最後のほうで顔を見て逃げて行ったところをみるとひどい梅毒疹が出来ていたんでしょう。それで少年には入って来るなと。
闇市でなけなしの1円札で薬を買おうとするけなげな少年。闇市まで聞こえてきた銃声はおそらく彼女が自殺したんでしょうね。出征前は小学校教師だった兵隊は廃人に。結局、疑似家族にはなれませんでしたが、短い夏に女が見た仮りそめの幸せが不憫でなりません。
ほかげは帰還兵が飯盒の蓋の上に灯した固形燃料の灯りで彼女の仮りそめの幸せをの象徴なんだと思いました。
森山未來の役の元兵隊はこれでやっと戦争が終わったと言ってましたね。
彼を通して少しはカタルシスを感じました。
少年は闇市の煮込み売りのオヤジにくっついて生き残れたのか?
戦争孤児の少年は自分が拾った一丁の拳銃がもたらしたトラウマをも抱えて生きていかねばならないのは辛すぎます。
早くNHKで地上波放映しないといけませんね。でも、JKが観てわかるかな~
終わらない悪夢のその果てに。
戦後間もない日本。焼け残った居酒屋で体を売る女、盗んで生きる戦争孤児、元教師の復員兵、何かを成し遂げようとする謎の男。戦争が終わったからといってすぐそこに未来や希望がある訳ではない。皆今日食べるものすらない。
戦争で心まで焼かれた人間の痛みや、恐怖や、執念が小さな炎に照らし出される。その禍々しさ。その残酷さにスクリーンに釘付けになった。あんなに幼い子供が1人で生きていかなくてはならない。きっと優しかった先生が痩せ衰え虚ろな目で朽ちてゆく。そして闇市の喧騒をつんざく破裂音に絶望を見る。
これで自分の戦争がやっと終わったと空に手を伸ばし呟く。それでもきっと悪夢からは逃れられない。そして何度でも繰り返される。
前半と後半の異なるエピソードを少年が繋ぐ構成が見事だった。4人の圧倒的な演技も必見。戦争の映画は絶対この世から失くしてはならない。どうか作り続けて下さい。
おから寿司
非常に丁寧な作り、でも我々おじさん世代にとっては刺激が少ないと感じました。
戦後ってこんなにマイルドなの?
決して戦争を正しく描いているわけではないですが、「はだしのゲン」や「ゆきゆきて神軍」を観てきたものからするとめちゃめちゃ優しい世界でした。
でも、趣里の演技は素晴らしく。趣里を愛でるだけでも観る価値あり。作り込みも丁寧で、限られた予算の中で塚本監督らしいこだわりは理解できました。
森山未來さんのエピソード後半は全く蛇足。
終盤の闇市のシーンのおから寿司の張り紙は水木しげる先生のオマージュかな?
全体的には観てよかったと思います。
闇市を描いた「ほかげ」
ほかげ
神戸市内にある映画館「シネ・リーブル神戸」にて鑑賞 2023年12月6日
パンフレット入手
「ほかげ」とは何か?パンフレットから引用します。
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「火と、その揺れに合わせて姿を変える影。
その影の中に生きる人々を見つめ、耳をすませます。
終戦と銘うって準備撮影をすすめた『ほかげ』
世界の動きが怪しくなってきた今、どうしても作らずにはおられなかった。
祈りの映画になります。」
塚本晋也
(ほかげパンフレット12ページ目より)
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「闇市」を描きたいというのが映画監督の思い
終戦後、残暑厳しい時か 女は暑い暑いと言っていた
電気、ガスなどインフラが復旧していないのでしょう。
女は半焼けになった小さな居酒屋で一人暮らし。体を売ったりしてその日暮らしをしていた。
空襲で家族を失った子は、闇市で果物などを盗んで暮らしていたが、女の居酒屋で入りびたりするようになりなる。
若い兵士が客として居酒屋へ行くが、入りびたりするようになる。三人はまるで家族のような状態になる。
若い兵士はおかしい状態となり去ってしまい、ふたりはお互い親密になっていくが、こどもは闇市にいる男と旅に出てしまう。
こどもはいろいろと経験をし、女のもとに戻ってくるのだが、拳銃を所持していたことがわかり、女はこどもから拳銃を取り上げ、缶のような容器にいれて保管する
また旅に出てはこどもが戻ってくる。
女はこどもを「坊や」と呼ぶようになる
そんなある日、拳銃は子供からやさしそうな男に渡ってしまう。
正体は元兵士だったようで戦争の時に、強い恨み、怨念を抱いていたのだろう。
男は拳銃を復讐のために使うことになった。
兵士の名前を叫び、銃を一発ずつ放つ。最後のトドメの一発は放たず、殺さない状態にしておく
こどもは女の居酒屋に戻るが、感染症なのか会えないことに。女は坊や、坊やと優しくもかなしく語りかける。
こどもはもう会えないことを確信した。別れの時となった 女は坊や、坊やと・・・
闇市にこどもの姿、無断で皿洗いをやっているが怒られてしまう。理解されたようで子供はわずかな収入を得ている。
そのあとこどもは闇市の中へとすすんでいき、姿が見えなくなる。
映画は終了・・・このレビュー書いてたら涙
女優の趣里 迫真の演技力に感激します。
坊や、坊や・・・
終戦当時、多くの人に起こった悲劇。今残しておかなければ、観ておかなければいけない。
終戦直後、空襲の焼け跡に残った一人の女が暮らす一軒の居酒屋。 そこに戦争孤児の少年と復員兵が居つくようになる。
ある日、見知らぬ男から仕事をもらい、少年は旅に出た。
趣里の演技、佇まいが凄い。 始めは他人と突き放し行動にもあまり口は出さなかったが、情がわいてきて、口やかましくなっていく。
三人でほんの一瞬だけ見た幸福を胸に生きる。
復員兵の若い男の、かすかな希望の光も飲み込まれていく。
当時生きた沢山の人々、一人一人に重い悲劇が、無数にあったことを、つい数十年前に、ここで起きていたこと。
監督が言われるように、まさに、今、作って残しておかなければ、観て置かなければいけない映画です。
趣里ちゃん、違う感じやね。
女性と戦災孤児は逞しい。
兵隊さんは、気力がなくなる。
復讐に燃えるか?
どっちかか?
戦災孤児の男の子は、キリッとした顔だな。
森山未來なかなかいい。
戦争は、人々を傷を負わす。
戦後ってどんな時代だったのか
先日、「ゴジラ-1.0」を見たばかりで、つい、それぞれの「戦争の終わらせ方」を比較してしまった。
テレビや映画では、大変だけど活気ある時代として描かれがちだけれど、実際は「ほかげ」の方がより近いのかなあ、などと思いながら見た。
監督の思いをきちんと受け継ぐためにも、いろいろな人に見て欲しいと思った。
「野火」を見てトラウマになった人も、この「ほかげ」なら見れると思います。ぜひ、見てください。
趣里、森山未來の熱演、塚尾桜雅の目力
第二次世界大戦直後、戦争で夫を亡くし焼け残った小さな居酒屋に1人で住む女は、体を売り希望のない日々を過ごしていた。そんなある日、空襲で家族を失った子どもが、女の居酒屋へ食べ物を盗みに入り込んだ。それ以来、子どもはそこに入り浸るようになり、女はその子どもと一緒に生きようとしてる時に病気になりその子を追い出した。そして・・・てな話。
終戦直後、生きるために体を売るしかなかった女性も多くいたのだろう。親を亡くした子どももたくさんいたのだろう。なんか切なくなった。
戦争に行って復員出来た元兵隊の人たちも悲惨な生活だっただろうし、その戦場でのおぞましい記憶に悩む人たちがいたことも容易に想像出来る。
趣里や森山未來の熱演に引き込まれた。
戦争孤児役の塚尾桜雅の目力も素晴らしかった。
悲しい話だが、戦争をしてはいけないというメッセージを受け取れた秀作だった。
けっこうよかった
室内劇なのかと思ったら最後の方は闇市のセットでスケール感のある場面があって開放的な気持ちになる。里親映画的な展開があるのだけど、子どもに仕事を断って来いと外に出す趣里には、一緒に行ってやれよと思う。戦争のPTSDを描く。
復讐をあっさり果たす場面がとてもいい。そうでなくっちゃと思う。
『ブギウギ』を見ていて、今日米開戦2年目だ。その数年後のスズ子(趣里)の姿がまさかこれ?と変な感覚に陥る。
戦争‥忘れてはいけない歴史
戦争。それを市民の視点から描くことに拘る塚本晋也監督。そのエネルギーたるや凄いものがあります。「野火」も「これが人間か!」と信じたくない自分、そして理解しなければいけない自分、その2つが闘う作品でした。この「ほかげ」は戦地を描くものではありませんでしたが、戦争という残酷な産物が人生をいかに狂わせるか‥痛すぎるほど伝わる作品でした。
主演の趣里さんも迫力の演技。朝ドラの「ブギウギ」とは真反対の役柄でした。そのギャップ、演技の幅の広さを見せつけられて、それにお金を払ったとしても損はありません。
戦争自体が終わっても人の心に本当の意味で終わりが来るのはいつになるかわからない長い旅。今だって癒えていない人がたくさんいるはず。僕たちはそれを忘れずに日々を生きたいですね。
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