劇場公開日 2023年10月13日

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「問題作であることが正しいと思う。」月 sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0問題作であることが正しいと思う。

2023年11月26日
iPhoneアプリから投稿

よくぞここまで描いたものだと思います。
この題材を、こんな風に作品にできる人が日本にもいるんですね。

あまりにひど過ぎて、思い起こすことすら拒否反応が出てしまうような事件がありますが、この事件もそのひとつで。
そうした事件は、そもそもフィクションの題材として扱ってはいけないもののような気もしてしまいますが。

それでもこの映画がてきて良かったと思うし、自分も見れてよかったと思いました。

まず前提として、映画としての出来はほんとに素晴らしくて。
その上で、描こうとしているものも、描き方も、自分はすごく共感できるし、納得がいったし、肯定したいものだと感じました。

見た人の中にほどうも、「さとくん」の論理や、主人公の自問自答を、事件を起こした側の意図を汲むようなものだと受け取って、それに批判的になる人もいるようだけど、それは例えばガリレオの天文対話を読んで天動説を主張しているととるようなものかと思います。
理解する力が欠如しすぎ。

はっきり言って、知的障害者のための支援が無駄だとかなんだとか、そういう類の考えを論理として否定するのはそれほど難しいことじゃない。
少なくとも、それよりずっと無駄なもの、ずっと悪どくて害のあるものなんて、いくらでも、数えきれないほど挙げられるし、そういうものに平気で大金をかけるのが普通な世の中だってのは、みんなわかってることでしょ。

それでもさとくん的な考えは社会の中に生まれてしまうし、主人公のような問いかけは、現実に向き合えば向き合うほど、必ずどこかで出てきてしまうものだと思うし。

そこから目をそらしていては、それにきちんと対峙することもできないのだということを、教えてくれる映画だったと思います。

sokenbitea