劇場公開日 2023年10月13日

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「初めての挑戦を評価したい」春画先生 うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5初めての挑戦を評価したい

2023年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

監督のコメントによると、無修正の春画を商業映画で扱うことにチャレンジする、というコンセプトが先にあった作品であるとのこと。
本編を観ると、「官能」と「芸術」と「娯楽」の要素を持つ春画の世界を投影する作品を目指し、ある偏愛の形を軸に全体を明るくまとめようとコメディテイストに仕上げたのだと感じた。

ストーリーは、地位のある男性と芯は強いが彼には従順な年下女性が、支援者にけしかけられながら二人の世界に沼っていく、官能小説のような物語。序盤は比較的コメディテイストが薄いのでつい真面目に見入ってしまうが、全編を通せば人間ドラマとしても恋愛ものとしてもファンタジー性が強く、真剣に観るより肩の力を抜いて観るのが正しい楽しみ方なのだろう。
女優陣や自然の風景を美しく撮ろうという熱意が伝わってくる映像は、非常に見応えがあった。

ストーリーや表現の端々に、商業映画として成立させるためのラインを見極めようとする手探り感や、映画の作風を妖艶な官能の世界に振るか文化や芸術の世界に振るかを迷ったような雰囲気も伝わってきた。世界観でも主張でもない現実が透けて見えたのは少々残念だったが、邦画界初の挑戦ともなれば仕方ないのだろう。
そうした挑戦的な作品が堂々と複数の一般試写会を開催していることもまたプロモーションの分野における挑戦であり、自分は歴史に立ち会ったのだと解釈した。

今作で無修正の春画を扱う最初の作品としての前例ができたので、いつの日か、より振り切って練り上げた没入感の強い作品が生まれることを期待する。

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うぐいす