「傑作 欲に勝てない人間性、愛情のもろさの哀しみ」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン humさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作 欲に勝てない人間性、愛情のもろさの哀しみ
冒頭、画面からはみ出す迫力が一気に連れていく興奮。
そして、なんといっても形容しがたい神秘性をみせる先住民オーセージ族たちの自然とともにある姿。
瞳が物語る純粋な野性、ことばに滲み出る古くからの魂の重みや精神の宿り。
そんな空気のひとつひとつを味わおうとする自分はもはや瞬きを忘れている。
生物としての本能をくすぐられるのか。
虜になる心がなにかで満タンになる。
なかでも嵐の晩の光景がすばらしい。
そこにはアーネストのそばでモーリーが静かに祈りを捧げる毅然で美しい姿がある。
先住民の地球に共存する為のバランス能力を感じさせ、知恵が伝統として染み付いていることを垣間見る。
その時、まるで異なる生き方をしてきたと思われるアーネストがぐっと本気で彼女に惹かれていく様子が手に取るように伝わるのだ。
それなのに…だ。
人間の欲の恐ろしさと明らかに描かれている人種差別、そのなかで失う理性が怒涛の勢いで襲いはじめる。
オーセージ族がそれまでも不可解な死を遂げてきたのにもかかわらず、検証されず簡単に捻じ曲げられ葬られてきたこととその理由が徐々に判明していくのだ。
大地を尊び潤沢な資源を享受してきた先住民たちにとって、天災よりも猛獣よりも恐ろしいのは人間のエゴそのものだった。
実際にあった話として、私利私欲の極み、引き換えになるものへの最悪の侮辱に微塵のためらいをみせない人間の様子は相当に恐ろしく残酷だ。
深く刻まれた眉間の皺が渋すぎるアーネスト(ディカプリオ)が、さらに渋くてひと癖ある叔父ヘイル(ロバート デ・ニーロ)の偽善に満ちた情け容赦なしの悪だくみに加担していく様子は、本当にがっかりする。
なぜって、あの時もその時も、モーリーの瞳にいるアーネストの愛は確かにあった。
絶対にあった。
だから余計に辛いのだ。
欲に踊らされた沢山の人間の弱さに翻弄された史実に基づく哀しみの物語は、見事な脚本、監督のすきのない采配、おしみない演出、演技、装飾、ダイナミックさと美しさ、憎悪にゆがみきった見事な描写を映像にして畳み掛け、約束3時間半が2つの種類のため息でいっぱいになるうちに印象的なラストを迎える。
それにしてもそれにしても歳月と経験は魔法だ。
貫禄ありあまるこのディカプリオは、タイタニックの時の美しく透明な彼なのだから。
この佇まいには実在する人物いやそれ以上(?!)ではないかと錯覚すらするほどの生命の息吹があり、ロバート デ・ニーロのラスボス的オーラを潔く追いつめんばかりの演技で終始震わす。
近頃値上がりしたチケット代が、全く高いと思わない重厚なものを制作に関わる全ての人力に観せてもらった気がする。
あぁ、脱帽とはこの事だ。
humさんコメントありがとうございます。
星5つ大絶賛ですね。
私は後半の裁判になってからのくだりが長いと感じてしまいました。
デニーロの演技も食傷気味なんです。
すみません。
ご無沙汰しています。
つい今しがた「囚われた少女たち」という映画を見て、衝撃を受けました。もしもAmazonプライムに入っておられたら、あと5日間、配信があるそうです。ぜひ、時間を作って見てみてください。
コメントありがとです。レビューも拝読致しました。
モーリーさんは高貴な訳ではなく気高さを持ち合わせているような気がして、彼女の佇まいが、我欲に狂う文明人の愚かさを際立たせてたように思います。
豊かさとは一体なんなのだろうなと。そんな事も感じました。
コメントありがとうございます。
史実の重みと、「事実は小説よりも奇なり」とでも言いたくなるほどそこに見事に浮かび上がった人間の業や愛や醜悪さ、スコセッシが映画化したくなるのも本当によくわかる話ですね。
志願してアーネストを演じきったディカプリオ、デニーロの向こうを張る存在感はさすがでした。
共感&コメントありがとうございます。
やはり白人とネイティブアメリカンは最終的には理解しあえないのか(ダンスウィズウルブズは?)悲観的な気持ちになってしまいます。異教徒と言うか、根っこが異なるともう駄目なんですかね? 皮肉にも今を象徴するような作品になってしまいました。
貫禄有り余るディカプリオ❗️
『ギルバート◦グレイプ』でしたか、あの時のディカプリオとのギャップも凄い‼️
そういえば、『リバーランズスルーイット』のブラピも、今のブラピと比べるとなんと透明なこと‼️
なんか色々と思い出しました。
その点、デニーロは、『タクシードライバー』を思い出してもあまり違和感なくないですか?
ディカプリオは貫禄というよりもバカさ加減にイライラしてしまいました。あそこまでイライラさせる演技をするディカプリオは凄い俳優です。先日「ギルバート・グレイプ」を見て以来、演技のうまい俳優として彼を見ることができるようになりました。
humさん、コメントありがとうございます😊‼️マークはすいません、クセで...
スコセッシ監督、今回も素晴らしい仕事ぶりでしたね‼️半世紀以上に渡って送り出される作品群のクオリティーの高さ‼️どんな名監督でも、70代80代になると作品の質が落ちるものですが、スコセッシ監督は落ちない‼️スゴいですね‼️いつまでも元気で映画を作っていただきたいです‼️