「マーティン・スコセッシ健在」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
マーティン・スコセッシ健在
206分もあるのに長さを感じなかった。マーティン・スコセッシ健在。
偶然見つけた油田のオイルマネーで潤ったネイティブたちが、あっという間に白人たちに搾取されて破滅に追い込まれる後味悪い話かと思ったら大分違った。
オセージ族がやられている描写が続いたあと、一転してFBIが介入して事件を追求する話になっていくのだ。
ディカプリオは、何も自力で考えない気弱で顔だけは良いクズ男アーネストなりきりで、相変わらずスゴい演技力。
デニーロは、元々が親切親身な篤志家良い人の体でも絶対裏があるだろ、と疑いたくなる風貌なので、この役はピッタリと思う。
金の為なら殺人も厭わず、だが自分の手は汚さない。そして甥すらも最初から抹殺する計画で利用するという真性クズ、というのに納得してしまう。
オセージ族は物静かだが頭が良い、と認めながらも、自分たちを凌駕するほどとは思いもせず侮っていた「キング」が、逮捕、裁かれる立場に置かれるのは気分が良い。
キングが侮っていたのはオセージ族だけでなく、自国の警察、司法、行政もだ。どうせ金の力でなんとでもできるという成功体験しかないのでずっとそのつもり。時代は変わったのだ。変えたのはオセージの女、モーリーだ。
次々と起きる残忍なオセージ族殺人事件に町の警察も行政も動かない。
さもありなんだが観ていて憤懣やるかたない。
連邦捜査局の捜査官たちが黒のT型フォードで街に現れたとき、「やったぜ!」と思うと同時に、インディアンであるモーリーの嘆願が連邦政府に聞き届けられたんだ!?(意外)と思った。(彼女の持つオイルマネーのお陰?とも思った)捜査官たちが形だけでなくぐいぐいと捜査を進め、キングとその一味を逮捕、裁判に持ち込んで、インディアンは案外公平に遇されている、と思った。
インディアンにも土地の所有権や掘削権、相続の規定など、白人同様に法で認められており、ちゃんと機能しているし、後見制度という理不尽なものがあったにせよ裕福で良い生活をしていた人もいる。
ただ虐げられた存在と思っていたイメージと現実は少し違うようだ。
そして、オセージ族のように、自分たちの「財産」を守れた人たちもいたことにほっとした。
インディアン迫害の歴史は周知のこととなって久しく、そろそろ、ネイティブのステレオタイプなイメージを現実に即して修正できる時期に来た、という判断が動いたかも。
マーティン・スコセッシ監督はそれをやってのけたようです。
ちっとも衰えていない旺盛な意欲に感心しました。
モーリーが気高く美しい。賢いし。
確かに自分を愛しているようだが、「私に何を注射したの!?」と問われて口ごもるような夫には愛想つかすよ。アンタなぁんにも自分で考えないわけ!?ってその場で叩き出しますね。
コメントありがとうございます。
とても嬉しかったです。
オセージ族は石油が突然吹き出して裕福・・・
今までのネイティブ・アメリカンに持っていたイメージを
ひっくり返されました。
それだけ今までの映画などの描き方が酷かったんでしょうね。
民族衣装や舞踏などの文化もスコセッシ監督はきちんと紹介していましたね。
監督の意欲、すごい81歳ですって!!まったく衰えませんね。
ディカプリオも、仰る通り、俳優魂をまざまざと感じる仕事でしたね。
ありがとうございます。
見応えたっぷりな映画でしたね。
鑑賞後少し経ってみて思うのですが、賢く美しいモーリーが、何でアーネストに惹かれたんでしょうね。。ヒモですよね?!
私なら選びません笑