劇場公開日 2023年10月20日

「得意と新鮮、普遍と挑戦…映画ファンが求める"スコセッシらしさ"を一切損なうことなく未だ見ぬ新たな境地へ果敢に進む開拓者精神に感服」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0得意と新鮮、普遍と挑戦…映画ファンが求める"スコセッシらしさ"を一切損なうことなく未だ見ぬ新たな境地へ果敢に進む開拓者精神に感服

2023年10月20日
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インディアン ✕ グッドフェローズ = 時代設定・題材こそ違えどスコセッシ映画でしかなかった!そして、それは表面上の違いでしかなく、彼が得意とする従来のものから新たな一面まで様々な要素を内包した、現代最高の映画監督が放つ歓んで迎え入れられるべき作家性の新しい極致。
撮り方、展開、作品の根幹など。つまり、『グッドフェローズ』や『ディパーテッド』のように利害関係で結ばれており、いざとなれば身内でも平気で裏切るような"ファミリー"についてを扱っているということ。撮り方に関しては、家の中をグルっと一周していくショットで、個人的にはすごく"それ"スコセッシらしさを感じた。あと、映画館での密談?
"ブラック・ゴールド"=目も眩むほどの巨額の富オイルマネーを前にして、欲にくらんだ人間の汚い醜さ、ドス黒さを掘り下げ、驚愕戦慄のネイティブ・アメリカン連続殺人事件を基にした実話を、御大自ら(&エリック・ロスと共同)の脚本で映画化した渾身の超大作は、この歳になっても今なお衰えることのないスコセッシ監督の映画人としてのクリエイティビティを最後の最後まで飽くなき探究心で力強く証明してみせた。名監督の演出にはハエさえ従う?
新旧スコセッシ・コンビ=ディカプリオ✕"キング"・デ・ニーロ(50年目10作目)という全映画ファン垂涎の組み合わせトリオが実現!! にしても(見る前から分かっちゃいたけど)やっぱり長いって!!! 共演には妻モリー役リリー・グラッドストーン(よかった!)はじめ、ジェシー・プレモンス、ブレンダン・フレイザーと流石の実力派が名を連ねるのも嬉しい。見事な撮影や編集、不吉な感じを醸し出す音楽がなんとも印象に残る。しかも、盟友ストーンズの新譜発売日と被る公開日!
インディアンの命は犬より軽い。雄大に広がりを見せる物語が人間の業も呑み込んでいくかのよう。最後の語り口は新しかったし、後日談を(ジャック・ホワイト&)御大自ら語るという点においても、その表現の責務と可能性、本作の製作にかける本気を感じずにはいられなかった…。そんな開拓者精神こそが、彼を現代最高の映画監督かつ唯一無二な存在たらしめる所以だ。どっと疲労感で満腹ながら問題意識を喚起されもする、何かを考える機会になればいい。

(今年亡くなったザ・バンドのメンバーで彼自身も先住民族の血を引き、本作のサウンドトラックが最後の書き下ろし作品となった)ロビー・ロバートソンに捧ぐ

P.S. そんな余韻も台無し!映画館リテラシーの終り。スクリーン前方左、入口通路横の座席に本編開始後暫く経ってから入ってきたヤツがクソ客すぎてヤバかった。
最初は座席探すためかなと思ってあげようとしたけど(それでもいい気はしないけど)、その後も本編中、全然お構いなしにずっとスクリーン中の観客を照らしブルーライトに晒し続けていた。優に延べ1時間以上は点けていたと思う。肌感覚的にはもっと。しかも、途中スクリーン中に聞こえる音量で音楽流し出す(本人的にも意図してないだろうが、そもそもそれ以前の大問題だ)し、落とすし、心底マジでくたばってほしかった。『グッドフェローズ』のジョー・ペシくらい暴れてやりたかった。万死に値する、許せん。
と思いきや近くの老夫婦旦那も定期的に大きめの着信音を何度か鳴らす始末。ちなみに作品終盤のディカプリオが顔が抜かれた静かな長回しの最中にもポップコーンの箱なのかずっとガサガサしている音も聞こえていたし、何もかも全て酷すぎた。

勝手に関連作品『ウィンド・リバー』『グッドフェローズ』『ディパーテッド』

とぽとぽ