少年

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少年

解説

「悲情城市」などの名匠ホウ・シャオシェンと脚本家チュー・ティエンウェンが1983年に初めて組んだ作品で、ひとりの少年の成長を隣家の娘の視点から描き、台湾ニューシネマの原点となった青春ドラマ。

1960年代の台湾・淡水。未婚の母シウインは幼い息子アジャの将来のため、歳の離れた公務員ターシュンと見合い結婚をする。心優しいターシュンは、アジャを実の息子のようにかわいがって育てる。やがてアジャには弟が2人生まれるが、中学生になったアジャは不良仲間とつるんで問題ばかり起こすように。ある日、アジャの不注意から弟が事故に遭ってしまう。

ティエンウェンの短編小説を原作に、シャオシェンが製作・脚本、シャオシェン監督作の撮影を担当するチェン・クンホウが監督を務めた。日本では「台湾巨匠傑作選2023」(23年7月22日~、新宿K's cinema)にてデジタルリマスター版で劇場初公開。

1983年製作/94分/台湾
原題:小畢的故事 Growing Up
配給:オリオフィルムズ
劇場公開日:2023年7月22日

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(C)1983 Central Motion Picture Corporation _ Evergreen Film Company (C)2023 Taiwan Film and Audiovisual Institute

映画レビュー

4.0昭和日本に似たノスタルジーを感じさせる

2023年7月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

悲しい

若い世代で歴史に関心がない人などはひょっとして知らないかもしれないが、日清戦争後から第二次世界大戦終結の期間(1895~1945年)、日本が台湾を統治していた時代があった。1983年に製作された「少年」の時代設定は1960年代なので、主人公の少年アジャと家族が暮らす一軒家の造りや屋内の調度には、昭和30年代頃の邦画で目にする日本家屋に似た趣が感じ取れる。

原作は、のちにホウ・シャオシェン監督作品で数多くの脚本を手がけることになるチュー・ティエンウェンが書いた短編小説。ホウ・シャオシェンの監督デビュー作「ステキな彼女」(1980)から撮影を担当するチェン・クンホウの監督作品となる本作に、ホウ・シャオシェンが製作として関わり、ホウ・シャオシェンと原作者チュー・ティエンウェンが共同脚本で初めて組んだことで、以降のホウ・シャオシェン監督+チュー・ティエンウェン脚本というコンビにつながったそう。

物語は、未婚の母シウインが幼い息子アジャを連れて見合いの席に臨み、かなり年上の公務員ターシュンとの縁談がまとまるところから始まる。アジャは弟にけがをさせたり、悪ガキ仲間が盗んだ本で近所の子供相手に貸本商売を始めたりと、しょっちゅう問題を起こしては母親を悲しませるのだが、心優しい父親に実の息子のようにかわいがられ、守られて育っていく。

ストーリーテリングでちょっと面白いのは、アジャの成長と家族のドラマに、向かいの家の娘でアジャと同級生の女の子が成人後に回想するナレーションが適宜挿入されること。これは女性作家が手がけた原作小説の語りを尊重したのだろうと推測される。

アジャの折々の言動には共感しづらい部分もあるが、未成年の頃の鬱屈した感じや、家や学校の決まり事に反発したくなる衝動は、時代や国を問わず通じる要素かもしれない。

余談ながら、本作の舞台である淡水には2017年に旅行で訪れたのだが、昨今はすっかり観光地化していて、本作の中に収められた昔ながらの海辺の町とはずいぶん趣が変わっている。台北の中心から電車で1時間程度で行けるので、日本でいえば東京から横浜の距離感に近いだろうか。観光スポットが割とコンパクトにまとまっていて(自転車をレンタルして回るのもいい)、台北から近いという点も含めておすすめです。

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高森 郁哉

3.0主人公と母に終始いらいらした。

2023年8月23日
Androidアプリから投稿

残念ながら全く主人公と母に共感できなかった。シングルマザーが子供の為年の離れた男と結婚。男は少年を養子にし可愛がってくれたが少年は不良に。母は少年に優しい言葉も掛けず叱ることもない。食事を与えて洗濯をするだけ。説明もなく狂ったように殴る。あれで叱ってるつもり?台湾では皆あんな感じなのか?この母じゃ不良になってもしょうがない。少年はどんどん悪くなって行く。喧嘩で友達が刺される事態に。治療費に困った少年は家の金を盗む。母が撲り見かねた義父が少年を叱ると少年はあんたは父じゃないだろと。 母は自殺。父を大切にという遺書を残して。父は妻が可愛そうとおんおん泣く。自分の様な年寄りに嫁いで可愛そうだったと。とても愛していたと。このお父さんがいい人過ぎて泣けた。少年は軍隊入隊。母の遺言を守らなかった。 これ程後味の悪い映画があろうか?少年は最後まで改心しない。母も無責任。主人公と母に終始いらいらした。

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snowwhite

4.5過去の真実は遠ざからなければ見えてこない

2023年8月5日
iPhoneアプリから投稿

俺の話をする。

10年以上昔のことだが、両親が離婚した。俺は姓を変えるかどうかを母親に尋ねられた。小4の時だった。俺は元からの姓に特段の愛着があったわけではなかった。にもかかわらず俺は絶対に嫌だと反抗した。その後しばらく、母親は面倒な手続きに奔走した。今思えば俺はただ母親を困らせたかっただけだったのだと思う。酷い話だ。ついていったのが父親だったとしても俺は同じような駄々をこねたに違いない。

なぜ俺はそんなことをしなければならなかったのか。「愛が深ければ深いほど傷つくことになる」という本作のナレーションが腑に落ちた。より卑俗で現代的な言い方をすれば「試し行為」というやつだろうか。親に本当に愛されているのか不安になった子供は、彼らをとことん傷つけることで、そしてどれだけ傷つけても自分を庇い続けてくれる彼らを感じることでようやく安寧を得る。

ただ、大人になればわかることだが、「試し行為」の悪辣さは相手の人間性を考慮しないことにある。無償の愛も休みなく注ぎ続ければいつかは枯れる。アジャ(シャオビー)は愛情の欠乏感の裏返しとして幾度となく非行を繰り返すうち、遂に不可逆の領域にまで踏み込んでしまった。継父に放たれた「本当の父親じゃないくせに」という言葉は彼よりもむしろ彼に人生の大部分を捧げていた妻、すなわちアジャの母親に鋭く突き刺さった。ガス自殺による彼女の呆気ない死は、あまりにも呆気ないからこそアジャを大きく揺り動かす。自分のほんの些細な稚拙さが人を殺した、という残酷な事実。強烈に現前する「他者」という存在。「少年」という言い訳はもはや剥落し、彼は大人になる。

日常が非日常に変転する劇的な瞬間というのは存在しない。非日常は不可視の領域に真夜中の雪のように静かに堆積し、気づいたときには既に日常を押し潰している。確かに予兆は山ほどあった。吹き矢が刺さって泣く弟、不良との小競り合い、盗んだ漫画の貸本ビジネス、デート中の暴力沙汰、海で溺れる弟、腹を刺された友人。しかしナレーションが淡々と示すように、過去というものはある程度遠ざからなければそこに潜む真実を知ることができない。

アジャの母親が死んだことと、俺の母親が今も元気に生きていること。これは本当に紙一重なことなんだろうなと思う。既に起きてしまった悲劇は決して書き換えられない。今の俺たちにできることがあるとすれば、過去を思い出すこと。慈しむこと。忘れないこと。そしてそれはたぶん、映画を作ることと似ている。

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因果

3.0民間療法効果覿面!?

2023年8月5日
Androidアプリから投稿

悲しい

幸せ

1960年代台湾・淡水で、シングルマザーだった母親が再婚し、新しい父親と暮らし始めた6歳のシャオビーが大人になるまでの話。

何でも完璧に熟そうとする母親と、実の息子同然に扱ってくれる継父と、さらに2人の弟との暮らしになって行くけれど…。

嫁として母親として完璧に振る舞う母親の時に激昂する様は、安泰をくれた継父への気遣いか、それともそこにすがりつかなければという思いがあるのか、と傍からみるとそんな風にも感じられる。
不良というより悪ガキに育ったシャオビーはそれをどう見ていたのか…。

なかなか壮絶で突然の展開で山場を迎え、その割にその後の展開は少し呆気なさも感じたけれどなかなか面白かった。

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Bacchus
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