PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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自分に大切なこと
一言で言うと,真面目なトイレの清掃員の暮らしを淡々と描いている映画だ。ところが、これがとても心に染みる。何故だろう。
誰も見ていなくても,丁寧に仕事をし、お昼にはお気に入りの神社の木漏れ日でお弁当。いっぱい軽くひっかけて帰る。休日は、、という具合に彼の暮らしはほぼ決まったパターンで過ぎていく。
そこに無駄なものはなく,彼はその全てを楽しんで大切にしているのだ。清掃途中に見かける人々の暮らしに微笑む顔はとても素敵なのだ。
多分,日本人が美徳としてDNAに刷り込まれた精神が彼の中で生きているのだ。だから私達はその生き様に惹かれ,羨ましく思う。訪ねてきた姪っ子もそんなおじさんが大好きなのだ。2人の会話でとても素敵なフレーズがあった。役所広司は平山そのものだ。とてもいい映画だった。
そんなに先でもない黄昏
ヤバい、何てものを観てしまった感
公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手
中年独身男性トイレ清掃作業員の規則正しい日常。その作業場は、複数の建築家が丹精込めてデザインした一品もののデザイントイレ。中が丸見えで、鍵をかけるとガラスが一瞬で不透明になるトイレや、杉板小幅型枠のテクスチャの美しいRC打ち放しのトイレ、
童話に出てきそうなキノコ型や逆円錐型トイレ等々、その中には最新型のシャワートイレが設られていて、それらを職人芸のようにピカピカに磨き上げるのが彼の仕事だ。早朝街路を清める竹箒の音で目覚め、霧吹きで植栽に水を与え、自販機で缶コーヒーを買い、軽自動車で出勤する。東京渋谷、複数のトイレを車で移動。その移動の際に車内でかけるのがカセットテープで、激渋のセレクション。昼は鎮守の森の樹下で昼休みとフィルム写真撮影。仕事は日が暮れる前に終えて、銭湯の開店と同時に風呂を浴びて、レトロな地下街の飲み屋で晩酌、寝る前に本を読む。
そんな清貧を絵に描いたようような日常に、大事件が起こるわけでは無いけど、ざわざわと割り込んでくるのはやはり人間達だ。先ずはトイレの利用者、掃除中の看板を倒したまま去る若い男性、個室に閉じこもってた男の子を手を繋いで出してあげるけどそこに登場する余裕の無いヒステリックな母親・除菌ティッシュ。クズのような同僚清掃員、その耳が好きな子、なんか抱えてそうなガールズバー嬢。突然現れる親戚の女の子、その母親は運転手付きの車で女の子を迎えに来る。そう、彼は昔はそっち側に住んでいたのだろう。
休日には作業着をランドリーに持っていき、写真を現像に出し、引き取った写真を選別する。木漏れ日の撮影はファインダーを見ずに撮るので偶然の産物。そして小料理屋で一杯。そこのママがギターの伴奏で歌うんだけど、めちゃ上手いんだ、それは見てのお楽しみ。三浦友和もいい仕事してます。
公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手。東京の中でも再開発されたピカピカの建築群でなく、小さなデザイントイレと、人々の息遣いがある下町、街中の鎮守の森、それらを繋ぐ首都高...を上手く絡めてくれた監督に拍手。エンドクレジットの最後に、小粋なオマケがあるのでお楽しみに。
何も起こらない映画。素敵な映画。
渋谷区のトイレ掃除を仕事に、毎日同じリズムで暮らしている主人公の話。
基本的に、何も起こりません。というか、そのくらいの気持ちで観た方が絶対いい映画。
その中にさざ波のように起きる「ゆれ」を楽しむような映画です。
ビム・ベンダース監督って「ベルリン・天使の詩」の監督か。あの映画も好きだったなあ。街と人を撮るのが上手な人なんだね。
そして主人公を演じた役所さん(広司)、カンヌ国際映画祭 男優賞 受賞おめでとうございます!!
ある男が語る「影って、重なると黒くなるんですかね、変わらないのかな?」 に対して主人公が「黒くなりますよ」と力説するシーンがある。
あなたと彼女が出会っ(て後に別れ)たことに意味がある(重なった影は、濃い)のか、意味がない(重なっても、なんら変わらない)のか、という点を言っているのか、
私の暮らした昨日と、まったく同じような今日、それが重なったら濃くなるのか、それとも全く変わらないのか、という点を言っているのか。
いずれにしても、「黒いですよ。ほら、濃くなっていますよ」と力説するのには、深い深い意味がある。俺もそう思う。何もかわらないなんてこと、決してない、と。
主人公が、毎日眺める木もれ日、それが本作の主題です。ほら、なんにも起こらないでしょ。
だけど、素敵な映画なんだよなあ。すごい。
おまけ
本作内に登場する2つの書籍をググってみました。
・パトリシア・ハイスミス「11の物語」の中の一篇「すっぽん」は、ある出来事をきっかけに、話を聞かない母親に爆発してしまう少年ヴィクターの話。(Wikipediaから引用)
・幸田文の「木」:随筆。「樹木を愛でるは心の養い、何よりの財産」 父・露伴のそんな思いから、本随筆の著者である娘・文は樹木を感じる大人へと成長した。著者の透徹した眼は、木々の存在の向こうに、人間の業や生死の淵源まで見通す。北は北海道、南は屋久島まで、生命の手触りを写す名随筆。(以上、新潮社の紹介文から引用)
おまけ2
この感じ(何も起こらないけど素敵な映画)は、ジムジャームッシュ監督「パターソン」以来だなあ。気持ちがいい。そういえば大森立嗣監督「日日是好日」もそうだったか。
おまけ3
この映画とは全く関係ないが、「木漏れ日」と言えば、下記の実験をぜひ多くの人に知ってほしい。科学、つまり「『なぜ?』を突き止めたい」という心、突き止めた時の喜びに、年齢は関係ないことを心から感じることができる、小学生が行った実験記録です。
映画.comにはリンクはおけないので、ブラウザで 「木漏れ日の謎!すごいぞ!自然現象!」 でググってみてください。お手数です。
うーん、いいんだけど。
平山さんに会えて良かった
大晦日の最終上映『PERFECT DAYS』をぶらりと観に行きました。この日のこの時間にベストチョイスな映画。しかも2023年のベストワン。
お客さんは10名に満たず。20代から70代まで。20代の若者に上映後にトイレで目が合うと何だか不思議な感じ。
『パリ・テキサス』のハリー・ディーン・スタントンや『ベルリン・天使の詩』のブルーノ・ガンツの影が被さり、ヴェンダース監督の優しさが染みました。どうやら光も影も重なると濃くなるようです。
連想ゲームが止まらず、小津映画の平山氏やジム・ジャームッシュのパターソン氏、アキ・カウリスマキの映画、そしてモネの絵などが思い浮かび夢に出てきそう。
音楽の使い方がまた最高。登場人物、それぞれの来し方を連想させる。
平凡で同じように見え、一瞬で移ろう光と影を切り取ること、それは映画のことでもありますね。そして、映画を愛することは、一人ひとりのかけがえの無い人生を愛することに通ずるかも知れませんね、平山さん。
会えて良かった。
豊かさは金でも物でもない
毎年、大晦日は一年の心の汚れを落とすため、感動作や生き方を見つめ直すような作品を選んで鑑賞しています。そして2023年の締めの一本に選んだのが本作。本当は公開日に観に行きたかったのですが、今日まで我慢してやっと鑑賞してきました。
ストーリーは、年季の入ったアパートで独り暮らしをするトイレ清掃員・平山の日常を淡々と描くというだけのもので、作品を通して描かれるような物語はありません。あえて言うなら、人生という長い物語のほんの一部を通して、平山自身を描いているような作品です。それなのにこれほど惹きつけられるのは、彼の生き方に魅力を感じるからだと思います。
平山は、夜明けとともに目覚め、植物に水をやり、身支度を整えると、缶コーヒーを手にして、気分に合わせた曲を聴きながら車を走らせ、目的のトイレに着くと無言で丁寧に手際よく清掃をしていきます。昼はベンチで木漏れ日を眺めながらサンドイッチを食べ、仕事を終えると銭湯で汗を流し、帰りに馴染みの居酒屋で一杯飲み、帰宅後は読書しながら寝落ちします。そんなお決まりのルーティンが休日にも存在し、ひたすら同じ毎日が繰り返されているように見えます。
しかし、平山の姿を通して、判で押したような日々の中にも、必ず異なる出来事はあり、同じ日々など絶対に存在しないことに気づかされます。その日にしか出会えないもの、気づけないもの、感じられないものがあり、それを一つでも多く経験することが、人生を豊かにしていくことなるのだと思います。そのためには、毎日を新鮮な気持ちで迎え、すべてのものに真摯に向き合い、心豊かに生きることが大切なのではないでしょうか。偶然できる木漏れ日の美しさに惹かれ、思わずシャッターを切る平山の姿は、まさにその象徴のように思えます。
平山の過去が直接描かれることはありませんが、運転手付きの高級車で現れた妹や彼女の言葉から、かつては裕福な生活を送っていたものの、父との軋轢から家を出て、以来妹とも疎遠となって久しいことが推測されます。おそらく人生のターニングポイントとなるような大きな出来事もあれば、作中で描かれる日常のさざなみのような小さな出来事が無数にあり、それらが今の平山を形作っていったのでしょう。毎夜、眠りについた彼の頭には、その日の出来事がぼんやりとした影のように現れます。彼の「影は重なると濃くなる」という言葉が示すように、人生に起きた無数の出来事が、人を変えないわけがないのです。その変化は、植物の生長のようにゆっくりとわずかなものかもしれませんが、やがて木漏れ日をもたらすような大樹となるのでしょう。姪のニコは、平山に木漏れ日のような穏やかな温かさを感じて頼ってきたように思います。
そんな平山の背後に、いつもスカイツリーが描かれます。当たり前のようにそこにあるものの、見る位置や角度、時間帯によってさまざまな表情を見せ、これも毎日同じではないと訴えているのでしょうか。それとも、圧倒的な存在感で誰もが見上げてしまう建造物として、そこにいながらも石ころ同然のように扱われるトイレ清掃員との対比として描かれていたのでしょうか。私は、これまで数え切れないほど見かけたトイレ清掃員をついぞ気にしたことはありません。しかし、私たちの便利で快適な生活は、自然の恵みと機器の発達によるだけでなく、こうした人々のたゆまぬ努力に支えられているのだと気づかされます。そう思うと、社会で働くすべての人たちに感謝の気持ちが湧いてきます。
ラストは、これまでの出来事を思い返すようなやわらかな平山の笑顔、そして滲む涙。彼の胸に込み上げる思いを想像して、こちらも熱いものが込み上げてきます。人生を長く生きた者ほど、多くのことを感じられるのではないでしょうか。一年の締めくくりにふさわしい、心に染みる作品でした。おかげで2024年も新たな気持ちで歩んで行けそうです。
主演は役所広司さんで、圧巻の演技に魅了されます。脇を固めるのは、柄本時生さん、アオイヤマダさん、中野有紗さん、麻生祐未さん、石川さゆりさん、田中泯さん、三浦友和さんら。
そんな満ち足りた日々
役所広司が素晴らしい
いつもの街が違って見える
気づかないでいたこと、見過ごしていたことを教えてくれる。
『パターソン』を見た時にも感じましたが
映画館を出た後、いつもの街が違って見えるなんて、ものすごい映画だと思います。
ビム・ベンダース監督には、渋谷がこんな風に見えているのか!
すぐそばにある小さな楽しさ、小さな不思議、小さな幸せに気づける目。
この世はこんなにも美しいのか。
無機質に見えていた都会にも自然があり、日々のルーティンの中にも様々な驚きと冒険がある。
公衆トイレを美しく保つということは、文化的な人間の尊厳を守るということだと感じました。
カセットテープの選曲が良い。
ちあきなおみの『朝日のあたる家』が好きなので、もし出演されていたら…と妄想が止まりませんでした。
無名塾の芝居が苦手なので…すみません
そこだけ。
劇場で拍手が
淡々とした日常に浸るための映画でした。
一瞬のリズムを慈しむ
2023年。ヴィム・ヴェンダース監督。東京の下町でトイレ清掃員として暮らす男。自らを律して単調な毎日を孤独に生きているが、音楽と光のリズムが男に降り注ぎ、男の人生を励ましている。「孤独に耐える」的な感じになっていないのがすばらしい。
亀戸あたりに住む男の10日間ほどの生活は寝ているときに見る夢も含めて極めて単調だが、カット割りには独特のリズムがあって楽しい。というか、事態は逆で、実は単調な行動の繰り返しと思わせて、起伏に飛んだ出来事がたった10日余りの間に次々に起こっていると見るべきだろう。音楽と光と編集によって複雑になっているだけではなく、実際に複雑な出来事が起こっているのだ。同僚が狙っているホステスになぜかキスされたり、昼食場所の神社の境内で若い女性に注視されたり、不思議な舞踏を舞うホームレスと遭遇したり、姪が家出したり、行きつけのバーのママの情事を覗き見てしまったてその相手の男に声をかけられたり、、、。だから、それなのに、「単調」と言いたくなるようななにげなさを作り上げているところがすごいのだ。
男が就寝前に読む本の選択がすばらしすぎる。フォークナー、幸田文、ハイスミス。これだけでただの単調な生活の男とは言えない凄味を感じる(きっと音楽の趣味もいいのだろう。門外漢だからわからないが)。だからこそ、世間に背を向けて「孤独に耐える」感じになりそうなところを、自然と世界を受け入れて、毎朝を空を見上げて笑顔になれるところが感動的なのだ。
ノマドランドのような感覚
映画版「時代おくれ」
素晴らしかった。
何もない日々、いつもと同じ日々の中の
喜怒哀楽、嫉妬、不安や恐怖、
きっと満ち足りてない完璧じゃない日々の
結集がパーフェクトデイズになるんだと
人生の一本級に感動しました。
役所広司1人を撮ってる時はとても日本人的で
なんでこんなに日本人を日本人らしく撮れるんだ?
と思ってたら、
他のキャラクター、柄本時生の狙ってる女の子や
姪っ子、三浦友和と絡むと急にファンタジーっぽく
なるところもヴィムベンダースらしいなと思いました。
私も毎日仕事場と家の往復の毎日だけど、
それをつまらない人生だなと思うのではなくて、
一つ一つを丁寧にやって行く事で人生に深みが増して
愛せて行けるのかなと思いました。
(そんな説教臭い映画ではないけど)
すぐ影響を受ける僕は
近くに公園があって、銭湯があって、飲み屋もある。
すでに良い人生を送れてるじゃない!
と思ったのと、アパート借りようかなと思いました。
とにかく素晴らしかった。
ヴィムベンダースにオファーした人に心からの拍手を
送りたいです。
わりとこんな風に生きてます。
12月は忙しくてほとんど休めず、日銭稼ぎに都内や横浜市内を行ったり来たり。仕事の準備なんかもあって映画もあんまり観てません。そしてずーっと気になってたこの映画を、漸くできた休日、今日大晦日に漸く観てきました。
ヒラヤマさんが流す音楽がストライクです。朝日のあたる家、ドックオブベイ、そしてパティ・スミスのカセットテープから流れる音楽(題名わからん)、懐かしい。ヴァン・モリソンの茶色の目をした女の子、ルー・リードの名曲パーフェクト・デイ、最後はニーナ・シモン姐さんのjazz numberフィーリンググッド(気持ちいい!サイコー)。そして東京の美しい映像。僕もこの風景の中で生きてます。パーフェクトでした。一年の締め括りに佳い気分になれました。
日銭稼ぎながら、軽く一杯やって、音楽聴いて、古本読んで…。これって僕のこと?そう思って観たおじ(い)さん沢山いますか?
※アヤ、姪っ子のニコ、ホームレスのじいさん、スナックのママの元夫、いかにもヴィム・ベンダースの映画っぽい登場人物でしたね。
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