PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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神の視座
私は無宗教ですが、神様がいるとしたら、こんな人間(平山)に、一番に微笑ましさを感じているだろうと感じる映画でした。自分は絶対にこんな生き方はできないなあと思いつつも、平山の生き方に共感してしまうのは、人間の根底に息づく「何か」に触れるせいかも?だからベンダース監督の視座を「神」と表現しました。それにしても映画監督ってすごい。
監督のインタビューで、平山の人物描写のヒントとしてレナード・コーエンがあった、と知りました。レナード好きな私はここにも感動。・・・・と、取り留めのない感想ですみません。辛いこと多い世の中ですが、生きていくのがまた少し楽しみに変わりました。
PERFECT WORLD
ひとりだけど、ひとりじゃない
何も起こらないんだけど涙が止まらない。
確かに質素な日常の中にささやかな幸福を見つけるというテーマはあるけど、自分は違うところに心ひかれた。
平山は孤独なんだけど、孤独じゃない。
決して世捨て人じゃなくて、無口な性格ながらも世界に開かれてる。
飲み屋のおっちゃんとか、子供とか、〇×ゲームとか、木漏れ日とか。
大都会の片隅で、ひとり世界に開かれてる。
なんかね、尊いのよ。
平山と同じ境遇だったら人を恨んだり、羨んだりとか
その人の性格によってはあると思うんだけど、
平山はぜんぜんそういうところがない。
自分ももっと世界に開かれていたいと思った。
表現の仕方として、音楽とか映像とか芸術度が高くて、
かつ作品として心に訴えてくるところが多くて、
巨匠の面目躍如といった感じ。
過去作の「パリ・テキサス」と「ベルリン天使の詩」を久しぶりに見返してみよう。
鑑賞動機:カンヌ7割、役所さん3割
2024年1本目。
何も起こらない変わらない日々のようでいて、全く同じ日常というわけでもなく、役所さんだから成立した映画の気がする。
『11の物語』にまんまと食いついてしまった。カタツムリのイメージが強かったけど、すっぽんもあったのか。ヴィクターみたいになるってもう脅迫ですよそれ。
いろんなとこに色んな人が出てたみたいで、イヌコさんは声ですぐわかったけど、えっ、写真屋の店主柴田元幸ってあの柴田元幸?!
良くぞ外国人監督が
まさに「完璧な一日」、ヴィムヴェンダースの小津的日本。
いつもと同じように起きて歯を磨く
いつもと同じように缶コーヒーを買う
いつもと同じようにトイレ掃除する
いつもと同じように焼酎を飲んで帰る
ああ、なんて完璧な一日だろう、とルーリードが歌ってる
ヴィムヴェンダースは健在、
誰にも描けない日本人的感覚で私たち日本人に「何が完璧か」を教えてくれた
とにかく東京がすばらしくうつくしい街だと思わせてくれる光の描き方
役所広司の台詞の少なさと佇まいは「すばらしき世界」同様眼を取られる、彼の存在感は他の俳優とは一線を画しこの圧倒的「役」の人となり言葉少ない彼の気持ちを知りたいと思いながらその映画の時間を過ごす。
そう「ベルリン・天使の詩」では天使の視線で街を俯瞰し、
「パリテキサス」では日常を捨てたハリーディーンスタントンが荒野を彷徨い人としてロサンゼルスを傍観し、
この映画では役所広司が東京を。
ああ、「まさに完璧な一日」、
良い映画を観た。
ルーティン
仕事のある日(休日も?)のルーティンワークが丁寧に描かれる。
思い出したのは「おみおくりの作法」のジョン・メイ。もっと判で押したような1日だった気がするが。
寡黙な平山さんはほとんど喋らない。
同僚にも返事もしない。
でも挨拶はちゃんとするし、子供には優しく話しかける。
無口な人の役だが、話し出すといつもの役所広司さんが見え隠れ。
や、全く隠れてないよ。
平山さんの仕事はきれいなトイレの掃除なんだね。
入ってすぐに素手でゴミを拾っていたけど、あそこは軍手かゴム手じゃない?
トイレは新しくておしゃれだろうけど、ゴミは素手で拾えるほどきれいじゃない。
その手であちこち触るなんて…あ、自分は潔癖症でもなんでもないです。
住んでるのは古びたアパートだけど、駐車場付きなんだね〜。
駐車場付きの都内のアパート。
浅草なんて羨ましいな。
お風呂はなくても銭湯に通えて、外で呑んで休日はちょっと贅沢も出来て。
理想だな。
フルタイムだけど…やろうと思えば自分にも出来るんだろうか。
季節は、春くらいなんだろうか。
夜でも窓開けてたし。
パーフェクトな生活はエアコンがなくても快適じゃなくては。
役所広司さんはカッコいいし、好きだけど、現実味が無さすぎてなんとなく鼻についてしまったな。
もっと言ってしまうと、こうすれば貧しく見えるよね、というイメージを押し付けられてる感じ。
新年早々のせいか、普段はガラガラの大きいシアター、割と人が入ってた。
近所の映画館、チケット販売は対面式なんだけど「パーフェクト・ワールド1枚!」って大声で言って「パーフェクト・デイズですね」と冷静に返されてしまった…涙
(´∀`)なるほどね
人間臭くて好き
日本が舞台の洋画の様
毎日キチッとしたルーティンで暮らしてるようで、人生色々。
生きてりゃ同じ日々なんて無く、自分にしか分からない、色んな経験をするものだ。
最後のアップシーンがその全てを表してるのは圧巻‼️
日々見慣れた日本が舞台で、日本を代表する役者さん、役所広司さん主演だが、外国の人が日本を見ると、こんな風に見えてるのか?と、ちょっと違った角度から、芸術的に見えるし、公衆トイレも色々あるもんで、外国の人が感動しそう。
日本人の表情も、外国の人が見ると、確かにこんな感じだなと。
たまに、日本人ならハグはしないだろ、とか音楽センスとか、画角アングル、道具の見せ方とか、外国チックさも感じる。
それがまたオシャレで、日本人には無い感覚で、洋画を見てるようでした。
色んな感想表現があるが、「嬉しかった」と言う感想は初めて。
自分を理解してくれたような、好きな映画はたくさんあるが、数少ない、大事な映画に出会いました。
映画は好きだか、監督さんとか俳優さんに詳しくはないが、ビム・ベンダースさんの作品を他にも見たくなりました。
日常生活のASMR
印象に残ったのは、日常生活の様々な音だ。
箒の擦過音、車のドアを閉める音、鳥のさえずり、缶コーヒーを開ける音など、それぞれが立っているように、個人的な感覚なのかもしれないが印象に残った。
もしかすると、ストーリーに衝撃的な事件が起きないぶん、そちらに気をとられたのかも知れない。
男はひとりではあるけれども、朝、空を見上げるその顔は孤独の陰を宿してはいない。あるがままの世界をあるがままに受け容れている。
ささやかな歓びや、悲しみ、戸惑いや腹立ちの感情を抱えながらも、くらべて得られる幸福とは違う場所で彼は生きている、木々の陽だまりのなかで。
観たあと、余韻に浸っていたくてエンドロールもすべて終わるまで座っていた。ほかの人達もほとんどそうしていた。
いい映画だった。
小津安二郎を追い続けたヴェンダース監督の、師に宛てた一つの回答ともいうべき一作
東京で清掃作業員として働く平山という年配男性(役所広司)の日常を追った本作は、前半は淡々と、しかし飽きさせない描写が、そして後半は平山の来歴にかかわってくるような、少し謎を含んだドラマが展開しつつ、やっぱり淡々とした語り口を保つという、ヴェンダース監督ならではの作品となっています。
市井に生きる様々な人と、無口でさりげないけど温かみを感じる交流を重ねる平山の姿は、ヴェンダース監督の代表作『ベルリン・天使の詩』(1987)の天使(ブルーノ・ガンツ)とどうしても重なってしまうんだけど、さらに言えば、東京を舞台にしているという点においても、本作は同監督が1983年の東京を撮影した『東京画』(1985)の影響を感じずにはいられません。
40年前の若きヴェンダースは、活気あふれる東京の風景を、いっぱいの好奇心と小津安二郎監督に対する憧れに素直にしたがって撮影していました(異様にパチンコに執着を見せる)。それからちょうど40年後に撮影した本作では、ヴェンダース監督は単に小津監督への敬意を表するだけでなく、尊敬する師の映像美学の中核をなす要素、そして日本の美意識の深奥とは何か、という問いにまで踏み込んでいます。
TOTOから依頼された短編映画の企画から、ここまでの作品に仕上げるあたり、さすがヴェンダース監督だと感心しないではいられません。
絡みそうでなかなか絡まない登場人物同士の表情と視線の交わりがほほえましく、作中にちりばめた平山の人生にかかわる謎は謎のままで残しておいたことも、良い鑑賞感をもたらします。
古い木造アパートの一室でデスクライトが灯っているだけなのに、無上の美しさを感じさせたり、心打たれるような影と光のゆらめきなど、映像の美しさは特筆したいところです。平山の選曲もすごいセンス。
同じ朝を迎えることが出来る幸せ
年末年始休みをダラダラしたくて、12月29日、休みの初日にこの映画を観ました。
初老の男の変わらない日常とほんの少しの変化を淡々と描く。
”何も始まらない、何も解決しない、何も説明しない“
なのにエンドロールのあと何故か幸せな気持ちになっていた。
映画とは関係ないが、今、私の頭の中で「ラジオ体操の歌」が流れている。
”新しい朝が来た、希望の朝だ“
子どもの頃、
“新しい朝が来た、昨日の朝だ”と
勘違いしていた。
私も還暦を過ぎた。平穏な日常、昨日と同じだが“新しい朝“を迎えられる幸せを時々想う。そういう年齢になったようだ。
この投稿は2024年1月3日。休みの最終日。
新年明けて、驚くことが続いたので更にそう感じているのかもしれない。
A new dawn, a new day, a new life
渋谷トイレプロジェクトの清掃員の日常を綴った作品。
錚々たる面々のデザイン性のある渋谷のトイレと訪れる渋谷の人々と、平山の住んでいる木造の築古アパートとスカイツリーの見える下町情緒溢れる街とそこに住まう地元のおじいちゃんおばあちゃん。東京という街の雑多性の表現がとても良いな。
ヴェンダース監督の東京の切り取り方、とても好きでした。銭湯やスカイツリー、首都高やスクランブル交差点、浅草、人力車、外国人監督だからこその、東京、そして日本に対する視点が分かりやすくも見入ってしまう都市の映像たち。普段見慣れている光景だからこそ、こうして映像で見ることで見える景色がまた変わってくる。東京という街で住んでいる自分だからこそ、この作品に出会えたことはとても貴重な鑑賞体験になった。
ことストーリーについては、トイレの清掃をするとりとめもない平山の日常を描いているだけ。同じような日常に見えて、そこには小さな変化が溢れている。朝家の扉を開けて見る空の色と外の空気。その日の気分によってかけるカセット。トイレの清掃中に出会う人々。昼ごはんを食べる公園の木の木漏れ日、、毎日規則正しくルーティンをこなしているからこそ、小さな変化を楽しむことができている。週末は洗濯をして、フィルムカメラを現像し、本屋さんに行って本を買い、スナックのママに会いに行く。これを毎回毎回繰り返す。
平山がニコに対して言っていた「世界は色んな世界がある。繋がっているようで繋がってない世界もある」。まさに環世界的考え方、平山は自分の世界をもっていて、その世界を楽しむことが出来ている。大好きなカセットを楽しみ、フィルムを楽しみ、読書を楽しみ。外の空気を感じ、木漏れ日と対話し、日常の小さな幸せを見つけ、感じる。
豊かさとは、幸せとは何か?みたいなことを感じさせられる。
平山から離れていったタカシや、ニコのお母さん。
「何でトイレ掃除なんてやってるの」見た目や金や世間体を気にして生きてく人々。
一方で平山に近づいてきたニコや、アヤ。
自分の好きなもの、好きなこと、世界の中での自分の世界を形づくりつつある人々。
この二項対立もじわじわ来る。小さくても、幸せを感じて噛み締めることができる人が豊かなのか、世間的には成功して見える人が豊かなのか。
そんな大切なことを、この穏やかな美しい映像の中で語りかけてくれた素敵な作品。
中でも印象に残ってるシーンは
ニコのお母さんとの別れ際の涙するシーン。
世界が繋がれないことの悲しさなのか、ニコをどうすることもできない悔しさなのか、父親を思い出したことによるものなのか。
そうは言っても、やっぱり世界は人との繋がりで出来ている。自分の中で幸せを見つけることができることは素晴らしいこと。それがあるからこそ、それを誰かと共有出来ること、一緒に涙できること、笑えることがより一層幸せなものに感じるんじゃないかな。
車の中でかかる70.80年代の音楽がとても良い、東京をまた違った景色に映してくれる。
役所広司の渋さと、
ニコ役の中野有紗がとっても良かったので今後に期待。
2024年一発目にして、とっても良い映画に出会えました。
普通のオッサン ファンタジー
昨年12月22日に配信された読売新聞オンラインの、柳井氏とヴェンダース監督の対談によると、ヴェンダース監督は、「平山さんは、今の私たちの世界が必要としているキャラクターだ」と前置きしながら、今作は『ファンタジー』であり、監督が寓話的、理想的に創造したファンタジーの平山に、役所広司という稀代の名優がリアリティを与えて実像化してくれたことに感銘しているようだ。
そもそもファンタジーなのだから、トイレにウンコやゲロが無いだとか、浅草から渋谷に首都高通勤はおかしいとか、ボロアパートがメゾネットで駐車場付きだとかいうリアリティの粗探しや、東京都・ユニクロ柳井・電通への下世話な非難・酷評はおかしいような…。
また、このレビューサイトに多く集まっている、今作を満点で高く評価し、ルーティン、ルーティン、清貧、清貧…と連呼し、感動、感涙しているレビュアーの方々は、おそらく今までの努力と運により人生全般が順調であり、家庭・人間関係も円満、老後まで経済的な心配も皆無で孤独とも無縁、自身の人生の最後まで、清掃や道路工事警備員のような仕事に就くことも、ボロアパートでの質素で定型的で慎ましい独居老人生活をすることなど全く実現性が無いから、フランダースの犬を観たような感情になるのであろうか?
私の感想はというと、平山に、現在から近い将来をリアルに自己投影でき、当たり前の日常として、穏やかにシンクロできた。
ここのレビュアーたちが『貧困層』『負け組』『底辺の仕事』『孤独』と呼ぶ生活をリアルに生きる還暦独身男である私の経験から言えば、平山のような暮らしの未経験者が思うほど孤独でもなく、自由でもなく、仕事の貴賤を考えるゆとりもない。経済事情から、なりふり構わず働かざるを得ず、家賃は安く生活用品は必然的ミニマルで、仕事と家事を一人で毎日きっちりこなすためには当たり前に定型的な生活となる。鍵や財布・免許証、腕時計などの生活基礎的なモノを忘れたり失くしたりしないよう、いつも決まった同じ場所に必ず置くのは当たり前。同じ時間に起床し、出勤前に最低限の身だしなみを整えて同じ時間に出勤し、缶コーヒーを飲み、天気の変化に少しばかり気分が変わり、変化のないルーティンワークを勤勉にこなし、同じ時間に同じ場所で昼食をし、いつもの景色の変化に季節を感じ、帰宅後は自炊、家事、入浴し、同じ時間に寝床に入り、少しばかり読書や考え事をしたら、疲れているから直ぐ寝入る。微睡の中で過去を思い出すような夢を見たりもする。たまの休日も、若い頃のような楽しみや趣味、友達付き合いも無くなる年齢で、家でゆっくり休養したい。過去の幸せや苦い体験を振り返ったり、たまに心が動揺するような人とのコミュニケーションがあると、なんとも言えない泣き笑いの感情と表情になることも当たり前で自然なこと。
そもそも還暦も過ぎた男が、一人で自立し、真面目に、他人にも自分にも優しく、慎ましく生きるということは、それだけで毎日かなり忙しく、身体が疲れているのである。そんな日々が、"Perfect" とは言えずとも、意外と"feeling good" なのだという自己肯定や達観を、ファンタジー平山と共有できる、心が穏やかになれる映画であった。
日本の多くの60代以上の男性は、平山と同じくこの世に大きな未練も絶望感やさしたる感傷や感動などの抑揚も、将来の夢や目標を持つ歳でもない。他人に積極的に話したいこともない。さりとて世捨て人や孤高でもない。今日健康に生きているから働き、働けて生きていることそのものがまあまあ幸せなのではないだろうか。恐れがあるとすれば、社会から必要とされなくなること、病気などで働けなくなり、自立した生活ができなくなることくらいしかない。
人生100年時代、年金問題、老後破産、孤独死…。そういう不安を少しでも持っている六十路男こそが観るべきファンタジーであり、生き方のひとつのロールモデルであり、いろいろあるが人生悪くないぞという、普通のオッサン讃歌としての佳作だと感じた。
本当に面白くない
本作が2024映画初めで良かった!!
明けましておめでとうございます。1/2、本日観てきました!
多くを語りません!笑
星も日和って4.5ですが、5です!
音楽に造詣が深ければ、尚、楽しめるんだろうなと思いました。
こんな清貧に生きていければ、人生豊かなんだろうなぁ…
ストーリー自体も、終盤に「!?」があり、時間を感じずあっという間にハッピーエンド。(?)
内容も深読み要素があり、映画を考えて観る方は大満足だと思います。
個人的には、佐藤浩市氏や光石研氏、松重豊氏などなど色々な名優で見てみたい…(もちろん役所さん最高!色々頭に残る名言がありますが、私は“今の積み重ね”が印象に残っています。※私の勝手な暗喩解釈です)
是非、映画好きの方はご観賞ください!!
エンドロール後が有りますのでご留意を!
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