PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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日常の素朴な感じがとても良かった 生き方は人それぞれ。仕事との向き...
日常の素朴な感じがとても良かった
生き方は人それぞれ。仕事との向き合い方
同じルーティンを繰り返していても、ちょっと違う出来事があったり。自分の生活にも些細な出来事を大切にしたい!
テーマは虎舞竜のロード!
なんでも無いような事が〜・・・・それってまんまロードやないか!)普通の生活って当たり前だとおもっているけどそれって幸せなんだよって気づかされます!
この映画のテーマは正にその一言です。
終わりです さようならバイバイ!
終わりでも良いんですが多少感想書いて行きますよ。
人は毎日が単調な事の繰り返しで退屈でつまらないから不幸せだとか思うんですが、大きな病で死にかけたり余命宣告されて助かったりすると当たり前に健康で普通に生活出来てる事って実は幸せなんだって気付かされたりするんですが!この映画は鑑賞する事によってなんでも無い普通の事って幸せなんだと教えてくれる素晴らしい映画でしたね。
ただ昔に辛い事があったからこそ今のこの生活にたどり着いて普通の事に幸せを感じて行きて行けるようになってると思われるのですが過去の辛い出来事を回想シーンで見せたりしないから最後の泣いてるシーンで色々苦労してるんだよな結局ってなるので余計なシーンが無くて大正解だと思いました!
あと演出や内容について言いますと映画を見ていて何かトラブルや事件が起きるんじゃないかって考えながら見ていたり、オチはどうするのよ?って考えたりしてる時点でそうじゃねえんだよ!普段の生活にオチなんて無い(ある意味映画的では無い)ってのを突きつけられたし、何も起きないで同じ事をしてるだけの内容でセリフすら極力無いのを飽きずに延々と見てるが飽きないのは何故?
事件がやたら起こる割には面白くないし喜怒哀楽の表現が過剰なだけで内容はつまらなくて眠くなる作品もあるのに何故?
しかも効果音すらないのに?
理解不能の面白さで?だらけになるんですよ!
更には主人公を妨害する悪い人や性格が悪い人も居ないしラスボスと最終決戦も無いのに面白い? は?ってなりました。
こんな作品今まで見た事無いから驚きの連続でした!
たまーにカセットで聴いてる曲がかかるだけで癒されて(曲がいちいち良くてサントラというかカセットテープでサントラ発売されたらカセットテープを再生するウォークマンあるかどうか知らんけど買いたいとまで思った)落ち着くしめちゃくちゃリラックスしながら見てるしデトックスというか心が綺麗に浄化されてるのを体感できるくらい心地良い時間を過ごせて、ある意味初めての衝撃映画体験でした!(静かだと落ち着かなくて家でも音楽かけたり見る気も無いのにとりあえずテレビを付ける必要なんて無い事に気づいた)あと役所さんの演技が全ての感情を極力抑えているのに微表情で見ている人にセリフ以上に伝える技術というのが高度過ぎてカンヌの最優秀男優賞は当然でしょって平気で言えるくらい素晴らしい演技をしてました。
便所を掃除するおじさんを見るだけなのに飽きずに2時間見れるって偉業というか凄さのレベルのケタが数段違うって事は理解したつもりです!
あと今時の映画で昔のテレビサイズ4:3画面は逆に新鮮でスクリーンXで見たらどうなるんでしょうかね(笑)
それで思ったんですがこんな内容の作品を作るってチャレンジするというか成立させられる監督って他にいるのか?って考えてしまったというか逆にこんな内容でこのセリフ量で観客が全く飽きて眠くならないような2時間を過ごせて映画祭で賞を取って作品としてのクオリティの高さを証明してるとか凄いのポイントが多過ぎなんじゃあ笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑
あとセリフを極力言わないで語る作品だったのでゴジラ(見たものとその時の感情をセリフで大袈裟に全部言ってしまうという逆に珍しくて他では見た事無い会話と演技)と比べると対極過ぎる演出やセリフ量だよな〜って考えながら見ていました。
ラストシーンで主人公の泣き顔アップの長回し(これで過去に色々大変な事があったのがわかるしそれを表しているんですが普通になんで最後泣いてるの?ってなる人もいますね)を写すのはホラー映画のパールと全く同じでそんな被り方するんか〜い!っておもいました。(ラストシーンは脚本に泣くっ書いてあっただけだったんだってさ!あとパールも最初からあのシーンあった訳じゃなくてなんとなく長回しで最後にカットをかけなかったとか言ってたはず)
今更ながら勉強になる事と自分の今までの考え方や思考などを良い方向に導いて貰えたのでありがたいです。
最後に似たような内容の作品ばかりの時代に似た作品が全く無い(おじさんがトイレ掃除するだけの映画なんて無いです笑)オリジナリティに溢れた超良質作品に出会えて良かったです。
この映画はレーティングがR-60指定とかでいいんじゃねってくらい高齢者には刺さる内容だとは思います。
この作品は他の映画監督が見たらどう思うんでしょうかね?(こんな映画を作れたら俺も一人前って思うんでしょうね多分、普通非日常が起こるのが映画やドラマの当たり前になってるから何も起きない🟰つまらないでは無いのを証明した作品とか逆説的過ぎるんよ)
期待せずに淡々と観ると良い
ルーツは都のトイレ施策の短編らしい
それを考えながら観たほうが腑に落ちるかも
セリフが少なさか良いところだが、ところどころに発生する数少ないセリフに演劇くささがあり、もったいないと感じる
自分は自分、ひとはひとの連呼など
さらっと一度だけ示唆すれば観客の心にふわっと暗示できたのに、連呼することで観念の押し付けに思えた
そこの感覚のなさが日本語スタッフの甘さに思える
癌患者との会話はとても良かった
タカシ役の役者も、どの映画でも似たキャラ、舞台風の演技で、登場しただけでがっかりしてしまった
彼のために作品自体に安っぽさが出てしまった
無名のリアルな演技をする役者に出て欲しかった
畳の部屋で寝転ぶ心地良さはとても伝わってくる映画
その小さな微笑みが語っている
観る人の想像を大いに掻き立てるすごい作品。
すべては役所さんの演技が物語っている。
役所さん扮する平山は東京都内にある様々なトイレの清掃員。そんな平山が朝目覚めるところから始まる。
何度となく平山の毎日のルーティーンが映し出される。
朝起きたらまず いつも通りに寝ていた布団を畳み部屋の隅に片付け、いつも通りに集めている芽吹いた新芽をスプレイヤーで愛で、いつも通りに身支度をし、いつも通りに壁の飾り棚から身の回りの物を携帯する。
何故か時計は身に付けないんだ。
仕事現場には車で向かい、今は珍しいカセットテープのミュージックを聴きながら小さな幸せをかみしめる。
そして仕事が終われば1度家に帰り、いつも通りに銭湯に行き、いつも通りにいつもの居酒屋で一杯ひっかけて帰り、いつも通りに本を読んで眠くなったら寝る。
休みの日には少し朝寝坊して、いつも通りのルーティーンをこなす。
そうなんだ。腕時計は休みの日にするんだ。
そして休みの日のルーティーンも、いつも通りにコインランドリーで洗濯をし、いつも通りに古本屋で気になる本を購入し、いつも通りに素敵なママのいる小料理屋に通う。
日々の生活の中に、小さな幸せを見出し、小さく微笑む。
その微笑みがいかに小さな満足を映し出しているか、その微笑みは平山が言葉を発しなくても、その表情で何故か伝わってくる。
しかし、平山が何故トイレの清掃員をしているのか。
何故今にも壊れそうな古いアパートに身を寄せているのか。
何故そんなにも無口なのか。
何も語られてはいない。
だからこれは観る人がどのように感じるかなのだ。
初めは声を発することが出来ないのかと思うほどの至極無口な平山。トイレの清掃員だが、その仕事ぶりから真面目できっちりした人となりも窺える。でも心の奥底では優しく親切でいい人。小さな幸せを噛み締めながら毎日を過ごすが、姪のニコが母親(平山の妹)と喧嘩し、平山を頼ってきたのをきっかけに、少しずつ平山の背景が透けて見えるような。
平山は割と裕福な家柄で育ったが、厳格な父親との間に何かしらの確執があって、今の生活をしていたのだろうか。
妹のケイコも娘のニコに話したがらないほどの何かがあったのだろうけど。
ニコを迎えに来たケイコを涙ながらに抱きしめていた姿が、何があったのかはっきり分からないにもかかわらず、観ているこちらまでも深い悲しみに落とす。
ほとんどセリフが無く、細かい背景も語られないまま、だがしかし役所さんの表情のみでここまで思いをめぐらせることが出来るのは、本当に驚いた。
脇を固める俳優陣も、素晴らしかった。
役所さんの演技力に脱帽
主演男優賞を受賞した作品で、家族3人が意見一致した今年一発目の映画に、これを選択しました。
全編に染み渡る、不器用ながらもまっすぐな生き方、人を想う気持ち、なんだか以前観た「美しき世界」を彷彿させる映画でした。
じんわりホンワリ一年の初日を迎えるのに、最適な一本でした。
徹底的に役所さん、そしてアナログな生き方と「木」がキーワードですね!
自分に大切なこと
一言で言うと,真面目なトイレの清掃員の暮らしを淡々と描いている映画だ。ところが、これがとても心に染みる。何故だろう。
誰も見ていなくても,丁寧に仕事をし、お昼にはお気に入りの神社の木漏れ日でお弁当。いっぱい軽くひっかけて帰る。休日は、、という具合に彼の暮らしはほぼ決まったパターンで過ぎていく。
そこに無駄なものはなく,彼はその全てを楽しんで大切にしているのだ。清掃途中に見かける人々の暮らしに微笑む顔はとても素敵なのだ。
多分,日本人が美徳としてDNAに刷り込まれた精神が彼の中で生きているのだ。だから私達はその生き様に惹かれ,羨ましく思う。訪ねてきた姪っ子もそんなおじさんが大好きなのだ。2人の会話でとても素敵なフレーズがあった。役所広司は平山そのものだ。とてもいい映画だった。
そんなに先でもない黄昏
不思議な時間でした何もないのに退屈しない
羨ましくもない闇の始まりもわからない
でも強いなぁとずっと見てたけどラストは
俺どこに向かってるんだろう間違ってないよなでもでも…って感じでしょうか⁈
余談ですが
自販機のコーヒー毎日の銭湯カメラ等にコンビニにサンドイッチ行きつけの居酒屋に小料理屋
決して貧困おじさんではないのは確か!
ヤバい、何てものを観てしまった感
すごいものを観てしまった
淡々と訥々と…
発せられる言葉も余計な感情も削って削って淡々と時を送る…
何て映画なんだ!すごく良かった
役所広司さんを好きになってしまった…
泣けた
これまでも御手洗はキレイに使ってきたけれど、これからはもっとキレイに感謝して利用しようと誓う
自分のトイレ掃除も丁寧にやろう
それからたかしね、お金はあってもキミは恋はできないよ
でもお耳を友達にしてくれたのでチャラ!
公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手
中年独身男性トイレ清掃作業員の規則正しい日常。その作業場は、複数の建築家が丹精込めてデザインした一品もののデザイントイレ。中が丸見えで、鍵をかけるとガラスが一瞬で不透明になるトイレや、杉板小幅型枠のテクスチャの美しいRC打ち放しのトイレ、
童話に出てきそうなキノコ型や逆円錐型トイレ等々、その中には最新型のシャワートイレが設られていて、それらを職人芸のようにピカピカに磨き上げるのが彼の仕事だ。早朝街路を清める竹箒の音で目覚め、霧吹きで植栽に水を与え、自販機で缶コーヒーを買い、軽自動車で出勤する。東京渋谷、複数のトイレを車で移動。その移動の際に車内でかけるのがカセットテープで、激渋のセレクション。昼は鎮守の森の樹下で昼休みとフィルム写真撮影。仕事は日が暮れる前に終えて、銭湯の開店と同時に風呂を浴びて、レトロな地下街の飲み屋で晩酌、寝る前に本を読む。
そんな清貧を絵に描いたようような日常に、大事件が起こるわけでは無いけど、ざわざわと割り込んでくるのはやはり人間達だ。先ずはトイレの利用者、掃除中の看板を倒したまま去る若い男性、個室に閉じこもってた男の子を手を繋いで出してあげるけどそこに登場する余裕の無いヒステリックな母親・除菌ティッシュ。クズのような同僚清掃員、その耳が好きな子、なんか抱えてそうなガールズバー嬢。突然現れる親戚の女の子、その母親は運転手付きの車で女の子を迎えに来る。そう、彼は昔はそっち側に住んでいたのだろう。
休日には作業着をランドリーに持っていき、写真を現像に出し、引き取った写真を選別する。木漏れ日の撮影はファインダーを見ずに撮るので偶然の産物。そして小料理屋で一杯。そこのママがギターの伴奏で歌うんだけど、めちゃ上手いんだ、それは見てのお楽しみ。三浦友和もいい仕事してます。
公衆トイレのロードムービーを成立させた関係者に拍手。東京の中でも再開発されたピカピカの建築群でなく、小さなデザイントイレと、人々の息遣いがある下町、街中の鎮守の森、それらを繋ぐ首都高...を上手く絡めてくれた監督に拍手。エンドクレジットの最後に、小粋なオマケがあるのでお楽しみに。
何も起こらない映画。素敵な映画。
渋谷区のトイレ掃除を仕事に、毎日同じリズムで暮らしている主人公の話。
基本的に、何も起こりません。というか、そのくらいの気持ちで観た方が絶対いい映画。
その中にさざ波のように起きる「ゆれ」を楽しむような映画です。
ビム・ベンダース監督って「ベルリン・天使の詩」の監督か。あの映画も好きだったなあ。街と人を撮るのが上手な人なんだね。
そして主人公を演じた役所さん(広司)、カンヌ国際映画祭 男優賞 受賞おめでとうございます!!
ある男が語る「影って、重なると黒くなるんですかね、変わらないのかな?」 に対して主人公が「黒くなりますよ」と力説するシーンがある。
あなたと彼女が出会っ(て後に別れ)たことに意味がある(重なった影は、濃い)のか、意味がない(重なっても、なんら変わらない)のか、という点を言っているのか、
私の暮らした昨日と、まったく同じような今日、それが重なったら濃くなるのか、それとも全く変わらないのか、という点を言っているのか。
いずれにしても、「黒いですよ。ほら、濃くなっていますよ」と力説するのには、深い深い意味がある。俺もそう思う。何もかわらないなんてこと、決してない、と。
主人公が、毎日眺める木もれ日、それが本作の主題です。ほら、なんにも起こらないでしょ。
だけど、素敵な映画なんだよなあ。すごい。
おまけ
本作内に登場する2つの書籍をググってみました。
・パトリシア・ハイスミス「11の物語」の中の一篇「すっぽん」は、ある出来事をきっかけに、話を聞かない母親に爆発してしまう少年ヴィクターの話。(Wikipediaから引用)
・幸田文の「木」:随筆。「樹木を愛でるは心の養い、何よりの財産」 父・露伴のそんな思いから、本随筆の著者である娘・文は樹木を感じる大人へと成長した。著者の透徹した眼は、木々の存在の向こうに、人間の業や生死の淵源まで見通す。北は北海道、南は屋久島まで、生命の手触りを写す名随筆。(以上、新潮社の紹介文から引用)
おまけ2
この感じ(何も起こらないけど素敵な映画)は、ジムジャームッシュ監督「パターソン」以来だなあ。気持ちがいい。そういえば大森立嗣監督「日日是好日」もそうだったか。
おまけ3
この映画とは全く関係ないが、「木漏れ日」と言えば、下記の実験をぜひ多くの人に知ってほしい。科学、つまり「『なぜ?』を突き止めたい」という心、突き止めた時の喜びに、年齢は関係ないことを心から感じることができる、小学生が行った実験記録です。
映画.comにはリンクはおけないので、ブラウザで 「木漏れ日の謎!すごいぞ!自然現象!」 でググってみてください。お手数です。
うーん、いいんだけど。
元々ヴィム・ヴェンダース監督が
僕は苦手。
淡々とした物語、美しい風景。
本来は好きなはずなんだけど、
これまでの作品もなぜかぐっと来ない。
本作も同じ。
トイレ掃除もなんだかキレイすぎるし、
晴耕雨読っぽい毎日というのも、
ヨーロッパ人が考える禅の世界な
感じがして、そのまんまという感想。
もちろん、ため息が出るような木漏れ日の
美しさ、ルーリードの見事な選曲と、
素敵な映像世界なんだけどなぁ。
好きだった方、ごめんなさい。
あくまで好みの話なので
お許しを。
平山さんに会えて良かった
大晦日の最終上映『PERFECT DAYS』をぶらりと観に行きました。この日のこの時間にベストチョイスな映画。しかも2023年のベストワン。
お客さんは10名に満たず。20代から70代まで。20代の若者に上映後にトイレで目が合うと何だか不思議な感じ。
『パリ・テキサス』のハリー・ディーン・スタントンや『ベルリン・天使の詩』のブルーノ・ガンツの影が被さり、ヴェンダース監督の優しさが染みました。どうやら光も影も重なると濃くなるようです。
連想ゲームが止まらず、小津映画の平山氏やジム・ジャームッシュのパターソン氏、アキ・カウリスマキの映画、そしてモネの絵などが思い浮かび夢に出てきそう。
音楽の使い方がまた最高。登場人物、それぞれの来し方を連想させる。
平凡で同じように見え、一瞬で移ろう光と影を切り取ること、それは映画のことでもありますね。そして、映画を愛することは、一人ひとりのかけがえの無い人生を愛することに通ずるかも知れませんね、平山さん。
会えて良かった。
豊かさは金でも物でもない
毎年、大晦日は一年の心の汚れを落とすため、感動作や生き方を見つめ直すような作品を選んで鑑賞しています。そして2023年の締めの一本に選んだのが本作。本当は公開日に観に行きたかったのですが、今日まで我慢してやっと鑑賞してきました。
ストーリーは、年季の入ったアパートで独り暮らしをするトイレ清掃員・平山の日常を淡々と描くというだけのもので、作品を通して描かれるような物語はありません。あえて言うなら、人生という長い物語のほんの一部を通して、平山自身を描いているような作品です。それなのにこれほど惹きつけられるのは、彼の生き方に魅力を感じるからだと思います。
平山は、夜明けとともに目覚め、植物に水をやり、身支度を整えると、缶コーヒーを手にして、気分に合わせた曲を聴きながら車を走らせ、目的のトイレに着くと無言で丁寧に手際よく清掃をしていきます。昼はベンチで木漏れ日を眺めながらサンドイッチを食べ、仕事を終えると銭湯で汗を流し、帰りに馴染みの居酒屋で一杯飲み、帰宅後は読書しながら寝落ちします。そんなお決まりのルーティンが休日にも存在し、ひたすら同じ毎日が繰り返されているように見えます。
しかし、平山の姿を通して、判で押したような日々の中にも、必ず異なる出来事はあり、同じ日々など絶対に存在しないことに気づかされます。その日にしか出会えないもの、気づけないもの、感じられないものがあり、それを一つでも多く経験することが、人生を豊かにしていくことなるのだと思います。そのためには、毎日を新鮮な気持ちで迎え、すべてのものに真摯に向き合い、心豊かに生きることが大切なのではないでしょうか。偶然できる木漏れ日の美しさに惹かれ、思わずシャッターを切る平山の姿は、まさにその象徴のように思えます。
平山の過去が直接描かれることはありませんが、運転手付きの高級車で現れた妹や彼女の言葉から、かつては裕福な生活を送っていたものの、父との軋轢から家を出て、以来妹とも疎遠となって久しいことが推測されます。おそらく人生のターニングポイントとなるような大きな出来事もあれば、作中で描かれる日常のさざなみのような小さな出来事が無数にあり、それらが今の平山を形作っていったのでしょう。毎夜、眠りについた彼の頭には、その日の出来事がぼんやりとした影のように現れます。彼の「影は重なると濃くなる」という言葉が示すように、人生に起きた無数の出来事が、人を変えないわけがないのです。その変化は、植物の生長のようにゆっくりとわずかなものかもしれませんが、やがて木漏れ日をもたらすような大樹となるのでしょう。姪のニコは、平山に木漏れ日のような穏やかな温かさを感じて頼ってきたように思います。
そんな平山の背後に、いつもスカイツリーが描かれます。当たり前のようにそこにあるものの、見る位置や角度、時間帯によってさまざまな表情を見せ、これも毎日同じではないと訴えているのでしょうか。それとも、圧倒的な存在感で誰もが見上げてしまう建造物として、そこにいながらも石ころ同然のように扱われるトイレ清掃員との対比として描かれていたのでしょうか。私は、これまで数え切れないほど見かけたトイレ清掃員をついぞ気にしたことはありません。しかし、私たちの便利で快適な生活は、自然の恵みと機器の発達によるだけでなく、こうした人々のたゆまぬ努力に支えられているのだと気づかされます。そう思うと、社会で働くすべての人たちに感謝の気持ちが湧いてきます。
ラストは、これまでの出来事を思い返すようなやわらかな平山の笑顔、そして滲む涙。彼の胸に込み上げる思いを想像して、こちらも熱いものが込み上げてきます。人生を長く生きた者ほど、多くのことを感じられるのではないでしょうか。一年の締めくくりにふさわしい、心に染みる作品でした。おかげで2024年も新たな気持ちで歩んで行けそうです。
主演は役所広司さんで、圧巻の演技に魅了されます。脇を固めるのは、柄本時生さん、アオイヤマダさん、中野有紗さん、麻生祐未さん、石川さゆりさん、田中泯さん、三浦友和さんら。
そんな満ち足りた日々
ヴェンダースが新作でとんでもない物を作りましたね。
古き良き日本映画のようで、ものすごく細くて美しい。
劇伴は無く、葉擦れの音くらいなのも良い。
また役所演ずる平山。これはヴェンダースの敬愛する小津の「東京物語」の平山からでしょうね。
箒の音での目覚め、小さな植物達に水をあげ、缶コーヒーとクラシックロックで出かける、粛々とするトイレ掃除、ふとした○✕ゲーム、木漏れ日の写真、仕事あがりの銭湯、福ちゃんでの一杯、寝る前の読書、電気を消し微睡の中で見る一日のこと、そして箒の音での目覚め。
何とも美しい、そんな満ち足りた日々。
実に素晴らしい作品でした。
役所広司が素晴らしい
事件や事故のようなドラマチックな事を描かなくても映画は成立する手本のような作品でした。
トイレの清掃員として働く平山という男の日常のルーティーンを淡々と描いていますが、日によってさまざまな変化があり
偶然のハプニング、出会い、天候、家族等々を上手に見せてくれているので最後まで飽きることはありませんでした。
ビム・ベンダース監督の映像センスも素晴らしく小津安二郎監督に影響を受けたというのも頷けます。
エンディングクレジットの”木漏れ日”の解説がテーマというのもわかりやすくて好きな作品になりました。
ラストの長回しの平山の表情が印象的でした。
どの年代の方にもお勧めいたします。
いつもの街が違って見える
気づかないでいたこと、見過ごしていたことを教えてくれる。
『パターソン』を見た時にも感じましたが
映画館を出た後、いつもの街が違って見えるなんて、ものすごい映画だと思います。
ビム・ベンダース監督には、渋谷がこんな風に見えているのか!
すぐそばにある小さな楽しさ、小さな不思議、小さな幸せに気づける目。
この世はこんなにも美しいのか。
無機質に見えていた都会にも自然があり、日々のルーティンの中にも様々な驚きと冒険がある。
公衆トイレを美しく保つということは、文化的な人間の尊厳を守るということだと感じました。
カセットテープの選曲が良い。
ちあきなおみの『朝日のあたる家』が好きなので、もし出演されていたら…と妄想が止まりませんでした。
無名塾の芝居が苦手なので…すみません
そこだけ。
劇場で拍手が
姪っ子の登場から
過去がわかってきますね
きっとこの職に着くまでに
いろんな事があって
そして今があって…
日常の有り難さや
ささやかな事も
きっと喜びや励み、希望に
繋がっているんだろう
人に優しくなれそうな
そんな映画と思う
帰り道
思い出して
泣けてきます
初めて終映後の拍手をみました
今年最後の映画鑑賞でした〜♪
何気ない日常も特別なんだと思わせてくれた
決まったルーティンのような日々の中に、他人との交流によって少し変化が加わる。
そんな毎日が主人公にとってはかけがえもなく大切なものなんだろうなぁ。
こんな物の見方ができる境地に達するのはいつなんだろう…
淡々とした日常に浸るための映画でした。
毎日をほぼ規律正しく生きている主人公の音楽や書物のこだわりと日常の中でわずかに心揺らぐ出来事の記録といった映画でした。私個人は劇中に使われた名曲の数々がとても素晴らしくグッと来ました。
さらに私の鑑賞環境がちょっと前時代的な小屋でまさにカセットの音源のような響きがまた輪をかけて没頭させました。
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