「Amazing lively presence」青春 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
Amazing lively presence
東京フィルメックスにて上映。
子ども服の工場がひしめき30万人とも言われる縫製労働者が働き暮らす織里の人々の日々。たくさんの人々、さまざまなな工場の仕事場と生活の場を、鮮やかに撮影されている。エンドロールで、監督が、映画に出てくるさまざまな人々の、素晴らしい生活ぶりに感謝というようなことを謝辞の中で述べていて、その、Amazing lively presence という英語表現であり、温かく人間への愛着を感じる、彼らが生きてる様への感嘆賛辞そして記録への情熱を感じた。
働く人々の多くは長江流域の各省。最後のシーンでは賃金をもらい故郷の村に帰省するさん人の労働者。何もないような田舎の村にはコンクリートの立派な家がまばらに立ち並ぶ。
思いの外、若い労働者たち地が自由奔放に働き暮らしている。タバコを吸いながら音楽を聴きながら、若い男女はからかいじゃれ合い恋愛しながら、年嵩の女は猥談めいた話で笑いながら、同じ服を手早く縫製し、工場によっては賃金交渉をするところもある。組織的なものではなく全く政治的な感じもない交渉。仕事場も騒然として賑やかだったが生活の場はさらに賑やかに自由奔放で、みなファストファッションでおしゃれをして、スマホでチャット、出会い、ゲームさまざま。親子で来ている者もいれば夫婦できている者もいるし、そこで恋愛して妊娠して結婚してそのまま又ここで働くのかというようなカップルも。夜街に出れば熱々の屋台飯も食べられる。少しでも多くの工賃がほしく、少しでも安い賃金に抑えたい経営者との駆け引き。経営者もパワハラ然とした年配の者もいれば若い経営者買がなだめすかしやっているところもある。全てがあけすけであり、すべての物量の圧倒は中国である。
撮影は、2014から2019年、2018年から編集を開始時2020年のコロナ期間中断を挟んで編集となったがこれは第一部青春の春ということでまだ二部がこれから、全部できると9時間くらいになるそうで楽しみだ。
以下はワンビン監督のお話から。
ドキュメンタリーの叙述のスタイルとしては理性的な叙述が多いと思うが、ワンビン監督はより感性を強く理性の制御を受けない物語、叙述を撮りたいと思った。ドキュメンタリーはもっと自由にしたい自然に生き生きとしたものにしたいという願い、考えだそうだ。
フィクショナルな映画は初めから物語が作られておりダイレクトなものではない。編集の力により真実ではなかった映像を真実化する必要がある。ドキュメンタリーは元々撮っているものが真実であるから撮影後にいかに物語化していくかということになる、映画制作の目的も位置付けも異なる。黒衣人は初めはドキュメンタリーとして撮る予定であっだが、青春は初めからドキュメンタリー的核心記録性を前面に押し出していったということ。
苦い銭も同じ織里の縫製工場だが時代が異なり、当時の働き手は青春より年上、中年層が多くその暮らしには楽しみがほとんどなくストレスが強い状態に置かれていたそうだ。苦い涙はまだ見ていない。
青春本作との違いは中国そのものの大きな変化や若い世代の生活や感覚の違いによるものだろうと思う。