青春のレビュー・感想・評価
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瑞々しい青春映画
中国の低賃金の縫製工場で働く若者たちの日常を切り取った青春ドキュメンタリー映画だ。全然対象は違うし、その眼差しのあり方も異なるのだけど、『14歳の栞』のような瑞々しさに溢れた傑作だった。生活は過酷そうだ。故郷に仕送りもしないといけない。しかし、だれも腐っている様子はない。仲間とたあいのないバカ話で盛り上げれば楽しい。本気の喧嘩もあるし、工場の経営者の金払いは良くない。それでもみんな、生き抜く力がみなぎっている。社会の不平等がこの映像には確実に刻まれているが、それを隠さないし、へこたれるわけでもない若者の姿に勇気づけられる。カメラの目の前にいる人の輝きも苦しみも逃さない。ワン・ビンのカメラはとても誠実で的確だ。
ワン・ビンにはもう一つ中国の縫製工場を撮った『苦い銭』という作品もあるのだが、こっちはまだ見れていないので見なくてはいけないなと思った。
ゴミだらけの男女共同作業
上海を中心にした長江デルタ地域の織里という町で、衣料品の縫製工場で働く10代後半から20代の若者たちに密着し、彼らの労働と日常を記録したドキュメンタリー。
215分=3時間35分、トイレを我慢できるか自信なかったが、なんとか耐えれた。
2014年から19年にかけて撮影されたそうで、中国の縫製作業の様子や出稼ぎの意外に楽しそうな様子が生々しく観れたのは良かった。
至る所ゴミだらけ、もう少しなんとかならないの?
男女共同作業にタバコ吸いながら下ネタ話しながらの作業風景。作業ミスが起こらないのかと思ってたら、やっぱり起きました。1センチもズレて縫っちゃ服にならんよね。
それと、作業場と同じ建物の上層階で男女共同生活、こんなじゃ妊娠もするわなぁ。でも楽しそうだけど。
子供出来ても結婚はしない?金持ちとしか結婚しないかぁ。そこは現実主義なんだなぁ、なんて思った。
半年に一度の給料?意外に多いなぁ、と思った。しかし文句ばかり、の賃上げ交渉、パワハラ、暴言、はなかなかの迫力だった。
長かったけど、ありのまま、ゴミだらけのままのドキュメンタリーで飽きなかった。
どんな魔法でこんな映像が撮れるのか
中国の現代史と現代社会をドキュメンタリーとして記録し続け、当局からの圧力により今ではフランスで作品作りを続けるワン・ビンの新作が登場です。僕は、ワン・ビンならばとにかく観ます。今回は、上海近郊の縫製工場で一日中ひたすらミシンと向かい合う若い労働者の日常をひたすら追い続けます。ドラマチックな仕掛けがある訳ではないのに飽きる事なく、眠くなる事もなく見入ってしまいました。
ワン・ビン作でいつも不思議に思うのは、「市井の人々の生の感情をどうしてこんなにも自然にカメラに収める事が出来るのだろう」と言う事です。カメラの前で若者たちは本気で殴り合いの喧嘩をし、仕事中に男女がラブラブの会話を交わし、妊娠した娘の堕胎を望む両親が工場に乗り込んで来ます。人々がカメラを意識しなくなるまでワン・ビンは一日中ひたすらカメラを回し続けるそうですが、「それにしても・・」と首を傾げます。彼はどんな魔法を使っているのでしょう。
そして、彼らには「どうしてお金を稼ぐか」と言う事が大きな問題です。工場長との給料や単価を巡る喧嘩腰とも映る言葉のやり取りは生々しい光景です。これって「全く純粋な資本主義の断面」です。この何処に共産党一党独裁国家のイデオロギーがあるのでしょうか。
と言いつつも、本作の中から浮かびあがるのはタイトル通りの「青春」なのです。遣りたい事があり、貯金の目標があり、異性の気を惹きたくて、向こう見ずな暴走があります。若い人の思いをイデオロギーが左右する事は出来ないのでしょう。
全編3時間半と、ワン・ビンらしい長編ですが、多くの人に観て欲しい一作です。
215分
長い長い
でも中国の実態と
生活感あふれる様が
手に取るように
理解できた
そして稼ぐ事に貪欲だ
「コレだけこなしたから
コレだけ給料が欲しい」
など
事業主とのやり取りが
結構多く撮られてる
日本の若者に見てほしい
織里の縫製工場で働く若者たちの青春
タイプが違うとはいえフレデリック・ワイズマンと並び称されるべきドキュメンタリー映画の真の巨匠、王兵(ワン・ビン)。
今作もまた破格の傑作。
上海を中心に長江の下流一帯に広がる「長江デルタ地域」。ここだけで日本のGDPをはるかに上回るという。
上海の西に位置する織里という町の小さな縫製工場で働く若者たちの労働と日常をナチュラルに記録した。
朝8時から夜11時までの過酷な労働と低い賃金。「搾取」という言葉が相応しいか。多くは地方の農村からの出稼ぎだったが稼ぐこともままならず。
ここに色々な意味での「貧しさ」が在った。
しかし溢れ出たのは悲壮感ではなくバイタリティー。
異世界だった。
自分の中で消化できない激しい違和感を覚えた。
そう、まったく知らなかった世界を提示され愕然とした。欧米や日本の企業が「安い労働力」として使う中国があった。
そして何より瑞々しい青春が在った。
中国では公開出来ないらしい。
気になってたが、あまりの長尺にびびっていた。
しかし瀧内公美さんのお勧めにはいってたんで意を決して見ることにした。
どれだけ時間をかけたのだろう、全くカメラの存在を気にしない位若者達にとけこんでいて見やすい。恋愛、喧嘩、賃上げ闘争、子供服専門に作る地域工場の若者達の生活感が凄い。
生活環境も雑魚寝に近い状況。決して悲惨を糾弾する作りにはなっていない、そんな状況でも普通に生きる若者のエネルギー、人間讃歌に近いかも。
それでもリアルすぎてプライド高い本国では公開出来ないようだ。
むき出しの中国
縫製工場に住み込みで働く中国の若者たちを撮ったドキュメンタリーです。老朽化した建物で共同生活をし、すごいスピードで生地を縫いまくり、大声で笑い、喧嘩し、いちゃいちゃする20歳前後の若者たち。劣悪な環境で驚くほど安い賃金で働く彼らの無邪気さ、パワフルさに終始圧倒されました。終映後のトークイベントで話されていた方によると、この映画に撮られているような雰囲気はもう今の中国からは急速に消えていっているということです。
したたかな中国経済
優れたドキュメントを送り出すワン・ビン
舞台は、中国上海長江デルタに位置する織里という街の小さな衣料品工場。
そこで働く、農村部出身の10代〜20代の若者達の日常をカメラは追う。
物凄い勢いでミシンをかける若者たち。
決して大手の工場ではないけど、それなりに収入がある。
彼らは、高卒だろうか中卒だろうか、よくわからない。
ただ、インテリ層でないのは、まちがいない。
まず、その生活の場が雑然としている。
仕事場は、まあそれなりなんだけど。
彼らの住居、寮が汚い。
一つの部屋にベッドが五・六台置かれているだけ。
そこで雑居生活。
プライバシーもへったくりもない。
だけど彼らは、そんなことは気にしないみたい。
なにせ最近まで公衆トイレにドアがなかった国。
プライバシーという概念そのものがないと言ったら、失礼だろうが。
子供の頃から、共産主義国家の集団生活になれているからだろうか。
生活の中心は「スマホ」
これは、万国共通だろう。
とにかく暇さえあればという感じ。
パソコンではない、まあそんなスペースもない、一人ベット一台の私生活。
だけど着るものは、それなりに見栄えのする若者ファッション。
そのあたりは、衣料品工場ということもあるのかな。
しかし、食生活はお粗末。
まあ、若者だけの共同生活だからこうなるだろなと思うのだけど。
ほとんど、野菜なしの炭水化物生活。
年取ったらガタくるぞ、なんて忠告したくなる。
部屋は汚し放題、あちこちにゴミが散らかり。
たまに掃除でまとまったゴミは、階段から大きなコンテナ袋で、階下に投げ捨てる。
階下に人がいたら大怪我するのに、「夜中だから歩いている人などいない」と平気。
ルール、きまり、あってないような世界。
日本の昭和40〜50年代をさらにパワーアップした感覚だろうか。
とにかく、彼らは、稼ぐことに夢中だ。
こんな彼らの働きが、私達のファストファッションを支えているのだろうか。
舞台は、2014年〜2019年だから、現在とはまた様子が違うのかもしれない。
しかし、最近の「SHEIN」や「TEMU」など中国ブランドの躍進を見ると、まだまだ中国は、元気なのかもしれない。
バブルは終わる
景気はいつかは後退する。
いや、もうそうなのかも、だけど中国のその実態は、決して外にはもれてこない。
映画の時点の若者たちは、出身地の農村部に豪邸を建てていた。
あの年代だもの今が良けれは、後のことなど考えない。
日本だって、高度成長期には、地方出身の中卒の集団就職があり、彼らは「金の卵」ともてはやされた。
その姿と重ね合わせてしまう。
ただ、二十代半ばで豪邸は無理な話だけど。
それだけ中国経済の爆発力を見る思いがする。
ただ日本の場合、わりと長いあいだ好景気が続いたことで、社会整備ができたこと。
つまり社会福祉の分野で、医療保険や年金などなど。
中国は、進化も早かったけど、後退も。
おそらく社会のインフラや福祉の分野でどうなのだろうか。
都市部と農村部の格差。
医療体制、年金や介護問題。
一人っ子政策の失敗もあるはずだ。
ただ、映画『青春』の主人公たちからは、そんな影は微塵も感じられない。
そうだろう。
ただ、その後どうなったのか興味深い。
中国社会の動向に。
そして、ワン・ビン監督の次回作に大きな興味が湧く。
とにかく長い、でも面白かった!
どうやったらこの映画のように、工場の社長や従業員の自然でイキイキとした会話を記録することが出来るのだろうか??
普段から登場人物達がプライバシーの殆どない環境下にあるにせよ、これほどまでにカメラマンが空気のような存在感で被写体を映し出しているのが不思議で仕方がなかった。
映画を観ていて、コチラがドキリとするような本音トークを登場人物がカメラの前でこぼす度に(ホントにこれ、ドキュメンタリー??)って何度も思ってしまった。
しかし中国人の男性達の顔つきは現代的なイケメンに変わってたなぁ。髪型も服装もみんなオシャレ。
カメラのこちら側がしゃべらずに、よくもこんなに撮ったものだと感心す...
カメラのこちら側がしゃべらずに、よくもこんなに撮ったものだと感心するほかない。218分観終わって、でも続きが観たくなる。生きる人の記録、社会の記録として貴重な作品。
Amazing lively presence
東京フィルメックスにて上映。
子ども服の工場がひしめき30万人とも言われる縫製労働者が働き暮らす織里の人々の日々。たくさんの人々、さまざまなな工場の仕事場と生活の場を、鮮やかに撮影されている。エンドロールで、監督が、映画に出てくるさまざまな人々の、素晴らしい生活ぶりに感謝というようなことを謝辞の中で述べていて、その、Amazing lively presence という英語表現であり、温かく人間への愛着を感じる、彼らが生きてる様への感嘆賛辞そして記録への情熱を感じた。
働く人々の多くは長江流域の各省。最後のシーンでは賃金をもらい故郷の村に帰省するさん人の労働者。何もないような田舎の村にはコンクリートの立派な家がまばらに立ち並ぶ。
思いの外、若い労働者たち地が自由奔放に働き暮らしている。タバコを吸いながら音楽を聴きながら、若い男女はからかいじゃれ合い恋愛しながら、年嵩の女は猥談めいた話で笑いながら、同じ服を手早く縫製し、工場によっては賃金交渉をするところもある。組織的なものではなく全く政治的な感じもない交渉。仕事場も騒然として賑やかだったが生活の場はさらに賑やかに自由奔放で、みなファストファッションでおしゃれをして、スマホでチャット、出会い、ゲームさまざま。親子で来ている者もいれば夫婦できている者もいるし、そこで恋愛して妊娠して結婚してそのまま又ここで働くのかというようなカップルも。夜街に出れば熱々の屋台飯も食べられる。少しでも多くの工賃がほしく、少しでも安い賃金に抑えたい経営者との駆け引き。経営者もパワハラ然とした年配の者もいれば若い経営者買がなだめすかしやっているところもある。全てがあけすけであり、すべての物量の圧倒は中国である。
撮影は、2014から2019年、2018年から編集を開始時2020年のコロナ期間中断を挟んで編集となったがこれは第一部青春の春ということでまだ二部がこれから、全部できると9時間くらいになるそうで楽しみだ。
以下はワンビン監督のお話から。
ドキュメンタリーの叙述のスタイルとしては理性的な叙述が多いと思うが、ワンビン監督はより感性を強く理性の制御を受けない物語、叙述を撮りたいと思った。ドキュメンタリーはもっと自由にしたい自然に生き生きとしたものにしたいという願い、考えだそうだ。
フィクショナルな映画は初めから物語が作られておりダイレクトなものではない。編集の力により真実ではなかった映像を真実化する必要がある。ドキュメンタリーは元々撮っているものが真実であるから撮影後にいかに物語化していくかということになる、映画制作の目的も位置付けも異なる。黒衣人は初めはドキュメンタリーとして撮る予定であっだが、青春は初めからドキュメンタリー的核心記録性を前面に押し出していったということ。
苦い銭も同じ織里の縫製工場だが時代が異なり、当時の働き手は青春より年上、中年層が多くその暮らしには楽しみがほとんどなくストレスが強い状態に置かれていたそうだ。苦い涙はまだ見ていない。
青春本作との違いは中国そのものの大きな変化や若い世代の生活や感覚の違いによるものだろうと思う。
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