落下の解剖学のレビュー・感想・評価
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リアルは悲しい
今年は唸らせられる映画多いな、という中、一番考えさせる、そして一番時間を忘れて集中した作品だった。フィクションや妄想入っていた哀れなるものたちやボー、に比べて本当にリアルな家族像だったからか。イライラする展開はあれど、見入ってしまった。
夫婦喧嘩のくだり、私にはただひたすら夫の言ってることがめちゃくちゃで、病んでいる証明にしかならないと思ったんだけど、これは見る立場によってちがうんだろうか。
祖国を捨てさせ自分の故郷の山奥に連れてきた妻に対して、言葉も英語で時間も家事も夜の営みも全部君に合わせている、自分に自由がない、ってなんだそりゃ。酷い言いがかりも甚だしい。まあそれも煽りで小説のネタ?と思えば理解はできるけど。。でもこれが男女逆転してたら、ありがちなただの主婦のヒステリーって言われちゃうやつよね。
見ながら、本当に何かやった可能性もなくはないなと思いつつも、どうしても妻側に肩入れしてしまうのは自分が女だからなのか。検事や夫の主治医のセリフとか、本当に腹立たしいけど、まあ検事は暴くのが仕事だからあんなものか。実際に裁判傍聴しても嫌な気分になるのかな。
息子の覚悟が痛々しくて泣ける。
ダニエルくんが練習してるピアノ曲も、不安と焦りと哀しさを冗長させてとても印象に残った。
アルベニスのスペイン組曲、伝説(Asturias)
ショパンのプレリュード 四番e minor
どちらも昔触りだけ練習したことがある曲だけど、最早悲しい気分でしか聴けない😭
作家夫婦の物語り
父も母も大好きなダニエル
心安らぐ大自然の中での暮らしなのにざわつく。
犬の演技は素晴らしい。ここまでできるのか。
父は自殺なのか、事故なのか、母が殺したのか。
あまりにも辛い選択をしなければなかったダニエル。
母が殺したと思っているからこそあの選択だったのだろう。
これからのダニエルの人生について考えると辛すぎる。
落下→夫婦→家族with犬の解剖学へ
アカデミー賞脚本賞受賞も納得の出来!
実に巧妙に描かれている事件を掘り下げていく(解剖していく)と
夫婦→家族with犬の複雑に絡んだ問題に行きつき
何が事実で真実なのか!?がよくわからなくなるんですね。
どうとでも取れてしまう事件の真相。
パンフレット記載の監督談話によると、
「回想シーンは使わないと決めていた」とのこと。
後半で息子ダニエルが回想しているのは一体何なのか!?
そう、ダニエルの心象風景であり事実とは異なるということなのだと。
鑑賞後に、この事件の真相はあれこれ自分で考えている時間が豊潤に感じられ
これぞ映画の楽しみだと思いました。
それにしても主演のザンドラ・ヒュラーの演技が凄すぎる!
特に旦那との会話シーンは表情含め必見です。
それから、犬の演技もすごいです。もう驚きましたね。
上映時間が2時間半くらいですが、全く長いとは感じませんでした。
最後まで一気に鑑賞できてしまう、やはり脚本が秀逸ということなのだろうと
実感しました。
20世紀は
米国が世界の中心だった
その米国の背後には英国がいた。
その彼らが世界に提唱し普及システムは
ビジネスとコンプライアンスの徹底だったかと思う。
本作はその中でも特に
コンプライアンスが幅を効かせる法廷での裁判を軸に
描かれている。
しかも扱う判例は人の死
そこにはその死を取り巻く様々要素、人心が紛れ込む
一筋縄ではない
絡みに絡みまくった要素
それを不確かで時には創作の可能性もある要素で
断じて行こうとする
そこに真実はあるのか?
その時限りの陪審員やその時代の価値観が
正確に裁くなんてできようがない。
そう言いたげな内容だな。と僕は思った。
が、最後のオチは、これからの時代のシステムの変化を
示唆しているようで面白くもあり恐ろしくもあり◎
pimpな気分だわw
家族・夫婦の人間と愛の解剖学
言葉もカルチャーも生き方(自己主張強めな妻と夢はありつつも実現できない夫)も違う2人が結婚して、事故により弱視になった子供がいる夫婦。
自宅で妻が昼寝中に起きた夫の転落死をきっかけに、裁判で第三者に詳らかにされていく夫婦の人間性。
妻のバイセクシャルな性癖や不倫、夫の鬱病や自殺未遂など、子供の教育方針の違いや押し付け合いなど、解剖すればするほど、子供からしたらショッキングな事実が見えてくる。
解剖学って、答えを探す学問じゃなくて事実を明らかにする学問なんだよね。
だから、この作品も答えはないし、あったとしてもそれぞれの答え≠正解がある。
ただ、誰も見ていないものは、なにかの事実を軸として「決定」するしかないのだ。
とんでもなく示唆に富んだ作品だなー。生きる指標はちゃんとしてるかね?と問われる感じ。
夫の窓からの物理的な落下、かと思ったら、妻の小説家として失落なども含んでの落下、なのね。
最後、裁判を1日延期させて子供の報告を受けて、結局妻は無罪になるけど、どう考えてもあの爆音の中昼寝はできないでしょ?!いやいや、妻よ…!って思ったけど、パンフレットにヒントが書いてあった。
エンディングシーンの犬が寄り添ってきたこと、元ネタのタイトルから考察すると、あれ?やっぱりやったんじゃね??と。
第96回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞...
第96回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞の5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞したとあり、どうしても観たいと思っていましたが、フランス語の作品と聞いて、諦めましたw 今回、一時帰国の機内で日本語字幕で見て正解でした。
星はビミョーでしたし、話が膨らむ割にオチはアッサリしていて、拍子抜けした人も多かったでしょうが、究極の夫婦喧嘩という感じがして、結婚って難しいんだなぁと思いました。
夫婦ってあんなに思ってること全部言ったら終わるよね…とため息つきながらも、ハラハラしながら観てました。
私も今思うことをちゃんと言える英語力がないからこそ、誤解されないように丁寧に伝えようとしてますが、なかなか思ってること全部言えるわけじゃないから、コミュニケーションにストレスを感じる時もありますし、相手にしてもらえなかったことも、何度もあります。
あの奥さん、めちゃくちゃ頭良くてフランス語もドイツ語も話せて羨ましくなりましたが、あんなふうに我慢しながら、妥協しながらコミュニケーション取ってるなら、そりゃストレスも溜まるわなぁ…www
子供の前で言いたいこと言えないから、やっぱり愛の形が歪んでしまう切なさも感じました。
それにしても、あのワンちゃん、焦点合わない演技、薬を吐き出す演技、いかにも苦しそうな演技は素晴らしかったですね。
この映画は推理ドラマではなく、裁判映画である。
パルムドールを受賞したので、鑑賞しました。
芸能人・政治家・ビジネスマン・創作者で成功する為には、女性であっても
「男性的な 考え方(脳) と 生き方 をしないと、成功しない」とつくずく思い知らされました。
最後の少年の記憶は、あくまで記憶であって、物証性は無く、実裁判では参考程度のもでしかなく、証拠能力はない。
しかし その発言が、すべてを解決させる唯一の決定打になった事は明らかである。
僕らが画面で観た光景は、
少年の頭の中ではなく、裁判官が想像した光景なので、
少年が1年間迷った末に"選んだ結末"であり、
裁判官の温情の後ろ盾に成った最大であり、唯一のモノだったと思う。
推理映画なら、大どんでん返し結末 なのだが、裁判映画故、"温情結果"で結んだ。
検事は、裁判の被告である女性作家を遮及しなければならない立場でありながら、
最初から グウタラな自国生まれの男性作家を軽視しているとしかおもえない挙動が多々あり、
自4につながりそうに誘導しがちな言動は。。。裁判映画として、作為的な行動なのか?
1人の脚本家が相対する心情を1つの脚本の中で書き込んだ矛盾から生まれたモノなのか?
脚本家の技量の為なのか?
これが、創作ではなく、事実を元にした映画なら、議事録に書かれている冪 発言は、
事実の言葉を"そのまま"引用したのでしょう。
そこらへんが、フィクション映画故の限界。
僕は裁判結果とは真逆な真相があったと、断定しています。
この映画を観たら。。。何か 似たような映画は思い出せないが、、、
「12人の優しい日本人」が頭に浮かんだ。
地下鉄で泣くより、車で泣く方が良い
こないだ鑑賞してきました🎬
ここ数年で客入りが一番で、8割方埋まってましたね🙂
私は前から2番目しか取れなかったですが😅
雪山の山荘で、そこに住む家族の1人であるサミュエルが謎の転落死を遂げます。
ミロ・マシャド・グラネール演じる視覚障害の息子ダニエルが第1発見者となり、次第に被害者の妻であり作家でもあるサンドラ・ヒュラー演じるサンドラに殺人の疑惑が…。
アカデミー脚本賞を受賞しただけあって、ストーリーはよく練られています。
ダニエルが終盤にお守役のマルジュに感情をあらわにするシーンや、死の前日に交わされたサンドラとサミュエルの激しい口論、そして無罪となったサンドラが帰ってきた時のダニエルとのやり取り…どれも良い演技でした。
犬のスヌープもかなりの好演🐶
結局事故の真相は語られませんが、状況証拠を考えると…。
あえて真実を伏せる、というのも時にはありですね。
色んな考察が生まれるでしょう。
考えさせられる映画でした。
名犬スヌープ
結局、夫の死の理由はわからない。彼は自殺だった、事故だった、殺された、どれでもありえる。サンドラは罪に問われなかったが、夫を追い詰めたのは確かである。でも、彼女も自分を犠牲にして、異国での不便な暮らしに耐えていた。どちらが一方的に悪いわけではない。死ぬことで夫婦関係は終息したが、もし夫が生きていたとしても、この夫婦は近いうちに破綻していたに違いない。
裁判は精神的にも肉体的にもキツい。こどもに知らせたくないこと、他人に隠しておきたいことも、明るみに出されてしまう。息子のダニエルは、初めは証言がグラつくが、やはり母を庇っていたのかな。ということは、父の死の原因を知っていた可能性がある。母と息子の間には、2人にしか通じない何かがあった。そして、ダニエルは裁判を終わらせる重要な証言をする。
自分が裁く立場だったら、どう結論つけるだろうか。サンドラがいくら耳栓したとしても、あの大音量で寝るのも信じがたい。ボリューム下げろって言いに行くと思うし、そこでまたケンカになるかも。つかみ合ってアザができた? サンドラが殴ろうとして、よけた夫がバランス崩して頭を打った? でも、やはり殺したとは思えないかなー。そこまで憎んでいないだろうし、彼を殺してサンドラに利益があるわけではないし、事故が妥当な気がする。
俳優みんな演技が上手かったが、一番は犬だね。スヌープすごい! 前足そろえて伏せした姿、超かわいかった! アカデミー受賞式にも呼ばれてたって。粋な計らいですこと。
追記(2024.3.27)
夫と弁護士の名前を勘違いしてた。
最後まで夫の名前がなかったことに気が付いた。
なんか、かわいそうだな、夫。
ヒューマンドラマ
ミステリーかな?と思ったら、ヒューマンドラマだった。
確かな証拠はなく、憶測が多い。
夫については誰かを介して知る。録音くらい、本人を直接感じるのは。
人の印象は、人によって様々なので、なんとも釈然としない。
妻も妻で、自分のことはなかなか語らないのでもやもやする。
夫婦喧嘩については、どうしても夫よりになったなぁ…。
「こちらはこれだけやって(あげて)るのに」と相手を比べた時点で、夫婦仲が良かったとは思えない。
その後の乱暴については、自分からグラスを叩き割って暴れておきながら、「乱暴しないで!」はないだろう…と思った。あと夫の呻き声と、柔らかいものに暴行するような音がしたけど、あれは倒れた夫の腹辺りを妻が蹴ってるのか…?と思ってた。
妻の発言も二転三転するから、心象が悪いのは当然。
ダニエルの発言も、あやふやなので、打算で発言した…?と思ってしまった。あれもダニエル視点の父の発言だしなぁ。
凶器はありません、殺意も憶測です。と言われたらそら推定無罪よなぁ。疑わしきは罰せず、ですもんね。
結局ハッキリしないので、モヤモヤは残った。
真相はご想像にお任せします
観劇後モヤっとした気持ちで帰りたく無い人にはオススメ出来ないし、家庭内の隠されたゴタゴタを浮き彫りにされていくのがキモという作品であるならばテーマとしてはありきたりな気がする。ただ、考察し甲斐があるシーンが多く、あれって何だったの?と話し合って楽しむ事ができる余韻の長い作品と言える。考察したところで結論は出ないけど、そこがこの作品のよさだと思う。
そして、夫婦で観に行くにはキツい作品
間違っても何かの記念日に行かないように!
以下はネタバレ程ではないですが、内容に触れますので注意
話しの締めくくりに裁判の結果は出るのだが、それで真相が分かったのかというとそうでは無く、状況証拠しか出してこない無能な検察のせいで、最終的にはある人物の証言が有罪無罪を大きく左右するし、その証言でさえ事実か証明する方法は無いことから今作のテーマは犯人探しでは無いんだろうなとは思った。
真犯人は二の次ということなら、この作品がテーマとする所が何だったのかといえば、いまいち掴めなかったのが正直なところ。明らかに息子ダニエルは母親に心を開いていないし、最後の家でのセリフはかなり意味深だったこと、最後の最後にワンちゃんがとった行動に何かあることは分かったが、結局なにが言いたかった作品なんだろうという疑問が感想の大部分を覆っているのが観た直後の今の気持ちである。
前述したように、裁判の過程で表面上は見えていなかった夫婦の不仲が暴かれるというところが面白いと言うだけのことであれば、それはそれでふーんで終わりにも出来るが、パルムドール受賞作との事なので、他にもっと深い意味があるのに見落としている様な気がしてならない。
とにかく裁判が長いのでなかなか集中力を持続させるのが難しい作品だったが、一部痛々しかったですがワンちゃんの演技が凄く良くてかわいかったので長時間の観劇に耐えられたところがある。また、マスコミや傍聴席への嫌悪、ひいてはメタ的にストーリーを消費する我々観客への批判的姿勢を感じるシーンが度々差し込まれていたところも監督の主張が出ているのかなと感じた。
解説動画などみてまた星の数は変わるかも知れませんが、とびきり良かったわけでも酷評するほど悪い内容でもなかったので、直後の評価は⭐︎3です。
夫婦がライバル関係であることの難しさ
作家として成功している妻、作家になりたいがなれていない夫。そう考えると妻が夫を殺すのはないなあ。殺す理由がない。仮に衝動的に怒りがこみ上げたとしても、人が人を殺すことはそう簡単なことではない。あの激しいやり取りを見ても妻が夫を殺す?ないなあ。逆ならばあり得るけど。
小説の題材にと夫婦のやり取りをこっそり録音する夫。あの大喧嘩も予め夫が予想していたものかもしれない。だから妻に不満をぶちまける。妻の反応、反論、その後の妻との激しいバトルも創作のヒント、題材にもなると考えていた可能性もある。間違いなく夫は行き詰まっていた。いや、壊れていた。大音量の音楽、プライドもかなぐり捨てた妻への挑発。毎日の生活に追われ、余裕のない生き方を強いられる夫にとって妻は妬ましい存在だったに違いない。しかも不倫までしていたんだから赦せないだろうなあ。子供に障害を負わせてしまったことへの負い目、自分の地元に妻を住まわせている負い目だってある。妻は自分を訪ねてきた学生とのやり取りの最中に大音量の音楽で邪魔をされても不快な表情を一つも見せていないんだよなあ。
視覚障害のある少年は冷静に父と母を見(感じ取っていた)、そして父の死について判断したと思う。
見ることの出来ない真相
ある雪の積もる人里離れた山荘で、作家のサミュエルが死体となって発見される。
第一発見者は目の見えない彼の息子ダニエル。
これは事故なのか、自殺なのか、それとも殺人なのか。
やがて状況証拠から彼の妻で同じ作家でもあるサンドラが容疑者として起訴される。
ほとんどのシーンが裁判での供述なのだが、この映画は真相を突き止めるためのミステリー要素に重きを置いているわけではない。
サンドラは夫を殺していないと主張するが、それを証明するための物的証拠がない。
逆を言えば彼女が殺したという決定的証拠もないのだが。
法廷で彼女は徹底的に攻撃されるが、裁判の印象を良くするために彼女は言いたいことを抑制されてしまう。
真実はどこにあるのか、あくまでもこの映画では登場人物の主観しか語られないために最後まで曖昧なままだ。
中盤までは観ているこちら側もサンドラに感情移入させられるが、サミュエルが録音していた彼女との喧嘩の内容が明らかになってから見方が一変する。
自分の時間が奪われたと主張するサミュエル。
一方、サンドラは自分は何も強制していない、小説を書けないのは自分のせいだとやり返す。
お互いに自分の正義を譲らないために、話し合いは激しい口論へと発展し、やがて泥沼状態になってしまう。
正直、このやり取りを聴くとサンドラの無慈悲さを思い知らされる。
ただ、だからといって彼女がサミュエルを殺した証拠にはならない。
物語はダニエルが証言台に上がるところでクライマックスを迎える。
彼は目が見えないため、実際に何が起こったのかは分からない。
彼は過去にサミュエルが自殺未遂したことにも気づいていなかった。
彼は母親の無実を主張するが、それも彼の主観でしかない。
結局、大きなカタルシスを得ることもなく物語は幕を閉じる。
サンドラ自身、もっと裁判が終われば何か見返りがあると思っていたと語るように、何もなく映画は終わる。
最後に彼女はダニエルと共にすべてを見てきた犬のスヌープを抱き寄せる。
言葉を喋れないことから、スヌープもまたすべてを見ていたとしても真相を明らかにすることは出来ない。
重厚な作品ではあるものの、展開が一辺倒なので時間が長く感じられてしまった。
解剖学してない
無意味だった仮説s。
作家夫妻と視覚障害のある一人息子とワンコの家に起こる話。
雪の積もる山奥に住むその一家、犬の散歩から自宅に戻る息子ダニエル、そこで目にしたのは自宅前で血を流し倒れる父親だった…、自宅三階からの転落死と思われたが、転落死とは別の外傷が見つかり…。
スルーするつもりでしたが話題性と予告の「背筋が凍りつく、息もできない、最高傑作」という文字を目にし鑑賞。
結果から書いてしまうと私には合わない作品だった。長尺約150分使って何かうやむやな感じでスッキリしない、本作が100分位の作品なら納得出来るかもだけど。
死因にあたって数人の人間から色々な仮説が出るけど、その会話シーンも正直引き込まれず、旦那が録音してた音声とその時の映像シーンには、「おっ、ここからか!」何て思ったけど…。
この本作のテーマ、メッセージって予告にもあったけど「仲睦まじい夫婦でも…、調べれば色々ありますよ」的な?長尺使ってこのスッキリしないのは嫌だな!(笑)
でっ、無罪だった奥さんが実は犯人でOK?
あの録音の音からすると。
あと、ダニエル役は上白石萌歌!?
夫婦喧嘩はUSBメモリに記録しておくとよいという話
落下の解剖学
神戸市内にある映画館「シネ・リーブル神戸」にて鑑賞 2024年3月5日(火)
パンフレット入手
交通事故が原因で視覚に障害のある11歳 ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)がピアノ演奏するシーンが印象的です。
残念なことにパンフレット内に説明がないため、以下の2曲を解説します。
1エンリケ・グラナドス作曲 スペイン舞曲集Op.37-5 アンダルーサ
グラナドスはスペイン生まれの作曲家。アンダルーサは代表曲のひとつ。スペインのフラメンコダンスのような情熱的メロディー
ピアノ曲ですが、クラシックギターで演奏されることが多い。
2.エンニオ・モリコーネ作曲 映画「ニューシネマパラダイス」(1988年)で使用された曲
美しく、優しいメロディー ピアノ曲に編曲されたものをダニエルは演奏している。
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本編
ドイツ人のベストセラー作家サンドラ(サンドラ・ヒュラー)は自宅で学生からインタビューを受けていた。屋根裏部屋のリフォームをしていた夫のサミュエル(サミュエル・タイス)が大音量で音楽をかけ始める。サンドラは取材を中断し、また別の機会を、と学生を帰らせる。
サミュエルが生まれ育ったフランスの人里離れた雪山に佇む山荘。
サンドラは、教師の仕事をしながら作家を目指す夫サミュエル、11歳の息子ダニエル、愛犬スヌープの家族3人と1匹で暮らしている。
事件が発覚したのは、ダニエルがスヌープの散歩から戻ってきたとき。山荘近くの雪の上で頭から血を流し、横たわる父親に気づいていたのだ。ダニエルの叫び声を聞いたサンドラが駆けつけると、すでにサミュエルの息は止まっていた。
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検視の結果、死因は事故または第三者の殴打による頭部の外傷だと報告される。事故か自殺か他殺かー殺人ならば、状況から容疑者はサンドラしかいない。サンドラはかつて交流があった弁護士のヴァンサン(スワン・アルロー)に連絡を取り、山荘にやってきたヴァンサンにすべては自分が昼寝をしていた間の出来事だと説明する。
ヴァンサンは「サミュエルは窓から落下して物置の屋根に頭部をぶつけた」と申し立てることに決める。さらに窓枠の位置の高さから、事故ではなく「自殺」だと主張するしかないと説明する。サンドラは「息子の目の前で自殺するはずがない」と異を唱えるが、半年ほど前、夫が嘔吐した際、吐しゃ物に白い錠剤が混じっていたことを思い出す。
捜査が進み、検察はサンドラを起訴する決断を下す。起訴理由を聞いて驚き、サンドラに「なぜ僕に黙っていたのかと」詰め寄るヴァンサン。サミュエルの死の前日、夫婦が激しく口論し殴り合う音声が、サミュエルのUSBメモリに残されていたのだ。
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夫婦喧嘩の録音が再生される。サミュエルはサンドラを批判する。お前のせいで自分には執筆する時間がない。自分の小説の構想を奪われた。ダニエルが事故で失明しセックスレスになった時、お前は他の女性と不倫していた。話し合いにも応じてくれない。サンドラは激しく反論する。執筆時間は家事の合間にも作れる。小説のアイデアをもらうことも不倫もあなたの了承すみだった。書けないことを私のせいにしないで。激高しついに壁に投げつけ、サミュエルを殴打。リベラルな良識作家という外見をかなぐり捨てて、上から目線で夫を罵り、一切の妥協を受け入れようとしないサンドラの冷徹で強靭なエゴがサミュエルを圧倒する。
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だがそれは夫婦の謎に満ちた関係が暴露されるとっかかりのひとつにすぎないのである。
裁判が始まると証人や検事から次々と夫婦の秘密や嘘が暴露され、彼らを知る人物の数だけ真実が現れる。審理は混沌を極め、真相が全く見えない中、
一度は証言を終えた息子のダニエルが「もう一度証言したい」と申し出る。ダニエルは自殺ではと。
はたしてその結果 -サンドラは無罪となった。最後に抱き合うサンドラとダニエルがそこにいた。
監督:ジュスティーヌ・トリエ
世の中に片付くものなど
それは想像です。主観です。作中で繰り返される言葉。これがこの作品の要なのだと思います。
探偵(推理)小説とは、探偵役が事件を解決して終わるのではなく、バラバラに存在する「証拠」(物的証拠に限らずいろんな意味で)を繋ぎ合わせて一つのストーリーに仕立てて語り切った時に終わるという言葉があります。これには、すべての「解決」は偽りを含んでいるという含意があります。
この映画は事件を一つのストーリーに仕立てて「解決」することなどできないさまを描いてます。その意味でたしかに「羅生門」的とは思いますが、もう少し複雑です。
証言の一人称性(非客観性)だけでなく、テレビの報道(真実より面白い方がいい)、創作物と現実の境目(検察官が被害者の小説を事実を書いていると強弁して法廷で読みあげるという滑稽ともいえる暴挙)、などの複数の異なる層の問題が重ねられ、我々が「真実」だとうっかり思ってしまったり、思いたがったりしてしまうさまが取り出されて晒されていきます。
録音されていた夫婦の諍いも、警察は妻が夫を殺害した証拠として出してきますが、聞きようによってはむしろ夫がヤバい奴だと思う人もいるでしょう。
しかもここには、妻が仕事で夫が家事という、古い家父長主義的な夫婦が逆転した関係が見えてきて、また別のレイヤーも重なっています。
そもそも、フランスにおいて解剖学は、いわゆる文学の自然主義の方法論でもありました。(日本の自然主義はそれを受け継がなかった)
物語でありながら、現実の姿が浮かび上がることを望む。その時、きれいに片付いた結末などあり得なくなる。
漱石も「世の中に片付くなんてものは殆どありゃしない。」と書いてますが、それを思い出しました。
しかしラストの犬の様子は……ここからもまた片付かない想像が始まります。
いいですね、フランス映画
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