Four Daughters フォー・ドーターズのレビュー・感想・評価
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理解の範疇を超えた異文化、家族の有り様に落ち着き所を見出せず
配信で観て惹き込まれた、シリア難民を主人公とする「皮膚を売った男」を監督したKaouther Ben Haniaの作品。
国を捨てて過激派組織IS(イスラム国)に加わったチュニジア人の姉妹、その姉妹との関わり、残された二人の姉妹との関係に葛藤する母と妹たちを描いたドキュメンタリー映画。
実在する母と妹2人が自然体で臨み、母役は本人と女優のダブルキャスト。国を捨てた姉妹を女優が演じるという形で再現した、異色のドキュメンタリー。シングルマザーである母の人生、そして家族の複雑な歴史が描かれる。
チュニジア、リビアといった国における家族関係、男尊女卑など、また黒装束で顔を隠すニカブを着用する女性の心持ち、イスラム国の存在以前に、未知の異文化における家族の有り様が、自身の理解の範囲を大きく超える。
イスラム社会の一側面を、実在する家族を通して見るという初めての体験。淡々と家族の歴史が語られる前半は、アラブ系の女性の美しさと強さを感じつつも、台詞の洪水に思考がついて行けず、眠気に襲われる。
消えた2人の姉妹の今に通じる後半部分では、実際のニュース、幼い頃の妹たちが出てきたり。リアルな映像とともに、目まぐるしく展開するものの、どうしても、自身の異文化に対する理解レベルを越え過ぎている。
自分自身にとって、女系家族が身近でない割には、母娘、姉妹の深い家族愛を感じることが出来たが、その他に落ち着きどころを見つけられないまま、アラビア語とフランス語による読めないエンドロールをぼんやりと眺める、そんな映画だった。
幸せの理想はみんな違う
チュニジア版「どうすればよかったか?」
一言でいうと姉2人がイスラム国に洗脳されて取り込まれるチュニジア版「どうすればよかったか?」
ドキュメンタリーなのだがイスラム国の洗脳手法についてはほぼ触れられず、ひたすら機能不全家族がいかに脆弱かを描いている。おそらく、相手がイスラム国でもカルト宗教でも同じなのでは。
モラハラATMな父親と虐待養父と養父を庇うシングルマザーの母親…と役満すぎる機能不全家族。これでぐれないほうが謎だよ。なのに反抗期の娘をホースで鞭打つなど、表現を間違った愛情は逆効果、ということをこれでもかと見せつける母親。
ヒジャブを着ない母親をイスラム法を盾に地獄に落ちると脅す娘。母娘の力関係の逆転。ゴス服着て髪染めてた頃のが遥かにマシだったと思わせる娘2人の変わり様。
シングルマザーのお母さん、初夜で乱暴な花婿を殴るほど強気なのはいいけど子育て下手すぎるし男を見る目がなさすぎる…。そして年下の彼氏に頭ポンコツになって彼氏が娘を性虐待してるのに彼氏を庇うという、欧米でも日本でも山ほど見たクソなケース、チュニジアも同じなのかと頭抱える…。娘に性的虐待してた彼氏との出会いを楽しそうに思い出語ってんじゃねーよと。そこは娘に土下座するところだろ。
母親に飽きたら娘を性虐待してた母親の彼氏のことを語りながら娘2人が復讐心と憎悪をぶつけるシーン、娘2人は涙こそ流しながらも淡々と撮影してるのに彼氏役の男優の方が先に根を上げて撮影中断したので男のメンタル弱すぎだろ…と思ったよね…あと彼氏は母親に秋田から手を出したんじゃ亡くて、最初から目的は娘だったように思う。
「ひどいことをされたがそれでも父のように慕っていた相手を憎めない」と語る娘が気の毒で仕方ない。
下の娘2人が「施設に保護されてなかったら娘4人ともイスラム国に行ってた」と冗談めかして言ってるのを母親はもっと重く受け止めろよと。あとどっかにいるはずの養育費すら払ってないクソな父親何してるんだろ。イスラム国怖いというより機能不全家族怖いってドキュメンタリーだったな。「どうすればよかったか?」並に胸糞。
「母親にされたことを娘にしてしまった」「選べるなら自分の親を選ばない」という母親のセリフが全てだと思った。どの国にもダメな親というのはいるものだ。そして虐待の連鎖をなんとかして止めることを義務づけられた下の娘二人が何とも気の毒だ。
一番可哀想なのは父親がテロリストで既に殺されてて物心ついた時から母親もずっと刑務所っていうまだ幼い娘である…娘達が言うように、少なくともこの娘が将来母親を憎むのは止めようがない…
親が見るには辛い映画だろうが、「どうすればよかったか」と同じく全国の親と、親になる予定の人、親になりたい人に見て欲しい映画である。
俳優と本人のダブルキャストという演出の妙
チュニジアでイスラム国に身を投じた長女・ラフマと次女・ゴフランを持つ母親・オルファと三女・エア、四女・テイシールの”ドキュメンタリー”でした。というか、実際に母親や三女、四女らにインタビューするシーンのほか、過去の出来事を再現する再現ビデオ、さらにはその再現ビデオを撮影するシーンを撮影しているメイキング物でもあり、”Making of Four Daughters”というべきものでした。
「イスラム国に身を投じた長女と次女」というサワリを聞くと、イスラム教という狂信的な宗教のために家族が壊されたかのような印象を受けましたが、全編を観ると必ずしも宗教が主役になっている訳でななく、彼女たちの祖国チュニジアの大混乱こそが、彼女たち家族の分断を生んだ原因であったという結論に達しました。
2010年から2011年までの間で勃発したチュニジアのジャスミン革命では、23年間続いたベン・アリー政権が倒れ、その後ヨルダン、エジプト、バーレーン、リビアなどの周辺国に革命の火の手が広がり、”アラブの春”と称される動きに繋がって行きました。このベン・アリー政権は、イスラム組織や共産党を弾圧する一方、新自由主義的な政策を実施して一定の経済成長を達成したいわゆる開発独裁の典型みたいな政権でした。そのため、ベン・アリー政権が倒れたことで、従来弾圧されていたイスラム組織が力を得て、その波に長女や次女が飲み込まれていったというところなのだというのが私の見立てです。
また、腐敗した政治や、思想、信条、信教の自由を認めない体制が長年続いたことで、失業率が高く、母親が海外に出稼ぎに行かなければ一家を養えないと言ったこと、また男尊女卑の風潮が酷く、特に若い女性に鬱屈した不満が溜まりやすかったことなども、結果的に長女と次女がエクストリームな過激宗教活動に身を投じてしまうことになる要因だったように思われました。
さて作品の背景は以上の通りでしたが、本作を映画として観ると、非常に面白い趣向がありました。再現シーンにおける母親のオルファの役を、役者のヘンド・サブリが演じていたとともに、オルファ本人も演じていたことです。イスラム国に身を投じ、現在リビアで投獄されているらしい長女と次女は役者が演じており、また三女や四女は本人が演じていることを考えると、母親は本人が演じるのが普通なのですが、敢えて役者を起用しているところが面白いところ。なんでそんなことをするのかと思えば、実は再現シーンの前後で交わされる役者と本人たちとの会話を収めるのが目的だったのだろうと推測され、そういう演出が中々興味深いものでした。
そして再現シーンを演じる彼女たちが、時に長女たちがいた頃を思い出して感情が溢れて演技が中断するところなど、彼女たちの感情が伝わってくる印象的な場面でした。長女たちは懲役20年以上の罪に問われているようで、家族が再会できるのかは非常に微妙なところですが、彼女たちの家族が救われますように、心から祈りたいと思います。
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。
セリフが多すぎて休む暇がない映画だった 今日見たもうひとつは【Fl...
セリフが多すぎて休む暇がない映画だった
今日見たもうひとつは【Flow】で、そっちは全く台詞なし
それはさておき
インパクトのある作品だった
でも、最大のインパクトは母親のキャラで、
それよりもっとイスラム国のことを扱うと思ってた
そこの辺は想像に任せる感じの意図なんだとしたら、
まんまとはめられた
家族関係をメインにしたちょっと前衛的な舞台劇、
みたいな感じだった
その認識だけで良いならもっと点数つけても良いけど、
多分そこじゃないので、このくらいで
思ってたのとちょっと違うのは間違いない
負の連鎖を断ち切る唯一の方法
長女と次女が過激派組織ISへ参加。
残されたのは母親と三女、四女。
役者の助けを借りながら対話し、真実と演出が交錯。
過去を振り返える新しいドキュメンタリー。
そこには国、政治、宗教、価値観などが
絡み合っていました。
母から子への呪縛がかなり強烈。
「狼の餌食になった」
「私の人生に男が入ってきた」
「逃れるために選んだのが信仰の道しかなかった」
「女の体は夫一人のもの」
「私の体は私のものでしかありえない」
「私達はアバズレと言われる。
男の役者は何をしても何も言われないのに」
「父親は性行為を通じて私の誕生に貢献してくれただけ」
数々の言葉が記憶に残っています。
また、男性の登場人物は全て一人の男性の役者が演じているのも印象的。
家族の喪失と葛藤が最初から最後まで
ダイレクトに伝わってきました。
今までにない形式のドキュメンタリーなので、
退屈してしまう人と没入できる人に分かれそう。
75点ぐらい。イスラム国じゃなく、4姉妹にフォーカス
過激派組織イスラム国に加わったチュニジアの若き姉妹の決断と残された母と妹たちの葛藤を描いたドキュメンタリー、ってことで、
イスラム国がらみの話をメインで聞けるかと思ったら、メインは母親と4姉妹の話で、イスラム国がらみの話は終盤の20~30分ぐらいだけです。
劇映画っぽいけどもドキュメンタリーで、人生のエピソードを演技で再現するパートがあります。
4姉妹の2人はイスラム国に参加し不在の為、不在の2人役は女優が演じ、時には母親役も女優が演じます。
この母親は娘がイスラム国に参加したということで、すごく有名になったそうで、実際のテレビ出演時の映像も使われてます。
1番聞きたかったイスラム国がらみは少なかったんだけど、
気の強い肝っ玉お母さんと4姉妹の話が面白かったのと、少ないながらもイスラム国がらみの話が印象深かった。
単純なドキュメンタリーとか再現ドラマとかではないのが─
単なるドキュメントとか再現ドラマではなく、役者との絡み合いや対話などで過去から現在の出来事を伝えようとしている試みに、かなり引かれるものがあったし、実際に冒頭からもう泣きそうになったのですが、思えばそこが自分のMAXだったような・・・
リアルな人物が役者に対して要求や演出めいたものを助言したりと、なかなか面白いところはあるのですが、スクリーンの中も外も、感情が変に煽られるような印象がして、事実関係がしっかりと捉えることができず、途中から見るのがなんだかイヤになってしまいました。
家族の悲しみはあるのでしょうけど、現状、誰にも非など感じられず、悲劇的な状況であったことは間違いないけれど、それぞれが行き着いているところは至極妥当だとしか思えず、状況の打破とか理不尽なところはそれほど感じなかったので、さらりと悲しい人生を垣間見ただけでした。別にそれはそれでいいと思うし、独特の手法で見るべき価値は十分あるとは感じるものの、個人的にどうもこの悲壮な雰囲気の部分は受け入れがたかったです。
IS
(オンライン試写会は内容に関係せずネタバレ扱い)現在の事情を扱っている点は評価できる
今年71本目(合計1,613本目/今月(2025年3月度)5本目)。
いわゆるイスラム国の抗争はご存じと思いますが、少し離れたチェジニアという国からその抗争に参加したいという2人の少女の決断と、その決断を肯定も否定もせず見守る家族を描くストーリーです。
映画自体は完全なフィクションになりますが、このイスラム国の抗争において多少離れた国(チェジニアを含む)から志願兵が集まったのも事実で、チェジニアで女性(16~17歳の女性)が参加したかについては確固たる証拠はないものの、実際に志願兵がいたであろうことは推知可能ですし、イスラム国の抗争については史実になるので、フィクションものとドキュメンタリーものの境目(やや後者の割合が高いか)というところだろうと思います。
日本ではくしくもロシアによるウクライナ進行がはじまって、イスラム国の抗争等はほとんど報じられることがなくなってしまったところ、それでもそのようなことは現在進行形でも起こっているわけであって、ニュース(NHKしかりYahooのニュースしかり)で取り上げられなく「なった」(が、抗争としては依然存在する)こうした「過去の少し前の実際の事件」について再度アンテナを張りなおす良い機会になりました。
完全な「ドキュメンタリー映画」ではないものの、映画館で一般的に流される映画で「ここで笑って」というようなシーンもないので、典型的に見る方が限られてくる映画ではありましょうが、正規の公開日にこうした「硬めの内容を扱う映画」を入れてもよいのでは、といったところです。
採点に関して特段気になった点までないのでフルスコアにしています。
当日の公開日にはおすすめな一本ですが、どうでしょうか?
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