「殺す側の視点」関心領域 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)
殺す側の視点
映画は、先に僕もレビューを書き、星2つにした「オッペンハイマー」と同様、殺す側の視点で貫かれている。
立ち上る煙、時に叫び声めいたものが聞こえるが、アウシュビッツ所長・ルドルフ・ヘスの家族や仕事との関わりを中心に、淡々とした描写で物語は進む。
見る意義がある映画だとは思う。われらが「パーフェクト・デイズ」にオスカーを取らせなかった作品であり、評価も高いのはわかる。
しかし、心を揺さぶられるような内容ではなく、退屈と言っていい映画なのだ。
これをきっかけに、ナチスが犯したホロコーストについて知ろうとしたり、戦争、軍という機構に取り込まれてしまえば個人などというものはまったく見向きもされない…ということに気づくことは大切だろう。
そうしたきっかけづくりになる映画だとは思うが、僕自身は面白いとは思わなかった。他人に見ることを勧めたいとも思わない。
殺される側のことを一切描かない、という作法で際立たせているのは結果的、商業的には成功したのだろうが、僕にはどうでもいいと思った。
公開から2週間を過ぎ、上映館も結構に多いのだが都心のシネコンでは平日昼間にもかかわらず7割くらいは入っていたろうか。映画ファンにこの作品が届いているのはそれはそれで結構なことである。
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