レンフィールド

解説・あらすじ

ブラム・ストーカーの古典小説「吸血鬼ドラキュラ」の登場人物レンフィールドを主人公に、ドラキュラに仕える青年がドラキュラとの共依存関係から抜け出すべく悪戦苦闘する姿を描いたホラーコメディ。

現代のニューオーリンズ。ドラキュラの手下として働く青年レンフィールドは新しい獲物を求め、人間関係に悩む人々の自助グループの会合に潜り込む。そこでの会話をきっかけに、レンフィールドはドラキュラとの悪い関係を断ち切りたいと考えるように。そんな折、レンフィールドは街を牛耳る犯罪組織ロボ一家を追う警察官クインシーと出会う。

主人公レンフィールドを「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のニコラス・ホルト、ドラキュラをニコラス・ケイジ、警察官クインシーを「フェアウェル」のオークワフィナが演じた。漫画家・脚本家ロバート・カークマンの原案をもとに、「レゴバットマン ザ・ムービー」のクリス・マッケイが監督を務めた。

2023年製作/93分/アメリカ
原題または英題:Renfield

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映画レビュー

3.0 ニコラス・ケイジが演じるドラキュラ伯爵を観られるというだけでも一見の価値あり!

2025年10月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

興奮

驚く

レンフィールドとは、1931年に作られた『魔人ドラキュラ』に登場する人物である。
『魔人ドラキュラ』は現在我々がイメージする黒マントのドラキュラ伯爵の姿を全世界に広めた伝説的な映画なのだけれど、この作品にはドラキュラ伯爵の他にもう一人、強烈な印象を残すキャラクターが登場する。
それがレンフィールドである。

『魔人ドラキュラ』のレンフィールドはイギリス人弁護士であり、ドラキュラ伯爵のロンドン移住計画に伴う不動産契約の手続きをするためにはるばるトランシルヴァニアのドラキュラ城まで招かれるのだけど、哀れ伯爵の毒牙にかかって彼の忠実な下僕に成り果ててしまうのだ。

『魔人ドラキュラ』ではレンフィールドは一応人間ではあるのだけど、虫を好んで食べる半吸血鬼みたいな存在として描かれている。
レンフィールドにはまだ人間としての心が残っているのでドラキュラの下僕として働くことに罪の意識がある。でも同時に人間という窮屈な存在から解き放たれてけっこうハイテンションで(笑)、ドラキュラに仕えることに喜びを感じてもいる。
『魔人ドラキュラ』でレンフィールドを演じたドワイト・フライという俳優は、人間と怪物のはざまで揺れ動く、この奇妙な虫喰い男を鬼気迫る強烈な演技で演じ切って観客を圧倒した。

なんで、こんなにレンフィールドに詳しいのかと言うと、つい先日『魔人ドラキュラ』を観たばかりだからである(笑)。

本作は、このレンフィールドという怪人がドラキュラ伯爵と共に現代まで生き続け、アメリカのニューオーリンズに移り住んできたら…という設定の、言わば『魔人ドラキュラ』のスピンオフ作品である。

レンフィールドを演じるのはニコラス・ホルト。
自分の中では神経質そうなピリピリした人物を演らせるとメチャクチャ上手い俳優というイメージなのだけれど、今回もドラキュラ伯爵の下僕として生き続けることに罪悪感を感じ、何とか伯爵の支配から逃れようと四苦八苦する繊細な主人公をコミカルに好演している。

なにせ、本作のレンフィールドは街の教会が主催している共依存に悩む人たちのためのグループセラピーに参加するくらいドラキュラ伯爵との共依存関係に悩んでいるのだ。
言われてみれば確かに吸血鬼は日中は活動できないため代わりに色々と働いてくれる人間の下僕を必要としており、下僕もまた吸血鬼からパワーを貰って生きているので、お互いに共依存の関係にあると言えなくもない。

こう書くと、本作は『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のような、一風変わったオフビートなホラー・コメディーのように感じるかもしれない。もちろん、そういう部分もなくはない。
でも、本作を監督したクリス・マッケイはあの痛快作『レゴバットマン ザ・ムービー』を手がけた才人であり、痛快エンタメのツボというものをちゃんと心得た人なのだ。

ドラキュラ伯爵との共依存関係にウジウジと悩む繊細な青年レンフィールドは、実はひとたび虫を食べると凄まじい怪力やスピードを発揮する一種の超人であり、彼はその超人的身体能力を正しいことに使うという決意を固め、ドラキュラ伯爵や、伯爵の新たな下僕となった街のギャングたちと壮絶なバトルを繰り広げるのである。

本作はむしろ『ブレイド』シリーズのようなストレートな痛快ホラー・アクションに属する作品であり、自分は『ブレイド』シリーズが好きなので、本作がアクション満載というのは嬉しい誤算だった。

ただ一方で『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』的なオフビート感を期待していたため、結構ストレートな物語にちょっと肩透かしを食って物足りなさを感じてしまったというのはあるかも知れない。
でも、そんな物足りなさを補って余りあるのがニコラス・ケイジの怪演である。

ニコラス・ケイジは奇人変人的なキャラクターを演らせると本当に上手い。いや、上手いとか下手を超越して、彼にしか出せない唯一無二のヘンテコさを出せる稀有な俳優だと自分は思っている。
ドラキュラ伯爵というのは、映画界では手垢がつきすぎて、誰がどう演じても陳腐な感じがしてしまう非常に難しいキャラクターだと思うのだけど、ニコラス・ケイジは変に現代的なアレンジをすることなく、この古風なモンスターをイカれた怪演で演じ切ってみせた。

ニコラス・ホルト演じるレンフィールドは、アクションシーンこそゴア描写満載で迫力があるものの、キャラ的にはいささか生真面目すぎて小さくまとまってしまった感がある。
それに対して、ニコラス・ケイジ演じるドラキュラ伯爵は大仰で慇懃無礼、かつ凶暴極まりないイカれたモンスターであり、彼が登場すると画面から目が離せなくなる。

『魔人ドラキュラ』でレンフィールドを演じたドワイト・フライのイカれた怪演ぶりは、ニコラス・ホルトではなくニコラス・ケイジの方に受け継がれてしまったようである。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のニュークスみたいにぶっ飛んだニコラス・ホルトが観たかったけれど、ニコラス・ケイジが演じるドラキュラ伯爵を観られるというだけでも一見の価値ありの作品と言える。

本作は日本では劇場公開されずDVD &配信スルーになってしまったけれど、『ブレイド』シリーズのようなホラー・アクションや『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のようなホラー・コメディーが好きな人なら観ておいて損はない快作!

でも、『トワイライト』シリーズや『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』みたいな耽美的なヴァンパイアが好きという人は、う〜ん…観なくていいかも知れない(笑)!

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盟吉津堂

3.5 ゴア描写満載で贈る、ホラー・コメディーとしての“ドラキュラ”

2025年7月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

興奮

【イントロダクション】
ドラキュラ伯爵の下僕となって現代まで生きてきた男が、普通の生活を取り戻す為、理不尽な上司へ反旗を翻す姿を描いたホラー・コメディ。吸血鬼ドラキュラ伯爵をニコラス・ケイジ、彼に仕えるレンフィールドをニコラス・ホルトが演じる。
監督は『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017)、『トゥモロー・ウォー』(2021)のクリス・マッケイ。脚本はライアン・リドリー。

【ストーリー】
20世紀初頭。英国人弁護士のロバート・モンタギュー・レンフィールド(ニコラス・ホルト)は、土地取引の仲介としてトランシルヴァニアの古城を訪れる。城の主であるドラキュラ伯爵(ニコラス・ケイジ)は吸血鬼であり、レンフィールドが有用な助手になると見抜くと、彼に自分の力の一部を与え、不老不死として下僕化する。

そして、舞台は現代のニューオーリンズに。ドラキュラ伯爵は、ヴァンパイア・ハンターとの戦いで太陽の光を浴びて瀕死の重症を負い、逃亡生活を余儀なくされていた。彼らは廃病棟を根城にして、レンフィールドは伯爵復活の為に生贄となる人間を探し求めていた。
しかし、理不尽な上司からの虐待に嫌気がさしていたレンフィールドは、共依存者の集うセラピーに参加していた。そこで彼氏からの虐待から抜け出せずにいる女性・ケイトリンの話を聞き、伯爵への生贄にしようと行方を追う。

ケイトリンの彼氏・ボブは、仲間と共に街の支配者である犯罪組織“ロボ・ファミリー”からコカインを盗んだ直後であり、やって来たレンフィールドを組織が雇った殺し屋だと勘違いして襲い掛かってくる。レンフィールドは虫を食べる事で身体能力を一時的に向上させる事が出来、襲い掛かる男達を難なく気絶させる。しかし、直後に本当のロボ・ファミリーの殺し屋と鉢合わせてしまい、仕方なく殺し屋を殺害してしまう。
現場に様子を見に来ていたロボ・ファミリーの若頭、テディ・ロボ(ベン・シュワルツ)は、殺し屋がレンフィールドの圧倒的な身体能力の前に惨殺される姿を目撃し、大慌てで車を走らせて逃亡する。

テディは混乱した状態で車を走らせ、飲酒検問所に配属されていたレベッカ・クインシー巡査(オークワフィナ)に逮捕される。しかし、車内に大量のコカインを積んでおり、取り調べ室で自白までしたにも拘らず、テディは釈放されてしまう。警察の対応に憤慨するレベッカは、FBIに所属する妹のケイトとも対立してしまう。

一方、根城に犯罪者達の遺体を持ち帰ったレンフィールドは、ドラキュラから叱責される。彼は犯罪者などではなく、幸せそうな夫婦や修道女といった純粋な人々の血を求めていたのだ。

仕方なく、レンフィールドは獲物を求めてレストランへ赴く。また、レベッカはレンフィールドが現場に残していたレストランの名前が印字されたペンを頼りに捜査に訪れていた。すると、テディが自身を逮捕したレベッカに復讐する為、仲間を引き連れてレストランを襲撃してきた。レベッカは、テディの脅しにも屈せず、気丈な態度を崩さなかった。その様子を目の当たりにしたレンフィールドは、虫を食べてパワーアップし、レベッカと共にギャング達を一網打尽にする。テディの逃亡こそ許してしまうが、レンフィールドはレベッカの勇気と店を救った事に対する人々からの賞賛に快感を得る。

やがて、レンフィールドはセラピーで自己啓発を促され、「自分が協力しなければドラキュラも完全復活は出来ない」と悟り、理不尽な上司を見捨てて新しい生活を手にしようと行動するようになる。

【感想】
コメディーとゴア描写満載で贈る賑やかな作品である本作だが、その背景には紆余曲折があった様子。
元々は、2014年の『ドラキュラZERO』(2014)から構想され、2017年の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』で本格始動したユニバーサル・ピクチャーズによる古典ホラーのリブート&ユニバース化計画である“ダーク・ユニバース”の流れがあった。しかし、『ザ・マミー』の批評的・興行的失敗によって計画が一度白紙となり、ユニバース化ではない単独作品としてのストーリーテリングに焦点が当てられる事になった。
そして、ユーモアとアクションを融合させた作風で成功を収めたクリス・マッケイに白羽の矢が立ったのだ。マッケイは、本作をユニバーサルによる1931年の『魔人ドラキュラ』の“準続編”としており、90年後のドラキュラとレンフィールドの同じキャラクターを描いている。

そんな複雑な背景はさておき、ニコラス・ホルトとニコラス・ケイジによる“Wニコラス”の共演は素直に面白かった。特に、ニコラス・ケイジのドラキュラは、途中弱体化してゾンビのようになった姿含め、ピーキーなキャラクターを好んで演じている彼の近年のスタンスともマッチしていた。

ツッコミ所満載の脚本も、コメディーというジャンルを選択している事でいくらか見過ごせるものになっている。とはいえ、レベッカ以外の警官達の清々しい程の汚職っぷりには笑うしかない。

笑ってしまうと言えば、ゴア描写満載で繰り広げられるアクションシーンも凄まじい。特に、レンフィールドのアパートが襲撃される際の、80年代スプラッターホラーかのような手作り感を感じさせる過度な演出と、現代的なアクションを組み合わせたシークエンスは素晴らしかった。
だからこそ、クライマックスでのドラキュラ&ロボ・ファミリー連合との決戦は、それを上回るアクションを見せてほしかった。ドラキュラによってレンフィールドと同じステージに立ったはずの下っ端達がアッサリと退治されていくのは都合が良過ぎたのではないか。せっかく、十字架や木の杭を用意したのだし、レンフィールドとレベッカに連帯感が生まれつつあったのだから、2人のコンビネーションによるアクションに舵を切らなかったのは勿体なく感じられた。

コカインでドラキュラを捉える為の防御円陣を描く展開は予想出来るが、その後のレンフィールドとレベッカによるドラキュラ虐殺シーンは面白かった。粉々にしてセメントに混ぜ、固形物にして下水に流すというのは、コメディチックに見せてはいるが、中々に例を見ないエゲツない退治法で良かったと思う。

気になるのは、レンフィールドが「虫を食べる事でパワーアップする」という設定だ。この設定に意味が見出せず、中途半端にホラー寄りな設定である為、笑いにも今一つアクセス出来ていなかった印象。
コメディに振り切る意味でも、そこは“血に似た何か”で良かったのではないだろうか。それこそ、ベタだが“トマトジュース”にでもすれば、レストランで毎回決まった注文をする様子やアパートの冷蔵庫に常備されている様子、決戦前の下準備で大量に買い込む姿など、ギャグとして挿入出来るシーンは数多くあったはずだ。レストランの店員やレベッカとの会話で、「ベジタリアンなんだ」と小ボケをかます姿もあったかもしれない。

また、ラストでケイトやセラピーのメンバーをドラキュラの血で復活させたが、ドラキュラの血を与えられた人間がどの程度変化するのかという設定も明確に示していなかったのはマイナスポイントのように思う。
レンフィールドは半不死身化していたが、その代償はなかったのか(絶えず喉の渇きを覚える等)、セラピーのメンバーらは復活したら不老不死となったのか等がイマイチ判然としないので、めでたしめでたしで終わるにはモヤっとする部分があった。

そんな緩さ含めて、コメディーとして割り切るべきなのだろうか?
因みに、本作の製作費は6500万ドル、世界興収は2690万ドルと、『ザ・マミー』の記録(製作費1億2500万ドル、世界興収約4億900万ドル)を上回る立派な赤字作品となっている。

【総評】
Wニコラスによるコミカルなやり取り、ゴア描写満載で描かれるアクションシーンが楽しい作品だった。とはいえ、コメディーとして割り切るにしても少々無理のある設定も目立ち、本国で興行的に跳ねず、日本では劇場未公開になったのも頷ける作品ではある。

結局、本作はリー・ワネル監督による『透明人間』(2019)の大成功により再始動したダーク・ユニバースの一部となるのかも不明であるし、色々と中途半端な作品となってしまった印象。

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緋里阿 純

3.0 演りたかったのね

2025年5月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

ドキドキ

ニコラスはずっとドラキュラを演じたかったそうで、楽しそうに演っている。

ただ、制作側の撮りたかったものと客の見たかったものにほんの少しすれ違いがあるように感じられた。

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共感した! 3件)
YOU

4.0 見終わった後にほっこりスッキリする映画。

2025年5月6日
PCから投稿

よくある悩める青年の話しかと思いきや、その青年は年百年も生きておりドラキュラに虐げられていたというお話し。
しかし、ただのドラキュラ物ではなくて、現代風になっており凄く面白かったです。

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みる