劇場公開日 2023年11月23日

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「殿の、殿による、殿のための戦国」首 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 殿の、殿による、殿のための戦国

2025年11月16日
iPhoneアプリから投稿

Netflixにて。
あれ、意外とおもしろい…?
少なくとも直近の家康大河よりはよっぽど面白かった。

わりと群像劇の部分もあるので、武士でない下っ端の人間までもちゃんと損得勘定とか、生の感情を垣間見せてくれるところが知的だなーと思った。
もちろん全体的に昔の人というより現代人、なんなら甲冑を着たアウトレイジにしか見えないのはある。でも逆に白黒時代の時代劇って割と軽みがあるものだったりするし、そんなに違和感はなかった。

なんといっても衣装がウツクシー。いやもうどのおじさんも大変シックだし、みんなセクシー。それぞれキャラを反映させた色遣いや着こなししててほんと眼福。
さすがにこれは日本アカデミー衣装賞とか、と思ったら邦画には当該の部門がなかった…。
いや衣装だけならワンチャン本場のアカデミー狙えるんでは?

公開時はさすがに豊臣秀吉が歳とりすぎだし、監督特権の濫用でしょとか思って劇場行かなかったけど、観終わるとなぜあの役をたけし本人がやる必要あったのか、やっと理解できた。秀吉・秀長・黒田官兵衛の3バカトリオは、侍の価値観を相対化する突っ込み担当なんだった。
だからもう終始「コント・こんな戦国武将は嫌だ!」みたいなノリ。それももともと武士じゃない秀吉というキャラクターあってこそ。まあバリバリの東京弁だけど…

侍や武将を美化しないのはもちろん、合戦とか武力をちゃんとエグいものとして描いてるし、なにより武士ホモソーシャル維持のために女を踏み台にしない潔さが非常によかった。血みどろなのに湿度は低いしさわやか〜。

戦メリ〜御法度という大島渚のホモソー→ホモセクシャル路線に対するアンサーなのかな。
とりあえず遠藤憲一と西島秀俊が引き受けてなかったらこの企画成立してないのでえらい。この2人に受けさせる北野武の監督力もすごい。
あと加瀬亮のテンション。体力なさそうなのに誰より消耗しそうな役で大変おつかれさまでした。
菊千代ポジションの中村獅童も大変かわいらさい。あれだけの柔軟さ、ピュアネスを感じさせるのってやっぱりすごい力量なんだろうな。

ipxqi