劇場公開日 2023年11月23日

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「男たちの戦国模様」首 sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5男たちの戦国模様

2023年12月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

異色の経歴を持つ北野武監督らしい解釈の戦国時代劇でした。

戦国時代はここまでバイオレンスなのか?と問いたいくらいあれこれ振りきれていたけど、史実と現実を考えると否定もできない。自ら名だたる芸人たち!?を束ねてきた身としては、戦国武将たちの関係性もまた違って見えたのかもしれません。ただ、ビートたけしを知る世代なら、コント色が見え隠れするくらいのちょうどいいR指定でした。

よく、三谷幸喜監督の『清須会議』と比べられるけど、秀吉の人物像は似ていると感じます。知恵者で良くも悪くもバランスがいい。会議は他の武将が消えた後だけど、信長とその家臣が消えればあれくらい穏やかなのかも…。

俳優陣はさすがの表現力でした。「殺してしまえ!」と威嚇や虚勢で威厳を守る信長、「泣かせてみよう」とあれこれつつく秀吉、「泣くまで待とう」と我関せずな家康、結局は熱くなれない光秀など。演技というより、それぞれの個性をさらけ出したような…。見事な配役でした。

その他、時代劇としても見応えがありました。ヘトヘト感のある合戦、泥臭さい日常など、男臭さが漂う描写は他の監督ではなかなか出せないと思います。

秀吉と同じように成り上がった北野武監督だからこそ見えた戦国時代があると思います。題名でもある「首」は侍にとっての手柄であり、侍は首を取ればいい暮らしができた。笑いを取っていい暮らしができる今の時代、近しくも遠い何かを感じたんだと思います。まさに、「北野武監督らしい作品」の一言に尽きました。

sumichiyo