劇場公開日 2023年11月23日

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「時代劇として面白い 北野映画としては」首 たまねぎ なきおさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0時代劇として面白い 北野映画としては

2023年11月28日
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鑑賞方法:映画館

笑える

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いわゆる北野映画の
監督自身が 俺はもう死んじゃおうかどうしようかと人生に葛藤していた時代に撮られたような
死生観や人生観が滲み出ているような映画ではありませんでした。

あくまで、監督が構想した1つの設定の中で走らせた物語としての時代劇作品です。
内容はいたってシリアスですがコント作品に近いかも知れません。

作品としては、これまでの時代劇映画のような
理路整然とした成人君主・武士道が美化されすぎた嘘っぽさは無く人間らしさがあり

百性(一般人)の考え方が前面に出ている分、当時の武士の考え方や生き方がどれほど異常だったかが浮き彫りとして見えてくるのは感心しました。

あくまで我々現代人から見ればですが
当時の武人の人生感は乱世の中でタガが全て外れていたんだろうなーと、空想に思いふけりました。

◆余談として
公開前のインタビューにて記者より
「北野映画特有の静かな残虐性や暴力は健在ですか?」という旨の問いに対して監督は
「やっぱりべトナム戦争でベトコンをあっさり殺すアメリカ兵のニュース映像が衝撃で。あれがずっと残ってるのです。」と言っていました。

検索すれば(しない方がオススメですが)
ベトナム戦争時にアメリカ兵が
まるで手慣れた作業のようにをベトナム兵やゲリラ兵を撃ち抜き殺す映像が残っています。
殺すことも殺したこともまるで気にしていないように見える姿には恐怖を覚えますが
戦争に送られてまともな神経と正気を失ったアメリカ兵も被害者の1人かも知れません。

戦国時代は人を殺せば殺すほど褒められ、出世も出来た時代
この映画に出てくる信長や武将、落武者狩りをする農民らは そういった戦国の中で生まれ育っています。
つまりは 頭がイッちゃってる 人しか生きられない時代を忠実に再現しようとしたらどうなるか というのが素晴らしいアイデアだったと感じます
とても面白かったです。

たまねぎ なきお