「掛け算しようとしたら足し算になってわやくちゃ。」首 リュウジさんの映画レビュー(感想・評価)
掛け算しようとしたら足し算になってわやくちゃ。
元は戦国時代を舞台に「首」を狂言回しにしたもっとシンプルな滑稽話だったように思うんです。
信長が手柄の証明のために首をもってこいと配下に首を要求し、百姓の茂助が出世のために大将首に血眼になり、光秀は天下人の証明するために血眼になって信長の首を探し、「首」が何より大事・・・・とする最後にラストのたけしのセリフ「首なんて誰のでもどうでもいいんだよ(すみません、不正確)」のオチにつなげるためのお話。
たけしらしく、権威も伝統も決まり事もなんもかも「ウソくせーんだよ、お前えらばかじゃねーか」と笑い飛ばす。
しかし、、、
構想を長いこと温め過ぎたからなのか、ストーリーに厚みをつけようとしてか、元の話に衆道やアドリブや弥助などを掛け算しようとしたらムダを足し算したことにしかならなくて、話が散漫になった印象。そんなのはなくても成立するのに、すごくもったいない。
見終わって頭に浮かんだのは、小林正樹監督橋本忍脚本「切腹」。あの映画も「切腹」の意味と当事者たちが後生大事にしている「武士たるもの」というものの薄っぺらさを観客に見せつけ考えさせる。何度見直してもあの映画には余計な部分はありません。
最初に書いたように滑稽にするのは「首」関係だけでよかったのに。
映画監督北野武と秀吉役ビートたけしによる壮大な猿芝居。
黒澤明氏が構想を評価したというから、本当に期待してたのに…。
追記>あと、合戦シーンもテレビドラマレベル。これもザンネン。