劇場公開日 2023年11月23日

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「北野流の人間模様の解釈に満足」首 Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5北野流の人間模様の解釈に満足

2023年11月25日
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鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

興奮

感想
日本ではテレビを含めて
本能寺の変前後の信長を
扱っている戦国時代作品
は多く制作されており、今回は
北野監督が戦国物を監督した、
という事で余り期待せずに鑑賞。

映像としては作品名のまま、
歴史的事実そのものの
論功行賞の証明としての首実検の慣習、
切腹、衆道など当時の行動そのものを、
素晴らしい俳優陣の演技、
また優れた視覚効果技術により表現しており、
えげつないほどのそのありのままの映像が、
逆にこの作品全編に流れている戦国期の
人の業(ごう)、念、残酷さ、恐怖、焦燥感を
増幅させている。◎

俳優陣はお馴染みの演技巧者ばかりだが、
今回特に、加瀬亮さん、中村獅童さんは
最高の演技だった。◎

脚本は思わず唸るほど素晴らしい出来映え。◎
北野監督の人間観察表現の集大成と感じた。
登場人物として元噺家で忍の曽呂利新左衛門
を時代の変わり目の狂言回しとしたところが
秀逸であり、新左衛門の目線が北野監督
そのもので時代を、人を、俯瞰していると
思われてならない。

新左衛門が秀吉、官兵衛から光秀の動静
を調べるように依頼された時、
秀吉から新左衛門に「おまえ、死ぬけどな。」
と言い放つシーンが忘れられない。

当時の諸行無常の世俗がありのまま
表現されており、権謀術数の数々、
人間臭さ、武士以外の茂助に代表される
市井の人々の姿。行き場のない
ストレスや、抑圧されたエネルギー発散の、
良い意味で荒削りの、味のある構成で、
往年の若き日の大胆で、ギラギラとした、
黒澤の時代劇作品を彷彿させるものがあった。

秀吉、秀長、官兵衛の会話など
アドリブなのかと感じさせる部分もあり、
その時の、思わず笑ってしまう、
人間らしい反応に期待をかける演出も
リアルさを増したと思う。

全て監督の経験値と緻密な計算により
生み出された作品だとという事を察し、
日本映画史上に残る傑作がまた出来上がった
事を心より称賛し拍手をおくりたい。

IMAX鑑賞。

Moi