「バイオレンスコント」首 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
バイオレンスコント
天下人になるために武将たちが企み合う物語というと、結構描かれてきたテーマだなと思ったんですが、北野武節がそこに加わると、どうなっちゃうんだろうというワクワクに身を任せて鑑賞。
物語のベースは本能寺の変前後で組み立てられており、権力を振りかざしまくる信長と、天下人を目指す武将たちの意地の悪さと執念深い様子がしっかりと描かれます。
R指定に相応しいレベルのグロは戦国が舞台でも健在でした。基本的には首をすっぱねるシーンで大量に血飛沫が出ますし、自害するシーンや処刑シーンもしっかりあるのでグロいですが、自分は序盤に信長が村重に饅頭を食わせるシーンで、予告ではなんかワタみたいなものを口に詰めさせていたのかなと思っていましたが、刃物に突き刺した饅頭を口の中でグリグリさせてもう口内出血まっしぐらで痛々しかったです。そんな時にするキスの味なんてもう鉄の味しかしませんよまったく笑
信長が男性も好んでいたというのはなんとなく聞いた事がありましたが、今まで信長を題材にしてきた作品でそこにフォーカスを当てた作品は観たことなかったんですが、今作は信長をはじめ明智光秀や荒木村重でもその面が描かれていました。
信長は現代でいうところのバイセクシャルというやつで、好意を持つ以上に服従させたいというのが強く出ていたなと思いました。森蘭丸にア○ル責めをしていたのも、当人が気持ちよくなりたい+屈服している様子を見るのが心地よいという狂喜的な一面はここでも出ていました。
光秀と村重はその面では真正面から愛し合っており、2人で布団を共にし、乳首を舐めたり(西島さんの鍛えられた筋肉がとても良かったです)、熱い口づけだったりと、この時代は現代よりも同性愛に寛容だったんだなと思いました。
どの武将も戦略家や豪傑としての一面は潜め、1人の人間がどれだけ這い上がるかという面にスポットが当たっていたので、どの武将も民も泥臭いです。
信長はその中でも悪魔的な面を全開にしており、この人は実はこうだから…なんてフォローは0にひたすら傍若無人な様を見せつけてきます。労いなんて一つもありませんし、蹴る殴る切り倒すとやりたい放題です。それ故にほとんどの部下に疎まれているのに当人は何も気にせず、さすがの肝っ玉でした。ただその中でも子煩悩な一面を見せたことにより、部下からあったわずかな信頼が崩れ、謀反へ…。奥深かったです。
秀吉は静かに天下を狙う今作の中では策士としての面が強く出ていたなと思いました。あっちとあっちをぶつけて、あいつはあぁやって始末して、ついでにあいらつもやってと様々なところに包囲網を張り巡らせていました。役を演じている時は北野武よりもビートたけしとしての表情が出ており、大きな水たまりを超える時簡易的な神輿で担がれていたシーンが1番面白かったです。秀吉、秀長、官兵衛のシーンはいくつかアドリブっぽいシーンも挟まれており、そこだけは狂気的な笑いではなく、コントとしてのお笑いがあったのも良いスパイスだったなと思いました。
「首」というタイトル通り、印象的なシーンには必ず"首"が存在しています。農民が天下人になる時には見知らぬ首を掲げ、処刑シーンでは首を切り落として殺し、信長の最後も自害ではなく首を切られて燃え盛り、光秀の最後は自ら首を落とし、ラストシーンでの首の見本市かの如く並べられているシーンなど、よくある生首が死んだのに表情が動くなんていうものは一切なく、死んだままの表情だったのが強く目に焼きついています。
オチも引いてみればかなり弱いんですが、史実で光秀の首が見つかっていないというのを元にして、顔の識別ができないから秀吉が光秀の首を蹴っ飛ばすという終わり方はもう完全にコントのオチでした。しっかりと物語の終わりにもなっていますし、これは芸人・ビートたけし節が強烈に炸裂したシーンだったなと思いました。
ほとんどの人間が死に絶え、残されたものは天下へと向かう、この時代をこれでもかと象徴としていたなと思いました。歴史の授業を飛び越えて戦国時代の舞台裏をこれでもかと堪能できました。
思っていたよりも笑いの方が強く、バイセクシャルである信長の面を押し出したというのも今までの信長像を覆す新たなものが観れて良かったです。登場人物が多いのもあって、駆け足かつその人物の顛末が雑な気はしましたが、十二分に楽しめる作品になっていました。"首"を巡るアクションを大いに笑っていきましょう。
鑑賞日 11/23
鑑賞時間 11:00〜13:25
座席 O-5