「素晴らしい!」はたらく細胞 まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい!
原作既読。頂いたムビチケの期限が迫り、遅ればせながら映画館にて鑑賞。想像以上でした!海外展開しないのかな?
日本て凄いなぁ〜とつくづく感心してしまった。大体こういう題材って子ども向けの学習素材に終わることがほとんど。でも、日本漫画の良いところは、やっぱり「大人が」「ワクワクすりゃ何でもいい」っていうところ。基本的にどんなことでもネタにしていいし、どんな世界観にしても自由。そして面白いものはすべからく受け入れるという豊かな土壌があることが、こうして次々と楽しいオリジナリティ溢れる作品が生み出される所以と思う。
針が両方に振れてるところも、とても良い。これだけの豪華な面々で、バカバカしい場面もシリアスな場面もフルスロットルでやるのが気持ちいい。トラック運ちゃん役の阿部サダヲが腹を下すくらいまでの前半は、古き良きドリフのコントを思わせる安定のお笑いモデル。昭和レトロな看板や街並みで表現される体内の様子は、「欲しがりません勝つまでは」の雰囲気を感じて、もはや過去の大戦はこんなテイストになる程昔のことなのか、とややジェネレーションギャップを感じつつ。
後半は「アレ?私何を見に来たんだっけ?」と一瞬戸惑うくらい、茫漠とした無慈悲な戦場がスクリーンに広がる。白血病と闘う芦田愛菜の体内の様子は凄まじく、荒野に放送が流れるところは現実の戦争や震災を彷彿とさせる絶望感があり、大人が鑑賞しても胸がキリキリする。その細胞たちの戦いが、父娘の家族の闘病とバッチリリンクしており、それぞれの世界と切り替わるタイミングも実に滑らか。原作のブラック版をちゃんと織り交ぜてあって、原作ファンも充分楽しめると思うし、NK細胞とキラーT細胞とのやり取りは皆んな見たかったんじゃないかな。同人誌やる人なら絶対描きたい幻の絡みでしょう。
俳優陣がめちゃくちゃ贅沢。大物に色んな格好させてメイクこってりして、大変だろうけど現場は絶対楽しいだろ。羨ましい笑 皆んなそれぞれ良い仕事してました。永野芽郁ちゃんは嫌味が全っっ然無かった。一般的におばさんの私から言わせてもらうと鼻につくんですよ、若い可愛い一生懸命な女子がドジっ子キャラって。でもひたすら応援したくなる魅力に溢れていました。私も絶対迷子になる自信あるしね…そして阿部サダヲ。いい歳した大人なんだけど、あの童顔で大きな独特の目、黙ってても何か言いたげな顔してるせいで、周りと少し違うことを考えているような、なんか許せてしまうような、不思議な魅力のある人ですね。芦田愛菜ちゃんは確かな演技と賢さ、品の良さは折り紙つき。説得力あります。憧れの先輩とのシーンは、こちらが思っている以上に無邪気で親しみやすい雰囲気をちゃんと出していて、さっすが〜と思ってしまった。顔立ちが派手すぎないので、団地や市営住宅に住んでますと言っても馴染む力がありますね。(米倉涼子が住んでたらちょっと無理あるじゃん的な)彼氏役の加藤清史郎君もそう。キラキライケメン過ぎないちょうど良さにグッと親近感が強まります。鑑賞者は、どこにでもいる普通の、身近な友達や親しい間柄の人のことのように感じて、頑張れ!と応援したくなるし、何とか助かって欲しいという祈るような気持ちに拍車がかかる。結末はどうせハッピーエンドなんだろ?とシラけさせない工夫を感じます。
日本の国民皆保険についても、やっぱり必須だと思いました。これだけは何としてもこの先も死守せねば。
がん細胞役のFukaseさんも良かった。最近見た「寄生獣」でも感じたのですが、倒される者の悲哀という視点や感情は日本人特有のものでしょうか?ただの悪役ではなく、悪役に深みを持たせて、ストーリーがより厚くなるところ、いつも胸がキューっとなります。ただの単純な悪役が倒されるだけの話ではもはや物足りない体になってしまった。まぁ、みんな人体や生命の不思議を思う時、がん細胞については増えることで最終的に人体が死んでしまうので、神秘的な感覚は大いにあるとは思うのですが。キャラクターへの気持ちの乗せ方が細やかで好きです。
忘れてはいけない、加藤諒さん。私は加藤諒さんが大好きだと思いました。良い仕事してます、欠かせない存在ですね。埼玉のあの作品でも輝いてた。あと、個人的には松本若菜さん、マクロファージのおねえさま。好き。
単純だけど、これ見た後はなんか健康志向になります。鑑賞前にフードコートでKFCを貪り腹を満たしたのですが、映画館から出て来た後は「夕食は魚食べよう…」と思いましたもんね。ずっとサボってたウォーキングまでしちゃいました笑
願わくば、ずっと元気で健康でいたい。はたらく細胞さん、ありがとう。