「原作より悲しみが増す良い改変。ただ、子ども向けではないので注意。」はたらく細胞 S.Oさんの映画レビュー(感想・評価)
原作より悲しみが増す良い改変。ただ、子ども向けではないので注意。
原作マンガ1巻とアニメ1期、BLACKを3話まで見てから映画を観に行きました。
アニメの「はたらく細胞」1期と「はたらく細胞BLACK」の1・2話を見てからの鑑賞がオススメ。
前半はコミカルなシーンもあって楽しげですが、後半は話が重く、細胞たちが肉体的にも精神的にも追い詰められる場面や流血ありの戦闘シーンもあるため、予告CMを見て子どもと一緒に観に行こうかなと思っている親御さんはよく考えてから決めた方がいいです。
★↓ネタバレ無しの感想★
【良かったところ】
・各キャラ原作に寄せたビジュアル。メインキャラは性格も変に改悪されていない(BLACKの先輩赤血球はほぼオリジナルキャラだったけど)
・原作とBLACKの内容を上手く取り入れていて、原作赤血球とBLACK赤血球のクロスオーバー、改変具合が丁度よかった
・異常細胞の設定、展開の改変がより残酷で個人的には好きだった
・アクションシーンは完全にワイヤー感が出ていたけど迫力があった
・人間パート⇔体内パートの切り替えが分かりやすかった
・エンドロールの細胞の手書き説明が良かった
【微妙に感じたところ】
・導入があまり面白くなかったので不安になった
・尺の都合だと思うけど 細胞やその機能についての説明が短く、全く知らない状態だと頭に入ってこないかも
・後半の体内パート、怒涛の絶望展開は子どもにはヘビー。怖がるかも(途中退場する子どももいた)
・返り血描写無しで子どもへの配慮かと思ったが、後半は細胞が派手に攻撃を受けたり流血があるのでどっちつかずになっている
・それは都合良すぎでは?と若干納得いかない部分があった
・メインの細胞たちの結末、ハッピーエンドが好きな人には微妙に感じるかもしれない(私はこれはこれで好きでした)
・人間パートやBLACKの要素は正直無くてもよかった。どっちかというと無い方がメインの“はたらく細胞”をもっとじっくりできたのでは…
時間内におさめないといけないのでしょうがないですが、細胞や細胞の働きの説明は短めで、マンガやアニメのように文字での説明も無いので分かりにくいと思います。
へ~体の中ではそうなってるんだ~となんとなくふんわり頭に入ってきますが、滅茶苦茶勉強になる!…かというと…そうでもないかなと。
予告を見た時は子ども向け寄りにしてるのかなと思いましたが、人間パートの展開も重めで結構大人向けに感じました。
小さい子どもを連れて家族で観に来られている方が多く 時々笑いも起こっていましたが、コメディのピークは肛門のところまでだったような。
後半の展開や戦闘シーンは、劇場内にいる子どもたちが泣き出してしまうんじゃ…と心配になり妙にハラハラ…
人間パートは細胞の話の合間に入れるには時間が無さ過ぎて、ストーリーが薄く登場人物に感情移入ができませんでした。
過去に親子役をした阿部サダヲさんと芦田愛菜さん、という部分の力に頼ってしまっている感。
勿論演技は最高だったんですが、このパートが無ければもっと“はたらく細胞”が見れたのかな~とどうしても思ってしまう…。
★↓ここから先ネタバレありの感想★
がん細胞を白血病細胞に改変した結果、白血病細胞と白血球との関係に深みが出てより辛いものになっていて、個人的には好きでした。
終盤、メインで出ている細胞が次々に殺されていき 放射線治療によって作中の細胞たちはほぼ全員死…全滅…?という展開はなかなか絶望感がありました。
最後まで残っていた赤血球の最期を想像するとかなり辛い。
最終的には新しい細胞たちによっていい感じに終わるけど、以前の細胞たちの結末はどう見てもバッドエンド…。
最後に出てきた白血球は 背中に刀、黒の指ぬきグローブをつけていたので、BLACKの白血球を意識している感じでした。
BLACKの方にいるはずの女性型の白血球が出てきていなかったので、代わりにそこで使ったのかなと。
予告CMでは明るい+シリアスシーンだけを流しているので子ども向けと勘違いして鑑賞に行く親御さんも多そう。
予告とあのポスターの雰囲気からじゃ後半の細胞たちにとっては救いが無いヘビーな展開は予想ができない。
そもそもアニメも全年齢向けではないですし、レーティングをPG12に上げて原作通りの返り血表現を入れたりと大人向けに振り切るか、ヘビーな展開を避けコメディ中心で少しピンチにはなるけどハッピーエンド!とかにして子ども向けに振り切るかした方が良かったんじゃないかなと思いました。