「好き嫌い&損・得の価値観だけで生きる時代に向けて!!」ソフト/クワイエット 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
好き嫌い&損・得の価値観だけで生きる時代に向けて!!
人々が差別や嫌悪を剥き出しにする様になったのは、
SNSで匿名で発言する時代のせいもあるだろう。
この映画は前半はたるい。
女たちが白人以外の移民や黒人、アジア系への恨みを
面々と述べて自己紹介して行く。
白人なのになぜに自分らは報われないのか?
面々と愚痴は続く。
愚痴はダラダラと長い。しかし、
後半からラストはメチャ面白くなる。
《白人至上主義者のサークルの暴走》
というキャッチコピーがついているが、
むしろフィルム・ノワールの傑作。
「レザボアドッグス」も「死刑台のエレベーター」も
「気狂いピエロ」も、
計画とは全く正反対のチカラで雪だるま式に
状況は悪化して坂道を転げるように、破滅に向かう。
例に挙げた3作品とは完成度や新しさでは
見劣りするけれど、
悪い方へ悪い方へと向かう引力には争いようが無い、
そこの所が面白い。
スーパーで口論になったアジア系の姉妹の家は、
高台の湖を見下ろす美邸。
そこで汚したり飲み食いしたり、挙句はパスポートを焼こうとする
女たち。
そこへ姉妹が帰ってきて、パニックになる白人至上主義女たち。
チームの中にはかなりの悪(ワル)もいて、アジア系の女性の口に、
バナナや酒を押し込み、ピーナッツ・アレルギーを起こして、
泡を吹いて
死んでしまう。
そして証拠隠滅と死体処理。
真っ暗闇の中、カンテラを額に点灯して、ボートに死体を乗せて
捨てにゆく。
(悲喜劇の有り様が残酷でユーモラス)
この映画は全編ワンカット・ワンシチュエーションで、
カメラを回したら
そのまま止まらず90分突っ走る手法。
カメラが安物だし、ライトは暗いしで、画像は悪い。
だからこそ、そこにただならぬ臨場感が、生まれたのだ。
監督の談話を読むと、
ブラジル系の女性監督の差別への怒りが凄まじい。
それが原動力だったのだろうけれど、
今回はたまたま全てがうまく行ったようだけれど、
次回作で本当の実力が分かる、
次作に期待したくなる。
おお化けするのが楽しみです。