碁盤斬りのレビュー・感想・評価
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思ったよりも本格的な碁打ち時代劇、プロ棋士探しはウォーリーよりも簡単?
2024.5.22 T・JOY京都
2024年の日本映画
古典落語「柳田格之進」を時代劇風にアレンジした作品
濡れ衣を着せられた浪人が自身の過去と向き合う様子を描いた時代劇
監督は白石和彌
脚本は加藤正人
物語の舞台は江戸の吉原近辺
郊外の貧乏長屋に住んでいる格之進(草彅剛)は、かつて彦根藩の役人として働いていたが、ある事件によって藩を離れることになった
一人娘のお絹(清原果耶)と共に暮らし、印鑑を彫ってわずかな金を稼いでいるが、家賃も払えぬ状況に陥っていた
ある日、近くの碁会所に立ち寄った格之進は、そこで乱暴な碁を打つという萬屋源兵衛(國村隼)と対戦することになった
1両を賭けての賭け碁をすることになったのだが、格之進は勝利寸前で手を止め、「このような碁を打ちたくはありませんな」と言って、勝ちを萬屋に譲った
その後、心を入れ替えた源兵衛は、格之進に碁を学び、良き碁打ち友達となった
源兵衛は萬屋の亭主をしているが、引き取った弥吉(中川大志)を後継者にしようと考えていた
番頭の徳次郎(音尾琢真)も彼を支えるつもりでいたが、当の弥吉はちっとも成長する気配を見せないのである
物語は、中秋の名月の夜の夜会にて、碁を打っていた源兵衛のところに、男が金を返しにきたところから動き出す
碁打ちに夢中になっている源兵衛の代わりにお金を受け取った弥吉は、源兵衛にそれを渡しに部屋へと向かった
弥吉は源兵衛にお金を渡すものの、翌朝、そのお金が無くなっていることに気づく
あの部屋には源兵衛と格之進しかおらず、そこで格之進に盗難の嫌疑がかかってしまうのである
また、萬屋がお金の紛失で揺れている頃、格之進の元に彦根から左門(奥野瑛太)がやってきて、妻・志乃(中村優子)の死の真相を聞かされてしまう
格之進は仇である元彦根藩の浪人・柴田兵庫(斎藤工)を探し出して、復讐を果たそうと考える
その矢先に弥吉からあらぬ嫌疑をかけられ、格之進はお絹を半蔵松葉の大女将・お庚(小泉今日子)に預けることでお金を用立ててもらうことになった
格之進は大晦日までに「復讐を果たす」と誓い、弥吉に「もし、無くなった金が見つかったら切腹してもらう」と息巻くのである
映画は、後半に怒涛の展開になってしまうのだが、あまりにも畳みかけ過ぎていて、「復讐に行く、戻って切腹、娘に止められるの流れ」がテンポを削いでいる
復讐に消えた格之進が旅先で自分の嫌疑について知るという流れで、復讐の旅を続けるか、嫌疑を晴らすかを迷うという流れでも良かったように思う
10両紛失騒動は後半の「碁盤斬り」に必要なのだが、どの碁盤を斬るかと考えれば、兵庫の切腹の代わりに碁盤を切っても良かったと思う
切腹もできず、生き恥を晒すというのが兵庫にとっては最も過酷な仕打ちなので、そこまで鬼になっても良かったと思う
嫌疑をかけられたとして、弥吉の出まかせで源兵衛を巻き込むのも無茶な話で、そこは言い出しっぺの徳次郎が斬られれば丸く収まったのではないかと思った
いずれにせよ、時代劇っぽい勧善懲悪の流れで、英題が「Bushido(武士道)」というのも面白い
碁盤があんなにスパッと切れるとは思わないが、あの効果音だと刀が折れたように聞こえるので、なんだかなあと思ってしまった
かなり碁の話が出てくるので、最低限のルールを知らないと、定石を外して打つ兵庫であるとか、乱暴な碁を打つ源兵衛などの碁はわかりにくいかもしれない
プロの棋士が5人ほど登場していたが、このあたりは囲碁ファン向けのサプライズ演出なのかな、と感じた
個人的には、それっぽい映し方をしていたので「ひょっとして」とは思ったが、判別できるほど打ち込んでいたので勿体なかったかもしれません
碁にも殺陣にも吉原にもどこにも愛が感じられない
あまり悪口を言いたくはないが白石和彌監督が何故この古典落語が原作の凡庸な人情噺を撮ったのか分からない。松竹で京都太秦撮影所とその職人スタッフを使って時代劇をやってみたかったのだろうとは思うが過去に散々作られてきたテレビ時代劇をなぞっているだけにしか見えず物語への愛が感じられないのだ。いくら職人監督に徹したとしても対象への愛が無いのに映画を作るべきではないだろう。心底がっかりである。クライマックスをタイトルで盛大にネタばらしすることに何かメリットがあるだろうか?ストーリーもチャンバラをやりたいために盛り込んだ奥さんのリベンジドラマが中途半端でこれっぽっちもヒリヒリさせてくれないしお絹を吉原に売り飛ばした武士の馬鹿げたモラルを曖昧にしてしまっており不快。弥吉はお絹が吉原に売られたことを知った時点でなぜすぐに見受けしない?正月にお絹が家に帰るのを笑顔で見送る女郎たちにも違和感を覚えた。
石の下
白石監督が作る作品はエログロバイオレンスがメインで、今作のような時代劇は初めてで新鮮でした。
特典は小判ステッカーで洒落が効いていました。
古典落語がベースになっているみたいで、そのおかげもあって耳ざわりも良く、お話がスッと入ってきて見やすい時代劇になっていました。
訳ありそうな浪士の格之進の性格や暮らしが囲碁を通して描かれる前半と、娘を助けるために行う静かな復讐劇が後半と、1つの映画で複数の面白さが詰め込まれていて、表情だったり仕草だったりで伝わってくるものが多く、時代劇ならではの聞き取りづらさというのも全く無くて、それもまた良かったです。
囲碁自体は全く知識無くて、オセロの難解版かなーくらいの知識でしたが、スクリーンの中で淡々と進められる対決に釘付けになって、ルールが分からずとも勝負の進退が分かる作りがお見事でした。
大晦日の期限までに借金返済が間に合わなくて、これはやっちまったーとなったところで、女将さんがとぼけてくれてお絹を返してくれたところは思わず「女将さーん!」ってなってウルっとしました。
役者陣がこれまた本当に素晴らしく、草彅さんの優しい表情と濃い喜怒哀楽がたくさんあって、俳優・草彅剛をこれでもかと堪能できました。
清原果耶さんも「青春18×2」に続いて素晴らしく、立ち振る舞いが丁寧で見惚れていました。
中川大志さんの一歩踏み出せない感じの弥吉には観ている側も揺さぶられ、首を斬られそうになった時の首の血管や震えがとても印象的でした。
脇を固める國村隼さんの飄々とした感じ、キョンキョンの飴と鞭の使い分け、奥野さんの頼りになる部下の感じに斎藤工さんのダーティーな雰囲気とどのシーンを切り取っても隙のない演技合戦に斬られました。
映画全体を通して見るとインパクトには欠ける作りで、時代劇ならではのであえであえ!みたいなシーンはほぼ無いですが、無骨で真っ直ぐな切れ味抜群の面白いドラマが観れて楽しかったです。
格之進は何処へ、そんなラストも余韻たっぷりで良かったです。
鑑賞日 5/19
鑑賞時間 18:00〜20:20
座席 I-14
ヤナギの碁
清原果耶がまた男を虜にしておる。笑
それはともかく、全体的に自分は乗り切れなかった。
序盤はやけにゆったりしてる割に、源兵衛が打ち筋や経営方針を変えるほど格之進に心酔する理由が弱い。
やっとこ仇討ちに出ようとした矢先に嫌疑をかけられ、切腹未遂。
…だったら藩を追われた段階で腹を切るのでは?
何のドラマもなく、碁会を虱潰しただけで兵庫を発見するが、何故そこで頸を賭けて碁を打つ必要があるのか。
源兵衛との十両を巡る賭けも含め、毎回賭けをする理由が見当たらないんですよね。
腕を落とされた途端に潔くなる兵庫もよく分からない。
仇討ちが済むと、それまで娘を想う様子もなかったのに左門の進言でお絹のもとへ。
門が閉じ、弥吉から五十両が出てきたと知らされると、またも娘のことを忘れたように萬屋へ急行。
タイトルでネタバレしてるのに、散々引っ張り碁盤斬り。
最後は何事もなかったように和解し、弥吉とお絹が祝言をあげ、格之進は姿を消す。
旅に出る理由は分かるが、カッコよさ以外で黙って行く理由何かある?
画面の質感に統一感がなさすぎたり、あからさまにアテレコのシーンも違和感アリ。
大半のキャストが時代劇の台詞回しがハマッておらず、ツヨポンも棒読み迫力不足。
殺陣もまったく格好よくないし、障子に突っ込んだ際の3カメ演出には笑ってしまった。
五十両には何か謀があるかと思えばただのボケ老人だし、源兵衛は勝手に頸賭けられてるし、これ喜劇だろ。
上司の指示に従っただけで殺されかけた弥吉が不憫。(徳次郎はそれ以降気配を消すし)
硬派なタイトルの割に、中身は豆腐のようでした。
平均点以上だが、時代劇として疑問あり
落語が原案なので、時代考証的に正しいかどうかは、あまり期待していなかった。
とは言っても、「中国の碁の格言」というセリフを聞いたとき、江戸時代に「中国」と呼んでいたのか疑問に思った。また、吉原に身を売った絹が、いくら楼主のお康と一緒だったとはいえ、吉原の大門の外に出られただろうか?落語原案としても、こういった点はもう少し丁寧に考証してほしかった。
脚本については他にも納得できない点が多々ある。例えば、格之進の敵討ちの話。江戸時代でも、許可のない仇討ちは違法行為である。しかも、妻(卑属)の仇討ちは通常許可されない。しかも、この映画の場合、仇討ちの許可を誰にも(旧藩主に江戸の奉行所にも)得ていないのだから、格之進の行為は単なる殺人なのである。侠客の屋敷内のことということで済ませたつもりなのだろうが、それはあくまでも結果なのであって、格之進は他の場所でも柴田を斬っていただろう。というよりも、柴田とのエピソードは必要だっただろうか。絹が身売りする理由をもっともらしくするため、むりやり挿入したように思えてならない。原案である落語の「柳田格之進」では、武士の面目を保つためだけに娘を身売りさせるという描写なので、それでは現代では共感を得られないという判断なのだと思うが、無理矢理という感じが否めない。柴田が柳田を襲った理由も、映画の描写ではよく分からない。柳田の妻を手込めにしたなどというエピソードは入れずに、もっと柴田が柳田を嫌った理由をわかりやすく描くべきだったのではないか。エンディング近くで柴田が、柳田が実直すぎたという批判をしているが、この話をもっと前に持ってきて、丁寧に描いた方が良かったのではないか。
また、弥吉が格之進を疑っているというシーンも、その後の展開を考えると無理がある。落語の通り、格之進を疑っている番頭が格之進を訪ねて50両について訪ねるとした方がしっくりきたのではないか。
格之進が誰にも告げず、旅に出るラストシーンも意味不明である。いい役者が揃っているのに、脚本で勿体ないことになっていると感じる。
あと、長屋の店賃にも苦労していた格之進が、敵を求めて旅をするための旅費(路銀)をどうやって工面したのだろうか?娘を売った金から何両かくすねたとも思えない。そうしたところを丁寧に描写した方が面白かったと思う。
地味な話なのに最後まで続く緊張感が見事!
囲碁が得意で生真面目な浪人、柳田格之進。
格之進の妻は亡くなっており、
美しい一人娘、絹は父を気遣いながら
縫い物などの仕事をして何とか日々を食い繋いでいる。
格之進は囲碁が趣味の豪商、万屋源兵衛と知り合い
囲碁仲間として親しく付き合ううちに
たまたま、勘違いによる金銭問題が発生し、
それを解決するために格之進の娘
絹がとんでもないことに〜〜〜。
これは原案の落語のお話。
映画版ではそこに、
そもそもなぜ格之進が浪人になってしまったのか?
なぜ、格之進の妻が死んでしまったのか?
そこのところを膨らませて映画的な盛り上がりが加味されて
映画ならではのチャンバラシーンが加えられています。
話は地味なんだけど、最後まで緊張感があって
なかなかに引き込まれる良作です。
草彅剛も好演ですが、清原伽耶の
清潔で高潔な武家娘が素敵です。
海外で最初に日本映画に注目が集まったのが時代劇。
その火を消さない為にも映画館でぜひご覧ください。
で、月に8回くらい、映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては
なかなかにしっかりした時代劇。
前半は柳田格之進の生真面目さや娘の絹の健気さ
また碁仲間となる万屋源兵衛やその養子、弥吉との
四季折々の交流の様子が丁寧に描かれて
そこが染み入る。
昨年公開の「藤枝梅安」の時にも感じたが
時代劇の世界観にしっかり没入するには
その時代に普通に繰り返される四季折々の
行事や風俗、料理等の描写が丁寧であれば、
より深く物語世界に没入できる気がする。
忘れ去られつつある日本の風俗を
せめて映画の中には留めておいて欲しい。
所謂チャンバラシーンは草薙剛さんと工藤巧さんだから
正直そんなに上手くは無いですがこの映画、
剣豪の話では無いので、まあ、緊張感が続けば
良いんじゃ無いかと思います。
小泉今日子さんが、美味しい役です。(笑)
今後のこの手の役が増えるかも〜〜
なかなか楽しめる娯楽作品です。
囲碁の知識があれば…
囲碁の知識があれば、もう少し楽しめたのだろうか?
全体的に画面が暗すぎて分かりづらいところもあったのが、残念。
草彅剛さんは、ほんとに何をやってもその人に見えるのがいい。バラエティで見るのほほんとした感じと全く違い、ビシっとしたお侍さんで迫力を感じた。國村隼さんは、昔からあの声と演技が大好きで、あんなに自然体に聴こえながらしっかりと意味が伝わってくるのが不思議。それだけ実力者なのでしょうが…。
ストーリーは、予定調和な感じで、意外性もなく進み終わった。
草彅剛あっぱれ
とにかく草彅剛を堪能する作品
もしも草彅剛が武士を演じたらではなく、柳田そのものであった。もちろん柳田自体は知らないが、作品を鑑賞したら存在感と自然さが圧倒的だった
國村隼さんも名優。事前知識なしで鑑賞したので、ありがちな悪徳商人かと思ったが申し訳ない
時代劇だが白石監督らしく遊び心もありうまくまとまっていて楽しめた。
碁盤斬りの意味
武士として約束を違えず、真っ直ぐに向き合った碁に対して、碁盤を切ることでその生き方を少し変えて、柔軟に生きようとすることの表れですよね。
なので、両替商の2人を切る約束も反故にし、掛け軸もお金を工面するために不正に入手しようとした、と…
吉原の女将さんも約束を無かったことにしてくれて、この生き方もアリなんだと感じたんでしょうかね。
光と影の使い方が上手い
キョンキョン(小泉今日子さん)の横顔が、年齢を感じて嬉しくも寂しい。
とてもいい役で、はまってたんだけどあの甘くて少し高い声はNGかなぁと思います。
草薙くんの演技は、とても素晴らしいと思います。
でも、市村正親が出た場面で持ってかれました。
実力の差が映像に見えました。
清廉潔白が正しいのか、これからきっと探しに行くんですね。
落語の面白さを越えられていない
映像は綺麗。美術にもこだわっていて、セットも良い。草彅剛の存在感なども言うことは無い。
反面、登場人物の心の動きがいかにも雑。
心の動きの描写が良いだけに、そこが際立つ。
元々の柳田格之進を聞けば、番頭の描写など
もっと表現できるポイントはあったし、
吉原の人間の論理、武士の矜持など
どの登場人物にも芯が無いように見える。
前言を翻しすぎている様に感じた。
これは原作の問題なのかもしれない。
あと"中国"の一言はさすがに気になった。
そこは清でしょう。江戸時代に中国はありません。
融通の効かない正義の人が巻き起こす負の連鎖?
融通の効かない正義の人、まさしく白の人、コンプライアンス的には間違ってない、間違ってないのだが、世の中は白と黒が入り乱れている。視点が変われば白黒ひっくり返るのである。
草彅剛は本当に白か?
斎藤工は本当に黒か?
実は逆なんじゃないか?
そんな人間のグレーゾーンが画かれているいる作品と思います。
清廉潔白がゆえの取巻の不幸はいかにも人間という存在の悲哀を感じさせます。
草彅くんが彦根藩に戻らず掛軸を換金して放浪していく様は正義の刃に倒れた者への贖罪でしょうか?
いずれにしろ、悲しい、悲しい物語です。
皆さんの評価が高くてビックリ
つくりはいいのかもしれませんが、登場人物の謎行動に驚かされるばかりで、あまり感情移入もできませんでした。
話変わるけど、予告で何度聞いても「忘れてはオランダ〜」って言ってるのかと思ってました。
堂々の時代劇
これが初とは思えないほどの、白石監督の堂々たる時代劇。たっぷり楽しめた。
あえて逆光で撮ったシーンが多く、それが効果的なのに感心した。さらに、ろうそくの薄暗さ、火影のゆらめきで江戸の夜を表現し、そこに吉原の華やかさを対比させるなど、素晴らしい雰囲気。
題名でラストの展開が読めてしまうのが、とても惜しい。
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