「2億ドルの蛇足」ジョーカー フォリ・ア・ドゥ マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
2億ドルの蛇足
トッド・フィリップス
1970年生まれのアメリカ出身
主にコメディ映画で2000年代から
頭角を現し2009年「ハングオーバー!
消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」
でコメディながら2億ドルを超える
大ヒットを記録しブレイク
そして2019年に「ジョーカー」
のメガホンを取りR指定にもかかわらず
世界で10億ドルを稼ぎ出した
でそのジョーカーはそれまでの
DCコミックシリーズのヴィランと
して登場してきたブルース・ウェイン
の異母兄弟でピュアな悪の権化・象徴
という道化のキャラクターから一転
生活面も知的にも社会に対してハンデを
抱えた一人の男アーサー・フレックが
理不尽な社会の抑圧からついに
凶行を行っていく過程を
つぶさに描写
コメディアンに憧れたアーサーが
ピエロのメイクをすることで
ジョーカーとなり凶行の
高揚のあまり踊りだしてしまう
シーンはあまりに強烈であり
ながら観る側には背徳にも似た
開放感をもたらした衝撃的な
作品である
そんな続編の今作だが
正直前作を観賞し評価した観客の
大多数の見方は「あれ続編いる?」
だったと思う
それくらい前作はラストで
アーサーがムショにぶち込まれるが
全く懲りずにヘラヘラ笑っている
悲しい時もつい笑いだしてしまう
精神疾患を抱えた男が本当に
解放されて笑い出してしまった
ジョーカーとなった
それで終わりでいいじゃんと
誰もが思ったところである
監督すら思っていたのでは
ないだろうか
ただ映画会社的には
バットマンという人気IPで
予算5500万ドルで10億ドル稼ぎ出した
わけだから続編作れとなるのも
まぁわからんでもない
(DC系の映画がイマイチ
コケまくってるのもあるんでしょうか)
じゃあ今度のジョーカーは
ハーレイとゴッサムで大暴れ!
バットマンと対決だ!
とかやるんですか?というと
今作のジョーカーはとてもそんな
要領を持ったキャラクターではありません
フィリップス監督は有名なヴィランを
主人公にするにあたって
等身大の人間が狂気に変貌するという
スケールで描くのみに留まりました
これで続編を作れと言われたら
じゃあ俺の責任でこのシリーズを
畳みますという感じになったのが
今作な気がします
前作はその公開から
模倣した犯罪などがありました
日本でも電車で人を襲ったバカが
いてジョーカーに影響されたとか
ほざいてましたっけ
そうした世界中のアホタレ向けに
フィリップス監督はきわめて
わかりやすくジョーカーを「終わらせる」
事にした感じでしょうか
そもそも前作で
ジョーカーは別になんもカッコよく
描かれていません
妄想の中で世界が自分の解放を賛美し
変わっていく様をシーンの中で
作り手は嘲笑っていたはずです
それはテレビスターのマレーを
放送中に射〇しパトカーで護送される
ジョーカーが暴動にまみれた
街を走っていくシーンで
きわめてベタな「ホワイトルーム」
がかかった時に感じました
完全に「カッコつけの勘違い野郎」
と演出してジョーカーを
突き放しているのです
でもこれを本気でカッコよく
思っちゃった人が多かったんでしょうね
だからフィリップス監督はそんな
カッコいいと思ってしまった観客を
今作でガガ様のハーレイに見立て
悪のカリスマ・ジョーカーを崇め
アーサーには目もくれない人々を
描写したのでしょう
アーサーは一人じゃない
理解者が現れたと喜びますが
ストーリー的にはジョーカーは
罪状のわかり切っている
裁判にかけられるだけで
ストーリー的には何も進まない
ハッキリ言って続編にもかかわらず
「やることがない」のです
妄想の中ではミュージカルしたり
裁判所の全員をぶっ〇したりしますが
ラストには「ジョーカーはいない」と
独白しハーレイ(観客)に見放され
刑務所でむかえる哀れな最期
ここまで露骨にやりゃわかんだろ?
とでも言いたげです
低評価もわかりますが
低評価を出した人は
もっと暴れろよ!だったのか
やっぱりこうなるよね・・だったのか
色々あると思いますが
仕方がなく作った感が
否めませんでした
これはさすがに
蛇足と言わざるを得なかったです
ただライティングとかはほんと
素晴らしいんでスクリーンでどうにか
観られる感じでしょうか
ただ前作の4倍の2億ドルかけた
らしいですがそんなにかかってる感は
画面からは感じられませんでした
ホアキンとガガのギャラに消えたのかな?
「イニシェリン島の精霊」にも出てた
ビル・マーレイといつも見間違える
看守役のブレンダン・グリーソンは
相変わらず味があっていいですね