「「一石を投じた」と言えるのか?」妖怪の孫 pageoさんの映画レビュー(感想・評価)
「一石を投じた」と言えるのか?
「昭和の妖怪」とも呼ばれた岸信介の孫である故安倍元首相のドキュメンタリー。
個々のテーマでは、一水会や下関の取材など興味深い点もあったし、論旨もうなづける部分もあった。
トークショーでの内山監督の話では、「パンケーキ」後の企画。動き出してからの河村プロデューサーの死亡と元首相の殺害、野党やマスコミの取材拒否…、完成までにはかなりの紆余曲折があったという。作品の理解が深まった。
ただ、気になったのは観客の多くは制作側が本当に伝えたいと思う相手ではないのではないか?ということ。支持層を巻き込む議論を呼ぶだけの影響をもたらしているのか。本サイトでの評判の高さは支持層の無関心の裏返しでは?とも感じる。
支持者が抱いている(少なくとも野党では信頼できないと考えている)と思われる問題…〇国の南シナ海、台湾などでの台頭、「北」のミサイルなどといったテーマについても目配りが必要とも思う。元首相の支持・不支持に関わらず国民の生命・安全にかかわる問題。政治姿勢や倫理観の欠落を責めるだけでは問題は解決できないのだから。
公開にこぎつけたことはよかったと思うものの、「一石を投じた」とまで言えるか。スッキリしない部分はやはり残る。
ハリウッドでは権力者の政治的スキャンダル(やその報道)をめぐる作品も見られる中、邦画ではなかなか広がらないのが残念。
コメントする