パリタクシーのレビュー・感想・評価
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やさしく人間が生きることの素晴らしさを感じられた
タクシー運転手とこれから老人ホームに入所する老婆とのストーリー。
老婆のこれまでの歴史を回想する形で、老婆の過去が明らかになっていく。
フランス映画らしく、物語に大きな抑揚はなく淡々と物語が進んでいくが、テンポが良いためあきることはなかった。
この老婆は特別な経験をしてきた人生であると思いつつも、どんな人間にもそれぞれ特別な経験をしているのだなとも同時に思わされて、人間が生きること、人生とは悪いものではないなと思わせてくれる作品であった。
誰だろうと回顧したくなる
ジェノサイド
箱のなかの話し
パリタクシー追憶巡りコースおひとり様
疲れた中年タクシードライバーと92歳の老女の1日だけの寄り道の旅と言う設定だけで、『いい映画』確定なんだけど、そこはフランス映画,一筋縄ではいかない人情劇でした。パリのあちこちを廻りながら、老女の追憶を辿るのは定石的だけど、彼女の辛い人生が戦後フランスの女性人権史のようなのが面白い所です。彼女のDV夫への反撃はドン引きしそうになるけど、サッと現在の彼女に場面転換するのが上手い所で、監督のクリスチャン・カリオンの阿吽の呼吸はなかなかです。エンドロールも、彼女の最も愛した思い出のシーンで、涙腺崩壊です。役者では、主演のお二人がキャラにピッタリの名演でした。ダニー・ブーンのしかめっつらから笑顔になるあたりは、本当に味があっていい感じだし、リーヌ・ルノーは、貫禄がありながらも辛い過去でもサラッと流すお茶目振りが魅力的です。彼女の若き日を演じたアリス・イザーズも、キュートで、若い時のエマニュエル・べアールを思い出しました。
ベッソンじゃないやつ
パリの素敵な街並みを舞台に人生いまいちうまくいってないタクドラとやたらと饒舌な客の老婆が昔を振り返りながら紡ぎ出す心温まるストーリー…と、予告編からラストのオチまで含めて想像されるまんまの展開なのだが、婆さんの過去バナには意外性があり、今の時代性が盛り込まれていた。人権に関してはどこよりも進んでると思われるフランスでさえ、前世紀の半ばはまだ女性の権利もへったくれもない国だったとは。世の中動かすにはガスバーナー持ち出すぐらいの強さが必要ということか(違うか)。
最近のフランス映画はこんな人生イイ話みたいなのが多い気がするが、全体にあっさり目というか、もう少し展開や演出に工夫のしようがあるように思う。たとえばシャルルがカメラで妻の気を引いて、マドレーヌの息子がカメラマンになったつーんなら、写真を使った二人に通ずるエピソード作るとか…。90分でサクッと観られて、これはこれでいいのかもしらんけど、設定の割にあまり感動のない話だったエール!がコーダあいのうたにリメイクされてアカデミー賞を獲ったように、盛り上げようはあるかと。
低予算だし脚本に気を遣えば、日本でも各地の観光案内を兼ねたご当地映画としてもリメイクできそう?
最強のふたり
90分と短い映画なのでさくっと見ることができ、いい感じのタクシー運転手とマダムのコンビを味わうことができる映画です。
ふたりが同世代で出会っていたら恋人同士になってたんだろうなと想像してしまいました。
俳優さんのふたりは、役とマッチしていて超適任でした。
グランドホテル形式類似の設定が醸し出す雰囲気の味わい
本作にはタクシー運転手のシャルルと、乗客のマドレーヌという明確な主役が設定されているので、正確に言えば当たらないのですが。しかし、ごく限られた場面の設定(タクシーの車内)で展開されるドラマということでは、これも一種の「グランドホテル形式の映画」と言えるのではないかと思いますし、その広くはない舞台設定が、シャルルとマドレーヌとの関係性に、一種独特な雰囲気を醸し出していたことも、間違いはないと思いました。評論子は。
シャルルが運転するタクシーの車窓に流れるパリの街の風景が、あたかも「走馬灯」のように、マドレーヌが語る彼女の人生の思い出をリアルに紡いていたと思われます。
その雰囲気が存分に味わえるという意味では、佳作であったと思います。評論子は。
凄絶な人生も平穏な人生も束の間の夢みたいなものなのかも
独り暮らしの92歳の老婦人マドレーヌが介護老人施設に引っ越す。そのためにタクシーが呼ばれる。やって来たのは風采の上がらない中年男シャルル。移る施設は同じパリ市内、おそらく数十分で着ける距離なのかもしれないが、老婦人マドレーヌの願いで想い出の場所に寄り道を繰り返す。そして思い出話が語られる。途中、マドレーヌの突然の自然現象(尿意?)やら、信号無視で警察に止められたり(過去の違反の累積でシャルルは免停か?)、こうしたエピソードでの二人の対応がくすっと笑える。始めは無愛想だった運転手シャルルも次第に心を開き、マドレーヌの話に熱心に耳を傾けるようになる。二人はまるで祖母と孫?親子?友達?気が付けば夜になり、二人はレストランでディナーを共にする。食事の後にセーヌ川沿いの街灯に照らされた夜の道を二人は腕を組んで歩く。まるで恋人みたいに。
マドレーヌの口から語られる過去は驚くほどに壮絶なもの。なのに幸福そうに語られる。シャルルはいつの間にか、自分の不遇な今も何とかできる、何とかしてみせると考えるようになっている。
予定よりも何時間も遅れてマドレーヌは介護老人施設に送り届けられる。そして最後にサプライズが。それはとても悲しい結末だけれど、とても幸せなサプライズでもあった。
92歳のパリジェンヌ
高齢マダムが主人公のフランス作品はハズレがない!(ねもちゃん調べ)
主人公マドレーヌを演じるはシャンソン歌手としても有名なマダム・リーヌ・ルノー
マドレーヌが歩んできた
波乱万丈な数奇な人生の悲壮感を感じさせないのは彼女の抜群のオーラとチャーミングで凛とした演技力のせいかもしれない
崖っぷちのタクシードライバー、シャルルが乗せた老婦人マドレーヌ…彼女の秘密が寄り道の度に明かされて行くうちシャルルも徐々に心を開き自身事を語り出したった1日の交流の中で
いつしか熱く深い友情が芽生える
シャルルはマドレーヌが目指した目的地…
悔いなき終活経由〜愛する人達が待つ天国へ
キチンと送り届けたからこそ彼の妻曰く「こ、こんなに…」な感謝と愛を込めた料金を
マドレーヌもキチンと支払ったのでしょう
時間と共に変わりゆくパリの風景を私もタクシーに乗って旅している気分にもなれ
91分という決して長くは無い尺の中で見心地良き時間を過ごせました
「語る」事の大切さ深さを改めて感じましたね
泣けて笑えて心から幸せな気持ちになれました
いやぁ忘れられないフランス作品がまた一つ増えましたね!
GW、誰にでもおすすめしたい作品です!
が…上映館が少ないのが唯一の不満です💧
ひとつの怒りでひとつ老い、ひとつの笑顔で ひとつ若返る
走馬灯
街でバッタリ知り合った高齢者の方に気に入られて遺産を譲ってもらえることなんてないかな、なんて邪な考えを持ってる方は鑑賞をお控えください。私もそういう人間でしたが鑑賞中はそのようなことはつゆほども考えませんでした。
マドレーヌが暮らした50年代のフランス、いまやジェンダー平等が進んだこの国もこの頃はご多分に漏れず男尊女卑の女性が生きづらい時代。
どんなにひどい仕打ちを受けてもただ耐え忍んで生きなければならない女性たち。当時離婚が少なかったのはそうした女性たちが耐え忍んだことの結果であろう。
そんな時代にあってもマドレーヌは進歩的な女性だった。自分への暴力に耐えかねてというよりも、命より大切な息子に暴力をふるう夫が許せなかった。
彼女は夫に制裁を加えるが、この状況なら現代では禁固刑25年はありえないだろう。その後彼女は女性活動家としてその人生をささげる。
ただ本作ではそういう女性問題はメインではなく、あくまでもマドレーヌとシャルルの束の間の交流がメインだ。
袖触り合うも他生の縁、タクシー運転手というのはそういう点で物語性のある魅力的な職業だ。それを題材にした作品は過去にも多い。
特に本作はコロナ禍を経験した世界にとってタイミングの良い公開だった。ディスコミュニケーションのいまの時代、他者との交流に飢えた人々にとっては心を癒してくれる作品として。
日々、借金に追われ心に余裕がなかったシャルル。そんな彼がマドレーヌと出会い束の間を過ごし、心を癒される。
彼女を施設に送り届けたあと、彼にとって見慣れた街の景色はいつもと違って見えたはずだ。
マドレーヌとの交流でシャルルが癒されたように本作を鑑賞した観客も癒された。今のこんな時代だからこそ、より人々の心を和ませる作品として価値のある作品。
束の間、話があっただけなのに
歴史の語り部
観てよかった。
2021年、見かけは綺麗だが、コロナ禍後で景気は悪く、人との繋がりは薄れ、自分さえよければと誰しも皆ギスギスしている、フランス・パリ。
この国でも、40代半ばは特に煽りを受けてまともな仕事もなく、非正規待遇で高リスクな仕事を受けている人が多く。
92歳のマダムを、タクシードライバーが介護付き老人ホームへ連れていく道中、思い出の土地を回りながら過去を語る形態で映画は進む。
ナチスによるフランス占領、ナチスの虐殺被害にあった父、連合軍によるフランス解放、米兵との恋と別れ、予期せぬ妊娠、結婚相手のDV、女性にまともな人権のなかった時代の不当な裁判……
パリの美しい観光名所を巡りながら、その街で過去に何があったのかという歴史の語り部としての老婦人・マドレーヌ。
彼女の過酷な人生を知り、今が最低だと思って苛々していた自分を恥じ、優しさを持って、改めて人生をやり直したいと感じた46歳のタクシー運転手シャルル。
今の時代に翻弄される人々に、いろいろな気づきを与える二人の、小さな街の中のロードムービーに拍手。
1ユーロ147円とすると…
約1億5千万円!いやーお年寄りには親切にしといた方がいいなー。どこかで観たようなエンディングだと思ったら韓国映画「Sunny永遠の仲間たち」と同じオチか。洋の東西問わず「情けは人のためならず」ということだね。
…などというゲスな感想はともかく、ドライビング・ミス・デイジーばりの老婦人とオッサンドライバーのハートウォーミングコメディかと思ったらとんでもない。主人公の人生のあまりの波瀾万丈さに大衝撃を受ける。なんせナチス占領から米軍の駐留、女性の地位向上運動とフランスの戦中戦後史をもろ駆け抜けてきたわけで。だが平凡だろうと波瀾万丈だろうと、最後は誰もが等しく銘板に名の刻まれた箱に収まって終わる。2人の交流もさることながら、最後の墓地のシーンで人生多少羽目外そうが思うままに生きるべきとの思いを強くした次第。
意外に戦後も男尊女卑だったフランス
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