「始まる終末」終わらない週末 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
始まる終末
あらすじだけ見ると2つの映画の掛け合わせのよう。
週末を別荘で過ごす家族。そこに突然の訪問者。白人家族と黒人家族で、人種問題絡む『アス』系…?
謎の訪問者に不審感。その時、世界中で異常な出来事が…。『ノック』系…? 謎めいた作風もシャマラン的。
それらを連想させつつ、こちらはこちらで全く別の、予想も付かぬ展開になっていく。
スマホやWi-Fiなどの電子機器の類いが一切使えない。
末の娘は配信で懐かしのTVドラマ『フレンズ』の最終回が見れない事が目下の問題。
予兆はあった。開幕、ビーチに突っ込んでくる巨大タンカー。これも計器などがダメになったからだろう。
飛行機が墜落。無人自動車が次々にクラッシュ。一体、何が…?
一瞬スマホが繋がった時、ニュース速報。アメリカ全土でサイバー攻撃…?
一体、何が起きているのか…?
情報遮断。現代ハイテク社会の弱点を付く。
不穏な雰囲気は人間関係にも影を落とす。
アマンダ、クレイ、アーチー、ローズの4人家族。
GHとルースの父娘。
話はほぼこの2組の家族で進められていく。
別荘で過ごすアマンダらの前に、深夜突然訪問してきたGHとルース。
GHはこの別荘の家主で、世間の異常事態で普段住んでいる街のマンションに帰れなくなった。
一晩泊めて欲しい。家主なのでその言い分は最もだが…。
クレイは承知。困った時はお互い様。
が、アマンダは…。
開幕早々打ち明けるが、アマンダは人嫌い。突然深夜に訪問してきた彼らを警戒。家主や事情も信じようとしない。
子を持つ親なら分からんでもないが…、アマンダの突き放しは少々度を越している。面と向かってキツイ事も。
GHはそんなに怪しそうな人物か…?
清潔なスーツを着、口調や物腰も丁寧な紳士。娘はちと当たりがキツイが…。
だからある意味、怪しそうでもあったり…?
時折何か意味深な事を言う。この異常事態について何か知っているような…?
そんな腹の底が読めないGHをアマンダは殊更怪訝。
でも、そんな理由やアマンダの人嫌いだけではなく、無意識の内の人種差別もうっすら孕む。
雰囲気同様、不穏な人間関係がスリリング。
掻き立てるカメラワークや音楽も秀逸。
あの“プリティ・ウーマン”がヒステリック気味なオバサンになるとは…。
人はいいんだろうけどうだつの上がらない夫イーサン・ホーク。
売れっ子マハーシャラ・アリがさすがの印象を残す。
ケヴィン・ベーコンも僅かながら終盤に於いてインパクト。
子役たちも奮闘。特に息子役の歯が抜け落ちるシーンは強烈。
不可思議なスリラーだが、タンカー直進、飛行機墜落、車クラッシュ、他にもネタバレになるので詳しく書けないが、スペクタクルな描写が衝撃。
尺は140分超えとちと長め。間延び感はあるが、オチが気になって飽きはしない。
時折宇宙からの描写も。この異常事態は“そっち系”…?
別荘のリフォームを手掛けたGHの友人が語る。この国は敵が多い。一斉に攻撃してきた。
GHの口からある陰謀論が語られる。話の出所は、軍関係者。3段階の予兆。それが今、2つ起きている。
彼らが言う事が今起きているのか…?
その通りなのか…? 違うかもしれない。
分からない。
分からないから、怖い。もし本当に“その時”になった時、説明や何もかも知ってる人などいるだろうか…?
ドローンでばら蒔かれたビラ。“アメリカに死を!”。
あのフラミンゴは…? 鹿は…?
不可解な謎だらけ。それが解明されない。はっきりとしたオチを求めていた人にはモヤモヤ感が残るだろう。
個人的に最大の謎は…
何故に『フレンズ』推し…?
監督が『フレンズ』のファン…? こんな状況下でも人はドラマの結末が気になるという皮肉…?
皮肉と言えば、やっと見れた『フレンズ』の最終回。配信作品なのに、DVDで見るという…。
それに、あそこで終わるとは…!
まあ、あの音楽には懐かしくなったけど。昔、WOWOWで見てました。