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■売れないイラストレーターの和真(武田航平)は、娘ひな(佐藤恋和)の育児を妻の小百合(安藤聖)に任せっきりの日々を送っていた。
ある夜、漸く自身の色鉛筆の絵が週刊誌の表紙に採用され、和真が編集長(津田寛治)達と行きつけの小料理屋”さつき”で飲んでいると、買い物に出た小百合が事故に遭って入院してしまう。
酔いつぶれた和真。
娘のひなは翌朝一人で目を覚まし、警察に保護され、児童養護施設に引き取られることになってしまう。慌てて施設に駆け付けた和真に、ひなは泣くばかり。まるで、今まで面倒を見て来なかった和真を諫めるように。
そして、一切子育てに関わってこなかった和真は、娘との失ってしまった絆を取り戻す決意をする。
◆感想<Caution!内容に触れています。そして自身の育児体験を併せて記す。>
・序盤は和真の姿に苛つきながら鑑賞する。
ー だが、私自身も娘が生まれた時には嬉しかったが、戸惑うばかりであった。義母が、娘が幼いうちから風呂の入れ方などを”特訓”してくれた(させられた)お陰である。普段はどんなに緊張しても手が震えない私だが、この時は手が震えたのを良く覚えている。-
・和真の表情が序盤は、一切笑顔がない事。仕事が不安定だった事と、家族を養わなければと焦る気持ちからであろう。ここで、彼の優しいタッチの色鉛筆の絵が週刊誌の表紙に押した編集長を演じる津田寛治さんの、優しい笑顔にホッとする。ご存じの通り津田さんは、強面から優しい人まで演じ分ける邦画の名バイプレイヤーである。
・そして、少しづつひなとの距離を縮めていく和真。
ー この時の、且つて教師だった大屋さん夫婦(三田村賢二&浅茅陽子)や両親を事故で亡くし、二人と暮らす孫娘(伊礼姫奈)の優しさが沁みる。頑なな態度を取る和真に笑顔で”お互い様よ。”と声を掛ける姿。今や貴重なのかもしれないなあ、こんな善性溢れる人達は。-
・行きつけの小料理屋の女主人(柚希礼音)が、いつも和真の食事を持たせてくれる姿や、常連客の男を演じた寺脇康文も良い。
更に、児童養護施設の人達を演じた松下由樹を筆頭とした温かさも沁みるのである。
ー この作品は、ベテランが脇をガッチリ締めているのである。ー
<そして、幼稚園の運動会でひなと和真がひなの苦手な滑り台を滑るシーン。大屋さんたちが応援する中、和真はひなの視線を自分が書いたイラストの旗に向けさせて、見事に滑り降りるのである。
今作は、仕事を言い訳に育児を妻に任せっきりだった男が、真の父親になる姿を描いた作品なのである。
親子三人で、手をつないで歩くラストの後ろ姿も、良き作品である。>