「昭和の頑固ジジイ」オットーという男 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
昭和の頑固ジジイ
さすがのトム・ハンクス
いい話しではある。
高齢化社会や孤独死とか、そんな事にまでメッセージは広がりそうな雰囲気もあった。
あの偏屈さを除き、オットーみたいな人は珍しくはないと思う。かくゆう俺も家族がいなけりゃ1人なような気もする。
すすんで隣人と交わろうなんてしないし、東京じゃ隣の部屋に誰が住んでるかわからないし、関わらないのが無難というかエチケットというか…そんな風潮さえある。
なので、自分の何年後かを見てるような気にもなる。
物語の落とし所はすぐに分かる。
あぁ、この家族との交流を経て彼の心は溶けていくのだなぁと。ラストに至り自らを「おじいちゃん」と呼称するオットーが微笑ましい。
彼は偏屈ではあるが、根はいい人なのだ。
彼の良さを見抜き1番の理解者でもあったろう妻が亡くなった事で、彼も死のうとする。
彼女がいない世の中で、何の為に生きていくのか分からなくなっていたのであろう。裏を返せばそれ程までに彼の情は深いのだ。彼が周囲を煙たがる程、周囲は彼を煙たがってはいないってのも、いい匙加減だ。
亡き妻の功績も大きいのかはしれないが。
ブツクサ言いながらもちゃんと助けてあげる描写とかも効いてる。社内では老害のような扱いではあったけど、おそらく彼が退いてからの会社は混乱を極めるのではなかろうかと思えてしまう。
とまぁ、物語の筋が分かっても見てしまう。
これが俳優の力なのかと思う。
オットーの笑顔が見てみたいと思う。
彼の目に慈愛が灯る時を見てみたいと。
きっとトムがそうさせる。
なのだがさすがはトム・ハンクス。オットーが優しく笑うカットも、オットーの目に慈愛が灯る瞬間もなかった。彼は終始、眉間に皺を寄せた頑固なじいさんのままだった。
作品を牽引するってのはこういう事を言うのだなと深く納得した。
本作のトムは痩せたようにも見える。
あの年になっても作品の為に減量とかするのだろうか?するのだとしたら相当キツイ気がする。
だけど、膨よかなオットーよりは、細身のオットーの方が作品にはマッチしたのだと思う。
自分がオットーの年齢に達した時は、どんな風になってるのだろうか?
案外1人も好きなので、そこまで思い詰めるコトもないように思うけど、家族とか家族のような存在ってのは有難いものなのだなぁと思えた。
なんか居たなぁ、こういう頑固な爺さん。
タイトルに昭和と書きはしたけど生まれは大正とかなんだろな。なんだか懐かしいや。