劇場公開日 2023年4月29日

「それがし、透明人間に非ず...  世間の規範に従うことの困難な風来坊女性が異分子の声に無関心な家族に,そして社会に爪痕を遺さんと怨嗟の念を滾らせるマイノリティーの絶望映画!!」私、オルガ・ヘプナロヴァー O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5それがし、透明人間に非ず...  世間の規範に従うことの困難な風来坊女性が異分子の声に無関心な家族に,そして社会に爪痕を遺さんと怨嗟の念を滾らせるマイノリティーの絶望映画!!

2023年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 1973年、チェコの首都プラハで群衆にトラックで突っ込み、多数の死傷者を出して翌年チェコスロバキア最後の女性死刑囚となったオルガ・ヘプナロヴァーを巡るクライムドラマ。
 事故当時22歳のうら若き彼女の、裕福ながら家庭の世間体のために存在を否定され続けた少女時代、そしてようやくありつけた職場と精神病院を行き来する中で世間の無理解と冷笑に苦しみ、被害妄想も相俟って内在する憎悪を先鋭化させていくその姿・・・・・・同性の愛人達との刹那的な享楽に身を委ねつつ幼子のように孤独に打ち震える主人公の姿を主演のミハリナ・オルシャンスカが全身全霊で体現し、モノクロームで寒々として生気の感じられない画造りと劇判並びに劇的な展開を排して淡々と空疎な日常を描くシュールな世界観は観る者の心を鷲掴みにすること請け合いです。
 "犯罪映画"といえばギトギトした油ギッシュなものを想像しがちですが、その対極に君臨する一本として好事家にも苦手な人にも観てもらいたいこの静かなる狂気…。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)