劇場公開日 2023年6月2日

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「寓話とは・・・」ウーマン・トーキング 私たちの選択 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5寓話とは・・・

2023年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

事前情報として、南米ボリビアで実際にあった事件をもとに執筆された小説をサラ・ポーリーが監督し映画化した作品で、アカデミー賞脚色賞受賞作品という事までは分かっていましたが、ちょっと変わった物語でした。
原作にどこまで忠実なのかは分かりませんが、監督は寓話として作ったと明言していますので、原作にはインスパイアされただけでかなり脚色をしているように思えました。
日記タイトルにした寓話とは「比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭すことを意図した物語」とウィキにあります。
その割にざっとレビューなどを見渡しても、寓話として何に例えた比喩なのか?を言及した感想は殆ど見当たらず、物語の中身そのものの感想の方が多い様に見受けましたが、それはどうしてなのでしょう?
本作、監督の寓話という事へのこだわりだと思うのですが、物語の設定はかなり雑というか荒っぽいというか、設定的に???と思える部分が多かったです。だからこそ、そういう些末な事よりも寓意を読み取って欲しいという作り手の願いがあったように思うのですが、高評価の割にそこにまで言及されていないのが寂しい気はしますね。

本作は“アーミッシュ”の様な宗教集団の小規模な村が舞台で、元々人間は集団生活でしか生きられない生物であることは歴史的に見て分かっていることですが、その集団も数千年前には都市から国家規模にまで拡大してしまいましたが、数万年前までは(最大)150人程度の集団(コミュニティー)だったのです。
そして私が本作を見て思うに、その程度の集団で起こりうる問題とその対処方法も、今の国家規模の問題と対処法も基本的には変わらないのではないかというのが本作のメッセージであったように思えました。
そして、比喩として本作の村が国家だとすると、女性は一般市民という事になります。そして、一般市民にファシズムのような国家的暴力があったとしたら、市民はどのように判断対処すべきかをミニマムな物語で表現していたのだと思います。
そこで行き着くところの選択肢はどのような規模であろうと、1.赦す(生涯我慢する)2.闘う(死を意味する)3.去る(これも死の覚悟が必要)の三つの手段しかないということであり、その選択過程に於いてそれぞれの人間性が試されるというお話だったと思います。
まあ、特に男性性にとっては厳しいテーマの作品でしたが、本作はあくまでもシミュレーションであってラストのその後は描かれていませんでした。
しかし、もし人間に性別が無く雌雄同体として高等生物になっていたら、いったいどんな社会が生まれていたのでしょうね。

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シューテツ