「この場所とそこで交わされた言葉から、未来が希望へと転じていく」ウーマン・トーキング 私たちの選択 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
この場所とそこで交わされた言葉から、未来が希望へと転じていく
極めて現代的なテーマを扱いながら、その舞台をまるで時の止まったかのような宗教コミュニティに据えることによって、ある種の時代性を超越した荘厳さを持つ作品に仕上がった。発端となる衝撃的な事件そのものを直接的に描くことなく、女性たちは納屋に集まって自分たちが置かれた現状、コミュニティに巣食う病巣の本質、決断すべき未来について「言葉」で語り合う。閉所空間で展開し、動きは少なく、さらに膨大なセリフ量の会話劇という逆境を逆手に取り、見事な強度を持つ構造体へ昇華させている点には驚かされるばかり。見終わると当初の印象は大きく変わり、その納屋こそが太陽の眩く差し込む場所であり、彼女たちの理路整然とした思考や意志の生まれる出る泉であり、外の世界へ向かって開けた出発点であることに気づかされる。個として団として卓越した存在感を放つ俳優たち。彼女らを流麗に束ね、崇高な希望の物語を紡いだポーリー監督の手腕を讃えたい。
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