せかいのおきくのレビュー・感想・評価
全122件中、101~120件目を表示
江戸の庶民生活を通して、現代社会を考える
最近観た時代劇「仕掛人・藤枝梅安」が思いのほか良作だったし、本作の予告がモノクロで描かれていたことも興味深く、公開初日に鑑賞してきました。
ストーリーは、江戸時代末期、貧乏長屋で一緒に暮らしていた父を侍に斬り殺され、自身も喉を切られて声を失った武家の娘・おきく、人々に蔑まれながらも下肥買いとして生計を立てる矢亮、儲からない紙屑拾いに見切りをつけて矢亮とともに下肥買いをすることにした中次ら三人の若者たちが、先の見えない苦しい生活の中でも、自分にできることを探し、懸命に生きる姿を描くというもの。
時代劇といえば、武士が主役の剣劇や捕物、幕府内の権力争い、史実ベースの歴史物などがほとんどだと思いますが、本作で描かれるのは江戸庶民の市井の生活です。それも、下肥買いという汲み取りを生業とする若者の日常を描いていることが斬新です。当時の江戸は大都市であったにもかかわらず、インフラもしっかり整備され、とても衛生的であったと聞いたことがあります。それを支えていたのが、彼らの存在だったのだと気づかされます。
とはいえ、糞尿まみれで悪臭を放つ彼らを、世間の人は蔑み、ひどい扱いをします。そんなつらい現実を前にしても、ユーモアで自身を少しでも明るく励まし、懸命に強かに生きる矢亮の姿が印象的です。そんな矢亮を兄貴と慕う中次も、最下層の立場にあっても人として大切なものは失わない生き方が立派です。また、おきくも、落ちぶれても武家の娘としての誇りをもって生活する一方で、中次に思いを寄せて一人で恥じらう姿がなんともかわいらしいです。
そんな三人の姿を通して描かれるのは、当時のサスティナブルな循環型社会、それを支える最下層の生活の苦しみや悲しみ、それでも変わらず紡がれる親子や恋人との絆。江戸時代が舞台ではありますが、今に通じるものが多いです。というより、今だからこそ考えなければならない、感じておきたいものばかりです。
ただ、映像的には3人の生活が淡々と描かれるだけなので、ストーリーとしてのおもしろさは薄いと感じました。また、章立てで進むのですが、各章の終わりでところどころカラーになったのはなぜなのでしょうか。イマイチよくわかりませんでした。むしろカラーに違和感を覚えるほどで、モノクロの描写が矢亮たちの色のない生活を象徴し、ディテールを際立たせるのに奏功していたと思います。
主演は黒木華さんで、演技はもちろん、着物姿も所作も素敵でした。池松壮亮さんは、「シン・仮面ライダー」の本郷猛とはうってかわり、矢亮をいきいきと演じています。寛一郞さんと佐藤浩市さんの親子共演も見ものでした。あと、石橋蓮司さんが、めちゃめちゃイイ雰囲気を醸し出していました。
青春の香り
私達が味わった事のない青春の香りがしました。
本当に映像だけでも匂いが届いてきて何とも言えない気持ちにもなりました。ほんとIMAXに匂いの効果があればそんな感じだろうと思うぐらい見た後に匂いが残る映画でした。
人間食べてだして、また食べてだけのループを繰り返しているのにいつの間にか順位決まっていたりする事にたいする怒りなのかなと思ったりしましたが、そんな映画ではなくラブandポップな映画でした。
よくよくがんがえたら食べて出してそれが肥料になりまたその出来た物を食べるこのループって人間もいつか土に帰るのと一緒だなと思ったり。
青春なんて人それぞれだし、忠次と矢亮の2人の掛け合いなんてもろ青春だし、キクさんのあのちゅうじって書くシーンなんてもろ青春だし白黒だし大きな事件も起きないですが、青春なんてこんなもんだし、ほんとに映画やドラマやポカリスエットのcmの様な青春はほんと限られた人だけだから、凄く共感感出来る出来ました。
恋をしただけで世界が代わり行動も変わる感じも凄くグッときました。もちろんあの2人が上手く行ったかは分かりませんが。それでもグッとくる物がありました。
色々難しく考えちゃいそうな感じな映画ですか単純に青春映画と観てみてもいいのではないのかと思ったりします。すいません阪本監督に明確なメッセージがあったらすいません。私はセンスがないのでその辺は求めないでください。
みんなが知ってる青春の淡い匂いや酸っぱい匂いはしない匂いの青春映画ですがとても良かったです。ある意味酸っぱい匂いはしますが。
帰りお腹空いて何食べようかと歩いていたげCoCo壱が目に入りましたが、それはないなと家路につきました。
とりあえず
上映前にコンセッションでフードとドリンクを買うのは止めた方がいいです。
カラーだとリアル過ぎて正視に耐えない。
モノクロで良かった。
あと、この映画、それほど面白くはない
でも、そんなに面白くないのが人生だから
ましてや庶民の日常なんて、
糞おもしろくもなくて当たり前だろう。
↑(ここ笑うとこです)
改めて、生きるって、なりふり構わないことなんだなと思いました。自分も見習わなければいけませんね。
追記
江戸庶民の生活を此程身近に感じさせる映画もないですね。すごくありふれた弱さの延長線に、いつの時代も庶民はいるのです。活きるためのひとの弱さと生きなければならないというひとの強さが体現されてる佳作です。
やさしさとつながり
江戸時代末期の庶民の暮らしを描いていて、
黒木華さん、池松壮亮さん、寛一郎さんの三人が
とても役柄にぴったりで、特に池松壮亮さんが
〇〇ライダーの役よりも、ずっと生き生きしていて
こちらの役柄の方が素晴らしくいい。
全編モノクロ(ちょっとカラー)で描いたところも
とても好感が持てるし、作品の世界にあっている。
二人が演じた矢亮と中次に会ってみたくなる。
なんとも魅力のある作品です。
でも、下肥買いのシーンがちょっと多すぎませんか?
【江戸末期。循環型社会を支えた汚穢屋達と、貧しくも情を持ち逞しく生きる民の姿を描いた作品。”父さん、早く出してよ!””スマン、最近通じが悪くてな。”By佐藤浩市&寛一郎親子。ここ、笑うとこだぜ!】
ー 昨年「ウンチク/うんこが地球を救う」というドキュメンタリー映画を観たが、とても面白かった。ー
◆感想
・モノクロームで描かれた貧乏長屋に住む貧しくも人情豊かな民の姿が、なんか良い。
・汚穢屋コンビの”ちゅうじ”と”やすけ”の掛け合い漫才のような、やりとりや”香しいかほり”が漂って来るようなシーンの数々。
ー 途中まで、汚穢を救うシーンが多いのでモノクロだと思っていた。だが、ポイントではカラーになる。(例えば、おきくのピンクの頬が大アップで映し出されるシーン。)-
・長雨で貧乏長屋の肥溜めが氾濫するシーン。
ー あれは、嫌だなあ・・。おきく(黒木華)の”あれは私のではありません!”という台詞も可笑しい。
序でに言えば、汚穢を頭からぶっ掛けられるのだけは勘弁して欲しい。だが、“やすけ”はそんなことをされても、笑い飛ばすのである。逞しいなあ。-
・おきくの父(佐藤浩市)が、厠での”最後の”排便を”ちゅうじ”の脇で済ませるシーン。
ー 好きな女には、”大好きだ!と言って抱きしめればよい。”
うーん、お父さん。厠で言う台詞でしょうか?
だが、このシーンが後半に生きてくるのである。
詳細は描かれないが、おきくの父は勘定方でありながら不正を告発し、藩を追われたようである。そして、彼は刀を手に出掛ける。慌てて後を追うおきく。
父は切られ、おきくも喉笛を切られ声が出せなくなってしまうのである。-
・そんな中、長屋の皆が心配してもおきくは臥せったまま。だが、”ちゅうじ”が夜にやってきて紙を恥ずかしそうにおきくに渡す姿。(勿論、厠の紙ではない・・。ホントスイマセン。)
ー おきくは紙に”ちゅうじ”と書いて、恥ずかし気に笑いながら仰向けに手足をバタバタさせる姿。凄く可愛い。惚れたな!-
・そして、おきくは痩せていく”ちゅうじ”の身を案じ、父にも作らなかった味噌入りのおむすびを作るのだが・・。
ー そして、おきくは起きた顛末を”ちゅうじ”に身振り手振りで伝える。そんなおきくを”ちゅうじ”は自分の匂いを気にしながらも、強く抱きしめるのである。ー
<今作は、随所で語られる”人間は貴賤に関わらず食ったら出す。”という当たり前のことを前提に、当時余り知られていなかった”せかい”という概念を掲げながら、貧しくも逞しく生きる庶民の姿や恋を描いた作品なのである。
素敵な風合を醸し出している作品でもある。>
壮絶なエピソードもあるけど、話はたんたんと。
安政、万延、文久という年号が出てくる。後数年もすると時代は明治に変わるそんな時代。
武士の娘として生まれたが、長屋で貧しい暮らしを送るおきく、汚穢やという最低辺の仕事をしながら(実際、ばかにされるエピソードも数々)生活を送る二人の若者、彼らは誰かを恨むこともなく、明るく助け合いながら真面目に生きている。あまりにも酷い状況には敢えて笑ってやり過ごす(おやじギャグ言って、コレ笑うトコなんですけど、なんてネ)。矢亮クン、ボクも笑わせてもらった。ホントに良い奴なんだ、彼らは。そしておきくと汚穢やの若者の一人中次との間に生まれる淡い恋。
彼らだけでなく人々の生活はあまりに貧しい。それでも現代の人々と心の奥底にあるものは変わらないんだろうな。そんなことを考えながら観ました。
主人公の3人がとても愛おしくなる
江戸時代の底辺で生きる3人の若者の日常が淡々と描かれる。おきくが喉を切られて声を失う以外、大きな出来事は何も起こらないが、3人の喜怒哀楽の様子を観ているうちに、彼らと彼女がとても愛おしく感じられるようになる。
なかでも、古風な顔立ちの黒木華は、時代劇にピッタリとはまっていて、日本人の原初的な美しさを体現しているかのようだった。
そうした古風な趣きは、スタンダードサイズの白黒の画面からも感じられるのだが、頻繁に出てくる糞尿の描写を見るにつけ、白黒で良かったとも思ってしまった。
また、各章の最後を締めくくるように映し出されるカラーの場面も印象的なのだが、最後の2章だけ、カラーにならなかったのは、何か意味があるのだろうか?特に、おきくと中次が抱き合う雪のシーンこそ、カラーで観たかったと思えるのである。
終盤、淡々とした物語に、どのような形で決着を付けるのだろうかと期待していたが、それをはぐらかすかのようなエンディングには、やはり物足りなさを感じざるを得ない。
ただ、その一方で、「いいものを観た」という後味の良さは確かに残った。
ストーリー、演者、モノクロの良さが冴える作品だが、、
昨日封切り、第52回ロッテルダム国際映画祭ビッグスクリーンコンペティション部門ワールドプレミアとなった作品を観賞。
激動の江戸末期の安政年間、汲み取りを商いとする汚穢屋の若者、元武家の娘の人間模様を、庶民が暮らす貧乏長屋を中心に、基本モノクロで描く。
主演の黒木華をはじめ、男優陣が好演。石橋蓮司、佐藤浩市、真木蔵人らのバイプレーヤーがいい仕事をしており、ぬくもりを感じる映画。
モノクロならでは美しい映像を存分に味わえるのだが、モノクロをカラー映像に切り替えるシーンがごく僅かにある。その演出は少し不思議に感じた。
エンディング近くに出てくる台詞は「青春」。でも、青春ドラマとして締め括って欲しくなかった作品。
いとおしい、愛おしい作品。
なにこれ何この映画、嘘でしょ超面白いんですけど…。うっそだあ、マジか、うーわっ、ってぐらい面白く、そして素敵な映画だったんだよ。小田和正のかの有名な名曲タイトルぐらい語彙力がもう…。この映画の世界観やストーリーを上手く説明が出来ないや。
江戸時代末期、貧乏な生活をしている若者達の、リアルな暮らし・世界を描いている、決してきれいではないけれど、だけど本当に青春がここにあるなあと強く感じられる作品。私は、知識が乏しいせいか、時代劇や洋画は文化を理解したりするのに時間がかかって心にすんなりとは入ってこない為敬遠しがちなのだが、そんな時代劇や洋画でも、たまに私の心にいとも簡単に侵入してくるものもある。それは、ひとなつこい後輩のように、すんなりと人の懐に入ってくる。「せかいのおきく」もまさにそうだった。何故か…。こんなに苦しくて辛いのにな。おそらくだけど、ベースが、私の好きなジャンルでもある、庶民の生活をリアル且つ少しコミカルに描いてくれてるから。(本当は今の時代からは想像出来ないような面倒くさいことやむず痒いほど苦しい生活を描いているんだけど、程よいコミカル具合が面白く心地良い笑いを誘ってくれる。) そして、面白い映画を形成する上で欠かせない条件のNo.1か2に入ると思うぐらい重要でもある、「登場人物が魅力的でいとおしい存在」であること、ってところがばっちり過ぎた◎いとおしさ100の人達がそこにいた。
黒木華、池松壮亮、寛一郎…(字余り…)。彼ら全員最高だった。彼らの良いところむっちゃ出てた。濃縮還元ありがとう。この人達でしか出来ない、作れない人物・キャラクターでした。(関係無いけど、黒木華に興味ない人でも絶対黒木華を好きになるマイリストとして、「幕が上がる」「甘いお酒でうがい」「デザイナー渋井直人の休日」があるけど、「せかいのおきく」も今日から入れちゃう。) 寛一郎も役にはまり過ぎてて、とても良かった◎ 池松壮亮も、これこれ〜!この池松君が見たかった、会いたかったんよ…!と言わんばかりの良さよ。矢亮というキャラクター、とても良かったね。割と三度の飯より親父ギャグに夢中さ♪な私のギャグ欲を満たしてくれる、もっと欲しさせてくれるぐらいこまめにギャグを差し込んでくれる矢亮は、今の会社で働く上で私が一番欲している人材かもとか思った。人事部なら即採用。好きだった。人ってどんなに辛くても、笑いに変えるユーモアがある人ほどどんな境遇でも実は一番幸せに暮らせるコツを掴んだ数少ない人なんではとまで思っちゃった。(言い過ぎか、平和ボケしてるだけだね私は。すみません)
話を戻して…。冒頭で3人がはち合わすシーンとか、場所が場所な癖に、一発で観客のハート鷲掴みだもんなあ。話が、1秒1秒と進む度に、この作品の虜になってく感覚になる。出てくる人達みんなを好きになっていくと同時に、映画がもっと好きになる。あとあと、魅力的なこのキャラクターや世界観、この感じ何かに似てると思ったけど、「この世界の片隅に」を観てる時の多幸感を思い出して…。観終わった後映画館の壁に貼ってあるポスターを見つけて写真をカシャカシャ撮ってたら、この世界の〜の著者のこうの史代さんの感想コメントと、こうのさんが描いた絵がポスターにあるの見てまた興奮した。こうのさんが描いたおきくの絵も、この映画を観たけどどう感想を伝えて良いか分からない私の心を代弁してくれたようにも感じたのだよ…こんな事ってあるんだね。(←「代弁してくれたように〜」ってところを、劇中の池松壮亮演じる矢亮じゃないけど今笑うところだぜと言いたい〜言いたい〜笑。)
映画を観てる時は悲しい・切ない・嬉しいの涙が何度か流れたけど、観終わった後、幸せな思い出し涙が流れて、そのタイミングでのこうのさんの絵が見れて、感無量過ぎた。阪本順治監督よ…グッジョブ人間過ぎますぜ。ありがとう。
劇場にいた人達と一言だけ会話して良いなら、今日という金曜日の勝者は私達だったんだ、って言いたかった。幸せ。
幕末サスティナビリティ
モノクロ映像である理由は、うんこがたくさん映るから?そう勘繰りたくなるほど、うんこの描写がたくさんある。でも、しっかりカラーのうんこも出てくる。
主要キャラの職業が汚穢(おわい)屋なのでそうなるのだが、何故わざわざそういう設定にしたかというと、本作が「YOIHI PROJECT」の映画作品第一弾だからだ。
このプロジェクトの主旨は、「気鋭の日本映画製作チームと世界の自然科学研究者が協力して、様々な現代の『良い日』に生きる人間の物語を創り、『映画』で伝えていく」「地球環境を守るために考えたい課題を誰もが共感できる物語として描」くことだそうだ(「YOIHI PROJECT」ホームページより)。他にも、ドキュメンタリー映画や絵本などを世に送り出している。
おきくの受難とかわいい恋物語は、こういったプロジェクトのテーマをエンタメに昇華するための溶媒のようなものなのだろう。
ただ、設定上仕方ないもののちょっとうんこ描写が多すぎるので、人によっては嫌悪感が強いかもしれない。
ちなみにあのうんこの材料は主にダンボールで、場面によってはお麩を入れたり、廃棄される予定だった食材を入れたりしたそうだ。
鑑賞中はそんなことを知らず、おきくのドラマという単純な理解で観ていたが、それでも映像を追っていると確かに当時がその時代なりの循環型社会だったことがよくわかる。排泄物を、代金を払って回収し川で運び、肥料として売る。中次の最初の生業として、古紙回収の仕事も出てきた。
しかし、循環させることは素晴らしいのだが、やはり当時の仕組みは大変だ。裕福な家はいざ知らず、長屋のような住まいのトイレは、ちょっと激しい雨が降ればたちまちあふれてしまう。汚穢屋が排泄物を運べば当然道すがら臭う。不衛生になることが多く、健康に悪い。現代に生きる人間としては、改めて水洗トイレの偉大さを思う、といった感じである。
だが、当時の汚穢屋はいわゆるエッセンシャルワーカーだ。矢亮が言っていたように、人々の生活は彼らがいなければ成り立たない。欠かせない職なのに、実入りも社会的立場も恵まれない。そういった傾向は、現代にも残っている気がする。
おきくの物語に目を移すと、受難の場面は非情だが、その場面以外は全体にほっこり感が漂う。声を失った後も、悲しみや重苦しさに支配され続けるわけではない。
彼女の父親である源兵衛を佐藤浩市が、中次を実の息子の寛一郎が演じていることで、おきくは中次に父親の面影を見たのかもしれないというニュアンスも感じられる。あらためて、寛一郎は父親によく似ているな、と思った。
黒木華は時代劇がよく似合う。くっきりと派手な美しさではなく、日本の美人画に描かれるようなシンプルで凛とした美しさが、モノクロの画面によく映えていた。
ところで、最後に矢亮がしきりと「青春だなあ」と言っていたが、青春という単語が現代のような意味合いで使われ出したのは明治時代後期だと言われる。だから矢亮の言い方を聞いて少し不思議な気分になったのだが、脚本はあえてそうしたのではないかと勝手に想像している。
中次と矢亮、おきくが体験した喜怒哀楽は、私たちが現代に生きて感じているものと変わらないのだということ。その共感の橋渡しとして、現代的な言い回しを一言入れたのではないかと解釈した。
江戸時代が循環型社会
であるのは歴史を学んでいれば大多数の方はご存知かと思いますが、昨今SDGsエスディジーズと叫んでいる方達はまさか江戸時代に戻れ、と思っている分けもないだろう。だが、かの時代は人々の労働単価がひどく低いから成り立っていた側面もあろう。身分制度による差別もその中に大きくあるが、それを踏まえての映画なのだろうが。
そんな事はともかく、映画の中身。
汲み取り式のトイレが周りにあった人となかった世代の人では、この映画の印象が違うだろう。
「目が沁みる」など、最たるものだろう。
白黒で私はよかった。カラーになる一瞬の情景を見ると、あの映像をずっとでは話が頭に入ってこない。
黒木さん一人の場面でのカラーは実によかった。素敵な着物姿。
男だけの場面は自分的にはいらない。入れるのなら、雪が降ってきてまわりに積もるまでの下りをカラーにして欲しかったかな。
おきくさんもはじめは、おわいやに偏見があり、言葉にも表れていたが、イケメン?には別なのかな?
自分に起きた事件の後は和尚の訪問の後変わったようですが。
恋しい人の名前を書いて転がって喜ぶ姿は可愛い。
90分と短い時間なので描き込まれていない部分がたくさんあるようで、残念です。
最後の山の中の散歩?いる?晴々とした三人の心象を表すためなのか?ようわかりません。
モノクロ映像の中に、ほんのり微かな色の見える素敵な物語。
まるで短編小説のページをめくるような映画。
やはり黒木華さんの存在は大きい。
特に「秀逸だな」と思ったのは
戸口で好きな人の去る音を聞く表情と
好きな人の名を書き、ひとり悶えるところ。
おきくの心の内が分かる2つのカットは
さすがだな、と思った。
一方で「もの足りない」と感じたのは、おきくという人物を知る上で、何故あの人に惚れたのか、絶望から抜け出せた決定的な光は、などの答えは伝わらず…最後まで見えずじまい。あえてなのか?普段のおきくや、恋する娘としての姿は薄い。一方、同じ毎日を繰り返す若者二人のシーンは妙に長く、仕事や衣装以外の、言葉遣いや立ち姿は長屋の人々とほぼ同じに等しい。今の人に分かりやすい方法をとったのかもしれないが、人の内面から滲み出る卑屈さは見えなかった。身分違いの辛さ、想いの深さを感じられないまま迎えた「雪の場面」は非常に弱く、シーンとしては素敵だが心は動かなかった。
表現の問題か…勿体無い。
星は3.8のつもり
いい映画ではあった。
※
素晴しきおきくの世界
世界一清潔で快適といわれる日本のトイレにもああいう時代があったのだ。
白黒とはいえ汚物はリアルっぽいので潔癖性の人は食後の鑑賞をお勧めします。
あんな仕事でも誇りを持って頑張れは「おきく」のような美人で器量の良い娘に好かれるのだ。
あの和尚さん、地球は丸いって知ってたんだな。
モノクロで正解
カラーだとちょっとショボい映像になると思う。名カメラマンだから、白黒で撮っても綺麗なトーンだし。
演出は単調で、初めから最後まで内容が読めちゃう。
不慮のアクシデントで首を斬られて、声が出なくなった設定は秀逸で、黒木華も最高だった。
ただ最近流行りのSDGsは如何なテーマなのかとマイナス点
生き抜くエネルギーに満ち溢れた「せかい」
世の道理を貫いた父、重傷を負っても新しい生き方を模索するおきく、仕事柄蔑まれながらも夢や前進をあきらめない汚穢屋コンビ、一癖も二癖もある長屋の面々など、愚痴りながらも厳しい暮らしを前向きに生き抜こうとする市井の人々の活力が眩しい作品だった。登場人物達の、ポジティブ過ぎない、少しずつ地道に前に進み続ける姿が非常に良かった。
おきくの成長を、強気で気位の高いツンツンの顔、負傷してふさぎ込む顔、新しい生活に馴染み大人になっていく顔、恋する乙女の顔…様々な表情を通して表現した黒木華さんの繊細な演技が光っていた。
だからこそ、いきなりおきくが恋をするところから始まるのが勿体ないとも感じた。きっと黒木さんならツンツン娘がじわじわときめいていく様子を表現してくれたのではないだろうか。
全122件中、101~120件目を表示