せかいのおきくのレビュー・感想・評価
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サスティナブルな時代のサスティナブルな人々
現代の次に江戸が良い。いつ死ぬかどうかわからないが。故に懸命さが伝わってくる。また、自分の周りの最低限なもので事足りようとさせる潔さも良い。言葉がなくても思いが通じあった場面も素晴らしかった。青春だなぁ
静かに、じんわりした良さ
大きな事件も起こりますが、どちらかというと身近な心境の変化に寄り添って描かれていて、ちょっとした出来事や心の動きに涙したり、ほっこりしました。
ボロボロの長屋の造りやさりげない江戸時代の生活や風景がモノクロの映像と合わさり、リアルにも見えるのに、美しく思えました。
中次(寛一郎)と矢亮(池松壮亮)の「下肥買い」の仕事も興味深かったです。以前から肥料になるのは知ってましたが、江戸の町のうんこを買い、運び、農家に売る「下肥買い」や、どんな様子かは知りませんでした。
江戸の肥溜め事情など、ややコミカルに描かれています。
黒木華さんは現代でも時代劇でも聖域のような透明感で、おきくの柔らかなのに凛とした姿に中次同様 惹きつけられました。
まだほとんど日本人が“せかい”を知らなかった時代、若者達の未来を彷彿とさせる爽やかなラストも良かったです。
まみれる
「放課後アングラーライフ」を見てからエヴァの舞台を見に行くまでの間にちょうど時間が良かったので気になっていたこれを鑑賞。池松壮亮出まくりね。
「まみれるという言葉、ほかにはあまり使わないなあ」とか考えるほどに、まみれる映画。白黒画面にかなり助けられた。チラシをこうの史代が書いているが、まさに「この世界の片隅に」を思わせる、起承転結もない短編の連続が心地よい。佐藤浩市と寛一郎の共演シーンも深みがあって良かった。
ただねえ。また余計なことを書いてしまうのだが、白黒で薄められてはいるが、衣服にはかなりの汚れや匂いがついているはずで、映画の中でも複数の場面で肥溜めや肥桶、仲買人の二人が臭いことはたくさん描かれているわけで、たとえおきく側に好意があろうと、あんなに普通に寄っていき服や顔に触れたりするのは不自然に感じた私だ。
まあまあだった
モノクロ映像の時代劇で、糞尿を汲んで運んで商売をする若者を描くチャレンジングな内容だ。しかし、江戸時代は差別がまかり通る階級社会で、彼らが蔑まれる描写はあるのだけど、長屋で暮らしていて、それほどひどくない。別に史実を描いているとうたっているわけではないから、気にするのが間違っているのかもしれないけど、本当はちがうのではないかと疑問が生じる。『カムイ伝』で読んだ被差別者はそれこそ人間扱いされていなくて、こんなものではなかった。そんなことに、現代的な価値基準を感じる。
江戸の長屋の普通の1日。
よくヨーロッパの映画で淡々と農民や、街の若者描いてる作品ありますがそれの江戸末期版です。
小さな喜びと笑い、悲しさと怒り。社会の格差、死、愛、ウンコ、貧困、、そんななか雑草のように力強く生きる若者のフツーの日々です。
何か大きなドラマ期待してはいけません。
貴方の日常のようになんとなくだらだら続くのです。
名作とは思わなかったけど勇ましい映画より好きです。
昔はこんなドラマ沢山あった、、天下堂々、御宿かわせみ、ぶらり信平道場破り、てなもんや三度笠、、、、。
黒木華の凄さ。
男性陣は少し濃いかなと思った。
質感、リアリティ、うんこ緩和、モノクロは正解だと思うが、たまにカラーになる意味あるのかなぁ?
ウンコがウンコである事を思い出させるためだろうか?
佐藤浩市ここに極めり!!
すみません。
藤枝梅安でも思ったのですが、佐藤浩市の死に演技が私の人生に於いて最高&凄すぎ!!
本当にリアル過ぎる!
本作は時代劇という事で、(イコール白黒だろうが関係なしと思い)先日観て来ました。
昭和の作品では表現されていましたが、今の時代作品では稀有な、江戸時代のリアルに寄り添った作品でした。(現代っ子に是非見て欲しいです。昔の作品には、賎民などの特殊な職業を絶妙に登場させていたのですが、平成以降は忖度され、登場が少ないので)
後は、俳優陣が全て素晴らしい!!寛一郎氏の今後に期待!
違和感があるなら、首のキズは、斬りではなく“差し”にした方がリアルだったかなと笑
是非、時代劇ファンの方はご覧になって下さいませ!!
ひどい仕打ちを受ける場面では、変身すればよかったのにね(みんな、思ったかもしれないけど…)
良かった。
わざわざ観に行ってきて良かった。
モノクロの画面が映し出されて…
あぁこういう画面・映像が観たかったんだなぁと実感しながら観た。白黒の映像がとても美しく、忘れていた記憶がしっかり蘇った感じ。迫力があった。画面が隅々まで美しく映えていた。
色なんていらないのかも……。
色情報ってどういう意味があるんだろう…。
などと考えを巡らせながら観ていた。
なんて思っていたら…(まるで、「CODA」の逆バージョンでしょ! ずるい!)。
俳優さん、みんな良かった。
涙が出てくるほど。
寛一郎とお父さんの初共演、初のからみ場面も一見の価値あります。
むかし、「ふぞろいの林檎たち」というドラマの中で、
『俺は将来、「くみとり屋」になりたいんだ』
「なんで…?」
『くみとり屋って、職業が職業だから、逆に自宅は塵一つ落としてないぐらい綺麗にしているんだって…』
なんていうやり取りが、確か、あった(時任三郎さんと手塚理美さんの台詞)。
このやり取りを思い出した。
池松壮亮さんと寛一郎さんの心根はよっぽど純粋で一途で綺麗だった。
〝おきくさんには役割りがあってね〟
冒頭、雨宿りのシーンの雰囲気からじわりと大好きだ。
巧みなセリフまわしに安心して笑わせてもらっていると現れる衝撃カラー。
時々それに襲われながらも、独特なモノクロの世界に没入していく。
味わうは、あの時代の空気感。
それは、う○○のリアル感を超え…。
いくつかは記憶をたぐりよせ、あとは先祖のDNAを目覚めさせる刺激?で、現代となっては、ほとんど異国の旅的でもある描写に心掴まれていくのだ。
…………
草をかきわけ原っぱを割るでこぼこ一本道。
つぎはぎに大事さがみえる着物。
畝の上で柄杓を返す働く手。
肥溜めを覆う茅葺きひさしの斜め具合。
元武家の気高さが残る親子の物腰。
廁で閃く運命の第六感。
最後の瞬間まで貫く親心。
櫂と舟が編む静かな波紋。
位牌も転ぶときめきよう。
誰かのために握る炊きたての飯。
声がなくても字が書けなくても渡したい想い。
しずかな雪の細道で伝わる温度。
兄弟のように慕える巡り合い。
見放さない人々のつながり。
いつか眩しく振り返る時間。
…………
そこには、自分が置かれた立場を前を向いてすすむ人たちの姿が確かに息づいていた。
それをじっと眺めていると、今を精一杯生きる力の頼もしさがひしひしと押し寄せ、やがて愛おしさのようなものに変わり熱く込み上げてくる。
コミカルに始まる物語は調を変えていく。
どちらかといえば悲しいこと、情けないこと、辛いこと、苦しいことがたくさん起きる。
そこに脈打つように矢亮が放つ大切な存在感。
この飄々として大胆で絶妙に優しい男の器用な言動がカラリと明るく澄み渡る。
それがたいへん心地よく話の軸を支えながらいてくれるからだ。
さりげなくいつも思い遣ってくれる誰かを、私のように恋しく思い出してしまった人もいるのではないだろうか。
そして、レビューのタイトルに絶対使いたいと思ったのは〝説法は苦手で団子が好きだという僧侶・孝順が、傷心のおきくを訪ねたときの短い言葉だ。
そのどっしりと胸に沈む意味は、長い説法以上に忘れ得ぬ効果をみせてきた。
そして、生きるということをみつめる一作になるかもしれない予感とともに幕がおりた。
おすすめしたい作品です。
修正済み
運は寝て待て
結構な人混みの中鑑賞。なぜ白黒映画なんだろう…?と思っていましたが、関連商品を見てあーなるほどと思いました。確かにこれは白黒じゃないといけんなぁと。
基本的に本編白黒で進んでいきますが、章ごとのラストにカラーになってうんこが映るという不思議な見せ方。確かにずっとカラーだと大変な絵面になりかねないので、この判断は正解だったと思います。
恋するおきくの様子がとても可愛らしかったです。バタバタする様子も、弁明する様子も、ポッとなるシーンも愛おしかったです。
特段何か残るものは個人的にはありませんでしたが、90分ほどの尺でサクッと時代をタイムスリップできる作品でした。
鑑賞日 5/5
鑑賞時間 10:00〜11:40
座席 E-1
リアル江戸
う〇この話で覚悟してたんですが、白黒が殆どなのとやはりおきくさんで薄まった感じ。
黒木華さんと言う役者さんは、特に美人でもないしスタイル抜群でもないけど(ごめん!)ほんとに上手いな~と思います。
う〇この話なのに、可愛い純愛映画みたいで良かったです。
生き抜く人々
江戸末期、閉塞感を感じつつ笑うことで生き抜く2人の男たちと、長屋で知り合う女性の物語。
下の処理のことを仕事とする男たち、その時々の喜怒哀楽を描き、争うことじゃなく笑うことで自身の置かれた環境に争うことと2人の淡い恋物語を描く。そこで生き抜く人々の姿がどこか愛おしくも感じた。
この時代だからこその2人の想いを時間を掛けて描いてて好感を持てた。
ただ章に分けて描く理由が観終わっても分からなかった。
あと食事前後にはあまりオススメしない作品でもある。
江戸の身分制度社会をきっちり描くべし
江戸末期の汚穢屋(おわいや)を主人公に据えた物語なのだが阪本監督がサービス精神が旺盛すぎるのか実験映画のつもりなのかその糞尿を汲み取る描写がしかもアップであまりにも頻出して閉口する。これまで誰も描いていない時代劇、日本の「循環経済」が成立していた江戸時代を見直しましょうと言う狙いは分かるがそこまでとことん描いていただかなくても十分分かるのであってここまで見せられると悪ノリしているとしか思えない。改めて映画が嗅覚の無い視覚と聴覚だけのメディアであったことを思い起こさせてくれる。つまりアレは臭いさえなければ全く平気なのだ。しかし何故彼らはこれを生業としているのか?矢亮の台詞にも出て来るように江戸にはいくらでもしのぎはあるだろうにいい若者がこんな仕事を一生懸命やるなんて理解しづらくしかも銭を払って汲み取らせて頂くなんて!農家からも武家屋敷の下僕である奴からも蔑まれる存在の汚穢屋はSDGsを言う前にその身分制度の観点からちゃんと描いてもらわねば理解できません。黒木華が上手い。
黒木華が消臭剤だ
令和の豪華なキャストがモノクロ映画の中で、まるで昭和初期の俳優のように見えてくる。
人間は食べたら出す生き物。
出したものが肥料になりそれでできた野菜を食らう。
クリーンな世の中になって、すっかり忘れていたことを突きつけられた。
私は感受性が強すぎて、スクリーンから臭うはずもない臭いがプンプン臭ってしまってちょっと辛かったけど、黒木華が出てくると臭いが消える。
アイドルはトイレになんて行かない!というのとちょっと近い感覚。
黒木華からは全く臭わないだけでなく周りの臭いまで消してしまう可憐さ満載!
そして、圧倒的な美しい文字に背筋が伸びる思いだ。昔の人はすごいな。
声が出なくなってからは、今とは違ってスマホも手話もなくコミュニケーションしづらい所を、ジェスチャーゲームのように手振リで思いを伝えるシーンが健気で可愛らしかった。
そして、池松壮亮は何やらせてもいいなあ。
宮本から君へ、シン仮面ライダーなど、池松壮亮が根性出している映画は全部好きだな。
職業に貴賎なし。どんな仕事でも今自分に出来る仕事を精一杯頑張ろうという気になった。
そして、時々空を見上げて遠いせかいに思いを馳せたくもなった。
底辺でも健気に生きていくのだ我々も。
藤沢周平の市井作品を連想させる映画。佳作。
鑑賞して損はないが、取り扱いの題材が人間の糞尿なので、鑑賞するには覚悟がいる。正直なところ、私は最後まで正視できなかった。途中で退席を考えたほどだ。
画面構図も正統で、脚本にユーモアもあって、監督の力量を感ずる。白黒映画なのにところどころ、カラーになる。演者の素直な感情を表現するときに、使用するみたいだ。そんな小細工をする必要は無いと思う。心をえぐるような作品ではないが、好感は持てる。
すばらしい「せかい」をつくりあげた
ほぼモノクロ、スタンダードサイズの地味な映画である。
しかし、なかなかに中身があり、見てよかった…、「映画」は満足のゆくものだった。
時代劇は数多あれども、幕末の下層民の生活をこうした形で描いたものは今までなかったのではないか。
こうした形――というのは、汚穢屋を主人公にしている、という点だ。
おそらく、汲み取りトイレのことを体験したことのない40代より下の世代にはこの映画のスクリーンから漂おうニオイは分からないだろう。
そこに生活があり、人がいる…というのがたいへんうまく描かれている。
映画作品には文句はない。
ただ、大いなる不満がある。
見終わって、パンフレットを買ったのだが、これが1部950円。
買う前に見せてもらえばよかったのだが、先に見ている人がいたので、確かめずに買ってしまった。
案の定…予想通りの買い損である。
僕の場合、シニア料金1200円とパンフレット代950円計2150円の出費だが、1200円だけなら満足がいったけれど、パンフは200円ほどの価値もない。
この映画に限らないが、映画パンフレットの9割方は中身が薄い。
今回のもそれが当てはまる。
レベルの低い映画ライターの駄文より、プロダクションノートを充実してほしい。
たとえば、今作のキモである、下肥をどうやって作ったのか。
その出来栄えを、監督、出演陣はどう受け止めたのか。
せっかくの「ウンコ」ものなのであるから、その点を、パンフでは格好つけずに一項目割いて書いてほしかった。パンフレットにはほんのわずかにそれが何から作られたかが書いてはあるが、それを知るためだけに950円を出したのではないのだ。
パンフ制作者の編集センスがないのだろう。編集はキネ旬でやっているようだが。
何十年も前から、映画パンフレットはほとんどコストをかけずにつまらないものばかり作られている。
配給元にクレームメールをしてやりたい。
せっかくの映画の価値が台無しだ。
伝えること
江戸時代にあった「未来に通じる循環型社会のモデル」と時代劇が企画の意図だったとのこと。
でも、SDGsというテーマと日本映画を結びつけて世界に発信する、という大きな言葉には違和感を感じる。役者の演技も映る景色も狭い世界を丁寧に描く。
プロデューサーの言葉によると若い三人キャスティングは「引き継いでくれる世代に演じてもらいたかった」から。石橋蓮司、佐藤浩一、この二人の重みと凄みを感じさせる演技。それがこの三人の役者にも伝わっていくのだと思う。
日本映画、時代劇、古くて新しいテーマ。モノクロと章毎にはさまれる美しいカラー映像。そこに広い「せかい」の扉の存在が感じられた。
見終わってからもゆっくりとこの映画の「せかい」について思い巡らせている。
美しい文字
意外なことに、映画館が満席だった。地味な作品だから人気ないかと思ってた。ちょっとうれしい誤算。
モノクロの映像が美しい。日本にまだこんな風景が残っていたなんて。空も川も雨も美しい。おきくの書く文字も美しい。タイトルロゴの文字も美しい。
トイレがあふれたら困るのに、それを汲みとってくれる人への、人々の態度。武家屋敷の門番なんて、むかつくわ。お前のクソが高いわけじゃないだろ。
あと数年したら、世の中ひっくり返り、おきくと中次の身分の差なんて関係なくなる。若者には未来がある。矢亮だって、がんばれば講談師になれる。3人の行く末に幸多かれと願う。
黒木華のくるくると変わる表情、ジタバタ、障子に耳をすませる姿、みんなかわいい。寛一郎の目、お父さんとそっくり。池松壮亮の筋肉にドキっとした。肉体労働者のリアルがあった。
ほんの150年前の暮らしは、こんな感じだったのだろう。庶民の生活を飾らずに描いた、野の花のような作品だった。
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