いつかの君にもわかることのレビュー・感想・評価
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死を題材にしつつも、その中に生や愛情が詰まっている
余命わずかのシングルファーザーが、この世に一人残される幼い息子のために”新しい親”を探し求める。そう書くと涙なしでは観れない感動モノに思えるが、しかし本作にはこの手のジャンルの定番ともいえる感傷的な音楽や叙情的な演出などの余計な雑味がない。その点、構造的には至極シンプルではあるものの、だからこそカメラは一本一秒を無駄にせず、父親として最期の役目を果たそうとする切実な思いを、これほど丁寧かつ冷静に刻み得ているのだろう。『おみおくりの作法』のパゾリーニ監督らしい視点は今回も健在で、行政サービスや制度を絡めながら、人が避けては通れない死というものをしっかりと見つめる。その探求と考察はいつしか、死を透過して”生や日常を見つめること”にも繋がっていくかのよう。ちなみに父親は窓拭き職人。窓の曇りや汚れを丁寧に除去し、窓を介して人々の暮らしや人生を俯瞰する姿から、彼の心のありようが痛いほど伝わってきた。
宝物
子供のために
里親を探して・・・‼️
タイトルなし
親愛なるマイケルへ
久しぶりだなマイケル、運転免許試験合格おめでとう、パパのこと覚えておいてくれたかな。部屋の窓の外からいつもマイケルのことを見守っているよ、と言いたいところだけど正直なところどうなるか、死んだ後のことだからパパにもよく分からないんだ。🕯️に🎈、そして🥚に🍇。全部魂や命のメタファーだなんて、幼いお前にはきっと分からなかったのかもしれないな。仕事でいろんな人の家の窓を磨いて来たけれど、いつもマイケルお前が将来お世話になる家を、窓の中を覗きながら探していたような気がするよ。お前は多分知らないけれど、白壁の上に付いた長方形の小さな窓だけはどうしても磨けなかったんだよ。あの時、このまま死んでお前に2度と会えなくなるような気がしたのさ。狭き門に導かれているみたいでさ。里親と肉親の面会は本当は禁止されているんだけれど、もうすぐ死ぬことがわかっていたパパの場合は特別に、お前と一緒にいろんな里親さんの家を回らせてもらったよな。そこでパパが気にかけていたのは、いつもお前が新しいママとパパのことを気に入るかどうかってことだけだったのさ。でもなマイケル、お前に買ってあげたオモチャの黄色いトラック、覚えているかな。すっかり綺麗になっているのにその荷台をいつまでもいつまでも風呂場で洗っていただろ。だから分かったのさ、飴玉を石の代わりに荷台に載せて遊んでくれた彼女のことが、とても気に入っていたってこと。また彼女に遊んで欲しかったんだろ。お前を置いてロシアに帰ってしまったママにどこか似ていたかもしれないな、マイケル。彼女のことをちゃんとママと呼んでいるよな、お前が望んだ彼女なんだから。
愛情
切ない、父と子の物語
2本立て2本目。泣かされる予定だったが私的には期待ハズレ、全く泣け...
重いテーマの筈なのだが
多くを描かず、多くを伝える。
主人公のジョンは仕事の窓拭きをしながら、見つめる。
色んな人の生活や人生の欠片を。
(それはもうジョンには手に入らない)
33歳で死を宣告されたらジョンのように、
たった4歳のマイケルの里親を探せるだろうか?
マイケルはいつか大きくなった日に
父親と里親探しをした日々を少しは記憶に残すだろうか?
説明も最小限。
会話も最小限。
たった95分の中に父親の息子への思いが、ありったけ詰まっている。
マイケルが愛おしい。
(こんな愛おしい生きものを残して逝きたくない!!)
“おうちがいい”
“ママはどこ?”
“ようし“って何?
“死ぬとどうなるの?“
マイケルが小さな胸を痛める事柄。
答えるのがとても難しい。
大人になったって、“死の意味“なんか分からない。
マイケルにジョンが遺せるのは、新しい家族だけ。
自分の眼で選んだ最良で最上の里親。
やはり、あの人でしたね。
その人には“愛“が一番感じられたから・・・。
【”思い出ボックス”今作は、一人の若き余命僅かな窓拭き清掃人の男が、幼き息子の為に懸命に彼を幸せにしてくれるであろう”家族”を探す、父としての善性溢れる姿を描いた作品である。】
ー 今作では、幼き息子マイケルを一人で育てるジョン(ジェームズ・ノートン)の病名は明らかにはされない。
だが、今作を観ているとジョンが衰弱していく様が幾つかのシーンで描かれる。ー
■窓拭き清掃員として働く33歳のジョンは若くして不治の病を患い、残された余命はあとわずか。
シングルファーザーとして幼きマイケルを育ててきた彼は、養子縁組の手続きを行い、息子の“新しい親”を探し始める。
理想の家族を求め、何組も面会をするがマイケルは中々理想と思える家族には会えない。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・ジョンの腕や首には刺青が有る。そして、彼が言うように4歳までは父親と暮らしていたが、その後は施設や里親の下で暮らしていた事が観る側に伝えられる。
ー ジョンがマイケルを自分のようにしたくない、という想いが伝わって来るのである。ー
・ジョンはマイケルを連れ、様々な里親候補と出会う。
1.裕福な若夫婦
2.何人かの養子を引き取って育てている夫婦
3.若い時に妊娠し、中絶したが故に子供が出来なくなった独り身の女性(夫はいたが自分の子でないと嫌だと言って別れている。)
4.赤ちゃんが来ると思っていたセレブなダブルインカム夫婦。(奥さんは子供を産む意思はない。)
ー 様々な里親候補と出会い、ジョンの迷いは深くなる。誰が、マイケルを幸せにしてくれるのか・・。-
・ジョンは窓拭きの際や何気ない時に、顔を顰め痛みに耐えている。
ー 身体の内部の病による痛み。そしてマイケルと永遠に別れなけばいけない心の痛み。ー
■切ないシーンが続くが、堪えながら観賞。
・公園で死んだ甲虫を突くマイケル。それを切なげに見つめるジョン。
・マイケルはストレートにジョンに問う。”ようしってなに?””いやだ!”
・ジョンの34歳の誕生日に作った型が崩れたケーキに、34本の赤い蝋燭を立てていくマイケルの姿。そして、35本目はジョンの指に握られている・・。
・ジョンが”思い出ボックス”に入れたモノ。
それは”君が免許を取った日に・・”と書かれたマイケルが成長する過程で読んで貰う多くの赤い手紙や、ジョン達を置いて居なくなった露西亜人の母親の写真と手袋。
マイケルの好きなトラック。そしてジョンの窓拭きモップ・・。
<そして、ジョンがマイケルを連れて行った新しい家族。それは、子供が出来なくなった独り身の女性だった。
マイケルが呼び鈴を押し、出て来た女性はマイケルの顔を見て優しき笑顔を浮かべ言う。
”又、会えて嬉しいわ。マイケル。”
ベストな選択であると思う。
ジョンのマイケルを想う気持ちが伝わって来るシーンであり、マイケルも納得しているのだろうと思うシーンでもある。
そしてラスト、マイケルがつぶらな瞳でジョンを見上げる所で物語は終わるのである。
今作は、一人の若き余命僅かな男が、幼き息子の為に懸命に彼を幸せにしてくれるであろう”家族”を探す父としての善性溢れる姿を描いた作品である。>
■今作は、映画館で鑑賞する筈が物理的に厳しかった作品である。
が、矢張り足を運ぶべきであった・・。
切なくも温かい
希望
二度と帰ってこない"かけがいのない今"という時間
自分の短い余命を知ったシングルファーザーが、4歳の幼い息子を委ねられる人、家庭を見つけるために奔走する話。養子を希望する家庭にもいろいろある。未熟者のジョンから見ても心配になるような問題点が多々あるのだ。だから自分の息子を託して大丈夫?となる。マイケルのことを真剣に考えれば考えるほど決められなくなる。
シングルファーザーのジョン自身、恵まれない生い立ちで、里親のもとで育ったのだ。そのジョンが出した結論は?
息子を愛し、将来を案じるジョンの思いは痛いほどわかる。その思いは必ずマイケルにも届くに違いない。父と過ごした時を"かけがいのない時間"として懐かしく思い出すだろう。
悲劇的な状況をことさら強調し涙を誘うような映画ではない。家族とは何か、そして家庭とは何なのかを考えさせてくれる映画である。
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