コペンハーゲンに山を : 映画評論・批評
2023年1月10日更新
2023年1月14日よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー
建築界のイーロン・マスクが手がける超未来志向の建造物
この映画を見て、「いつか絶対にここに行こう」と強く決心しました。デンマーク、コペンハーゲンにある「コペンヒル」です。ゴミ処理施設兼発電所とスキー場が一体となった、極めて珍しい建築物です。「本当にそんなモノが作れるのか?」と疑問に思いましたが、2019年に完成して稼働しています。
その尋常ならざるコンセプトを思いついたのは、ビャルケ・インゲルス。その名前を見て「ああ、なるほど」ってなりました。彼は「建築界のイーロン・マスク」とでも言うべき存在で、一見、奇抜に見えるんだけど、非常に未来的で合理的な建築を次々に作ってきた天才建築家です。しかもまだ40代。デンマークのLEGOハウスや、マウンテンビューのグーグル本社、日本でも、トヨタが静岡に作るウーブンシティを手がけています。
ですから、「ビャルケ・インゲルスの建物作りに密着したドキュメンタリー」ってだけで十分に興行価値がある。「どうすりゃそんな建造物を思いつくんだ」「コンペで満場一致で決定ってどんだけ人気者なんだ」「とは言え相当複雑なプロジェクトだから資金面で妥協しなきゃならないところもあるよね」などなど、山あり谷ありで相当楽しめます。
BGMがクラシック音楽なせいもあってか、けっこうニュートラルなトーン&マナーで、カタルシスは押さえ気味。もうちょっと盛り上げてもいいのにって思います。あと、上映時間が57分で、若干の物足りなさも覚えます。そしたら、NETFLIXの「アート・オブ・デザイン」というシリーズに、インゲルスをフィーチャーした一編があったので、すかさずそちらも鑑賞してお腹いっぱいに。今度ヨーロッパに行ったら、絶対コペンヒルに行こう、それ以外にも、インゲルス建築を巡るツアーをやろうと固く決意しました。
もしも、イーロン・マスクが火星に移住したら、その住まいを作るのはビョルケ・インゲルスで間違いありません。この映画をきっかけにちょっとネットで検索した結果、そう確信しました。
(駒井尚文)