怪物のレビュー・感想・評価
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当事者から観た怪物とは
将来に立ちはだかる漠然とした不安、人権意識のない親の優しさ、社会からの価値観の押し付け、初めて感じる衝撃と社会の枠から外れる恐怖、逃げ場のない絶望、、全てが怪物です。
その中で成長していく(いけなかった)物語なのではないでしょうか。
理不尽と嘘
映画の中で様々な問題が起きる。そしてその問題に対する
受け止め方が人によって違う。確かなことは悪いことをする
人間と嘘をつく人間がいてそのとばっちりで災難に遭う人が
存在することだ。映画ではそんな理不尽なことが描かれる。
誰が悪いのか?誰が嘘をついているのか?本当の被害者は?
映画の終盤まで種明かしがないのだけれど伏線を張って徐々に
核心に近づいて行く。立場が違う登場人物それぞれの事情と
伏線とが絡まって構成される上手い脚本だった。
人によって主張が違うとき、何を信じたら良いか分からなくなる。
自分にとって都合の良いことしか言わない人がいるからだ。
映画はフィクションだけれど、現実世界でもよくある話。
巷に流れるニュースを見ていても、どちらか一方の主張だけを
広めようとしたり、言葉の切り取りや印象操作によって
誰かが悪者に仕立て上げられていることもある。そんな
怖さも描かれていた。
2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の
脚本賞を受賞し、またLGBTやクィアを扱った映画を対象に
贈られるクィア・パルム賞も受賞しているとのこと。
海外の映画祭で絶賛というのを鵜呑みにはしない自分だが
自分の目で確かめて今回の作品については妥当だと思う。
良い映画と認めつつケチを付けるなら125分の上映時間は
もう少し詰められなかったのか?と思った。
ヒューマンドラマ×見事な伏線回収=坂本脚本の是枝監督作品
あんまりマメじゃないから、見た直後にレビュー書くこと少ないけど、これは。余韻が凄すぎて。
翌日だけど今も余韻ひたひたで、あのピアノのメロディーがループしてるし、スマホで怪物の記事とか動画ばっかり見てる。ここまでの映画久々な気がする。
なんというか、この感動を言葉にするの難しくて語彙力喪失してるけど、とにかく良かった。
ストーリーの最初何が起こってるのかよく分からず小学校のシーンは体罰といじめがテーマなのかな?みたいな感じで安易に見てたら、2章以降次々に伏線回収されていって、もう途中からはその見事さに圧倒されて見入ってた。
2人の少年が葛藤して立ち向かおうとする姿に心打たれたし、子役さんたちの表情がとにかく良くて。癒された。
カンヌでクィアパルム賞受賞されたって聞いて、どんな賞かを知ってしまってから多少テーマをネタバレされてた感はあったけど、それでも十分過ぎるほど心動かされた。
これ、まったく前情報なく見てたらもっと感動できた気がするな。でもまあ、見終わってみたら受賞も納得だった。
さて、映画見るまではと思って我慢してたシナリオブック買お。
「怪物だ~れだ!」
ユナイテッドシネマ浦和にて鑑賞。
映画館で観た予告編「怪物だ~れだ!」が気になっていたので、やはり観に行った。
この映画、やはり事前知識は入れないで観ることをお勧めしたい。
なので、レビューはちょっと行間を空けて記載。ネタバレは殆ど無しで…(笑)
是枝裕和監督作品なので、だいたい公開されると早めに観るが、今回はカンヌ映画祭で坂元裕二氏が脚本賞を受賞、今年3月に他界した坂本龍一氏が音楽担当なので、やはり注目度アップ。
息子を愛するシングルマザーの安藤サクラと息子のやりとりで、息子が「頭の中に豚の脳」とか変なことを言い出す。この安藤サクラが学校の教師(瑛太)への抗議に行くと校長の田中裕子が「原稿を読むようなセリフに終始」(笑)
個人的に、田中裕子は学生時代に観た『天城越え』や『男はつらいよ・花も嵐も寅次郎』で大好きになったので、舞台挨拶の出待ちをして田中裕子さん直筆サインをいただいた素敵な女優。
話がそれたが、本作はその後さまざまな出来事を描いて、意外な展開を見せる。
本作は、カンヌ映画祭でクィア・パルム賞も受賞したため、「また、そっち系の話もあるの?」は判ってしまって、ちょっとネタバレ的なのは残念…(^^;
やはり、安藤サクラの「モンスター親」も良かったが、感情を表に出さずに演技を貫いた感のある田中裕子が最高であった。
<映倫No.123363>
マスク派orノーマスク派
タイトルが怪物、
主人公は子ども。
想像するのは、
え?この子が怪物?
とか、
ミスリードの後の、
マジ?この人が怪物!
本作はいずれでもない、
というか、
いずれでもある。
昨今話題の、
マスク派orノーマスク派、
両方に巣食うモンスターが、
チラチラと現れる、、、
怪物って、、、のような事を背景に、
「ミスティック・リバー」のような事件から始まり、
「スタンド・バイ・ミー」、
「台風クラブ」、
のような制御が一見難しい怪物くんたちの気持ちと行動を、
ループ系(といっても、超能力や時空のゆがみ、車もジャンプも無い、羅生門という言い方もアプデしよう)で観せていく。
音楽よりも、
草木の揺れる音、
虫の鳴き声、
水のせせらぎが、
怪物くんたちの気持ちに共感するための増幅装置音になっていた。
観る前の想像していた印象とは全く異なる映画
ポスターやCMでは『怪物だ〜れだ?』と言うミスリードを促すような謳い文句が前面に出てたので、所謂ミステリー色が強い作品なのかと思い観に行きましたが、観終わった後の印象は観る前に想像していたものとは良い意味で全然違いました。
人間は自分が見た、聞いた、得た情報だけで、あたかも
それが間違いのない真実かのように、自分の中で、物語を作り上げ、思い込んでしまう。ある事象が球体であるならば、自分が見ている側面など、正面の側面だけで、決して、球体の裏側や左右上下の側面までは見えていないし、見る事は現実的に難しい。けれど、事象には必ず、自分が見えてない側面がある事を忘れてはならず、見えてない側面についても想像を働かせ、考え、見ようとする努力はしなければならない事を改めて教えてくれるような映画でした。
今、SNS等、見方や考え方を固定してしまうような切り抜き情報が垂れ流される時代で、それこそ、思い込みの不確実な事実がまぎれもない事実かのように拡散されてしまう世の中において、この映画はある種の警告のようにも受け取れました。
結末は明るい未来にも悲劇にも、観る人にとって様々な受け取り方が出来るような演出になっている点もとても良かったです。
『怪物』とは事象に付随する人の思い込みから肥大化した虚妄を指しているような気がしました。
2度、3度観る事でまた新たな気づきが出てきそうな映画なのでまた観たいと思います。
タイトルに
予備知識なくタイトルに興味があってみました。子供達側から見るとスタンドバイミーみたいな甘酸っぱい感じで良かったですが一方で先生側で見ると前半の安藤サクラとのやりとりと回想シーンでの事実関係だけで なんでそうなるのとモヤモヤしました。最後にもっと大きなドンデン返しを期待しましたが そのままでした。
教員のなり手がいなくなる
生煮えで未消化です。高評価なのが分からない。学校に勤務していたことがある者として、学校の描写が違和感しかない。校長室での台詞は教員と言うより政治家。パロディだと思ってずっと笑っていましたが、もし本当にパロディのつもりなら、子供という正義を振りかざして何でも学校に投げつけてくる政治とやり方は同じで、ずるいと思った。そして、校長が女性なのも違和感。権力にしがみつきその場をやり過ごそうとするのはむしろ男。あー腹立ってきた。星もう1つ減!
胸にくる
いじめにあった経験が少しあるので、テーマ的に胸が痛くなるが、やはり話題作ということで鑑賞。
子役の演技が、とてもナチュラルで素晴らしい。脚本も、観客の心を引き込むキャッチーさがある。
安藤サクラはやはりいい女優だ…。喜怒哀楽、彼女の演技に全部持っていかれてしまう。坂本龍一の曲も素晴らしい。
カンヌ受賞は伊達じゃなかった。
何度も繰り返し見るかと言われたら首を傾げるが、間違いなく今年トップクラスの名作だと思う。
マスコミが許可なく写真を撮るのは盗撮ではないのか
前作の『ベイビーブローカー』同様、予告編などから、少しミステリーやスリラー的な要素のある映画かと思っていたら、予想に反して切ない映画だった。
それぞれ異なる視点で全く見え方が違う。
彼らの生きる狭い世界はすごく残酷で理不尽。いろいろ分かった頃には、引っ込みつかない事もあったり。
各視点のモヤモヤを答え合わせのように整理するも、新たな理不尽に気づき、アイツが悪い、なんだコイツはと、なかなかスッキリしないけれど、ラストは美しくまとまったと思う。
是枝作品の中では一番好きかも。
人類みな怪物の素質はもっている
小学生の息子が担任からの暴言、虐待の疑いからシングルマザーと学校側の衝突から物語が始まる。一見すると学校側の素朴な対応に見えるのだが、あくまで本作での母親目線での描写。学校側内でも校長、疑われた担任、クラスのいじめっ子、同級生女子生徒など各視点から見れば怪物と見えてしまう。特に人間は思っていることと真逆の行動をとったりと常に環境とのストレスを立ち向かざるを得なくなっていると思う。個人的にグッときたセリフは校長先生の【誰かにしか手に入らないものは幸せとは言わない、誰にでも手に入るものを幸せというの】。学校という狭くも人の階層が複雑な環境で繰り広げられる各視点はとても面白かったです。
音楽と脚本と、監督と。
私はずっと是枝裕和監督の作品が好きです。
そして坂本龍一さんの音楽も好きで、坂本裕二さんのドラマも好きです。
その超一流の3人が一緒に作品を作られるという事で、ずっと公開を待ち望み、そしてまた、その才能がぶつかり合い混沌とした作品になってしまうのでは?と一抹の不安もよぎりました。
しかし映画の終演後、その3人のあまりにも美しい協奏に、震えが来るほどに感動しました。
坂本龍一さんのAquaやhibari、と言った楽曲が好きで、「怪物」という名の映画で、もしかして怖いシーンに使われたらどうしよう、などとも考えましたが、それはそれは美しいシーンでこれらの曲が流れ、私はより一層これらの曲が好きになりました。
そして俳優陣の演技も素晴らしく、特に子役の子達の演技は、さすがの是枝演出といったところなのか、あまりにも自然で、あまりにも秀逸でした。
坂本龍一さんの最後の映画作品としては、大変素晴らしい作品を遺されたと思います。
タイミング的に、坂本龍一さんが亡くなられた後だった事、台風が通り過ぎた翌日に観た事なども相まって、この映画に感情的な奥行きを感じました。私は心から、この映画を皆さまにおすすめいたします。
追伸
本作は「カンヌ」「是枝裕和」「坂本裕二」「坂本龍一」と言った、名前先行で観に行った方々を吹き飛ばすような、骨太で本物の作品でした。上映開始1秒前までずっとうるさくお喋りをしていたカップルの女性が、終演後にすっかり黙り込んでいたのには、なんだか不思議な爽快感がありました。
ひとつの視点からでは真実が解らない事を表現した作品。 本年度ベスト級。
小学校のイジメがテーマになってる感じ。
母親目線。先生目線。子供目線の3つの視線で進むストーリー。
この3つの目線が事実が明かされる感じはとても面白かった。
2人の子供の演技が自然でストーリーに引き込まれる中、大人のキャスト陣の安藤サクラさんはじめ、田中裕子さんや永山瑛大さんなども素晴らしい。
映画賞を取る作品って、やっぱり火事や大雨はお約束なのか?
気になりながらの鑑賞で、いまひとつ作品にのめり込めず(笑)
カンヌで脚本賞を受賞しているだけに素晴らしい内容だったけど、自分の心にはあまり刺さらず。
坂本龍一さんの音楽は本作にマッチしていた感じ。
ご冥福をお祈りします。
やっぱり自分はエンタメ性のある映画が好きなのかもしれません( ´∀`)
嵐の日に観ました
長野県の諏訪市らしい街の小学校で起こった子ども同士の喧嘩。被害者の母親の視点。担任の教師の視点。同じ場面でも全く意味が違って、最後の子ども視点による真実まで集中力を途切れさせることなく観入ってしまいました。
周囲の子供達は主人公の少年たちの関係性を見抜いていてある意味残酷。それゆえに二人がお互いにかけがえのない存在と感じていく過程が自然でした。
不幸な結末の子供たちも是枝裕和、坂元裕二、坂本龍一という日本を代表する芸術家の優しさで救いが描かれ、不覚にも涙ぐんでしまいました。
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