怪物のレビュー・感想・評価
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目に見える「常識」や「確からしさ」の脆弱さと、本質を見極める力
怪物とは
① あやしいもの。正体のわからない不思議なもの。また、特に力の強い大きな化け物。
② 性質や行動が普通の人とは非常に違っていて、正体のつかめない人物。
さて、本作における怪物とはいったい誰だったのだろうか?
是枝作品に共通する特徴は、現代社会に対する観客への問題提起と、それにより物事の本質に近づこうとするアプローチ。
旧態依然の教育制度、潔癖過ぎる社会、SNS等の環境変化などの巨大な怪物。または、親、子供たち、先生、それぞれからお互いを見た時に現れる個別の怪物。
問われるのは、目の前の怪物は、果たして本当に怪物なのだろうか?そして、さらに重要な物事の本質を見落としてはいないだろうか?
目に見える「常識」や「確からしさ」の脆弱さと、本質を見極める力を問われる作品でした。
最後に、坂本龍一さんの遺作になったであろう本作。映画界にも多大な影響を与えた坂本さんが亡くなられたことで、一つの時代の節目を感じました。
嘘に傷つく人々の闇が深い
カメラワークや編集は是枝作品ではあるが、坂本作品と言って過言ではない。
カンヌで脚本賞も納得。
クィア・パルム賞も獲得したということで、LGBTに振ったorそれが主題の作品なのかしら?と思って観に行ったのだが、鑑賞後にはそれは構成するごくごく一部の要素であって、主題ではなかったように思った。
いわゆる「ラショーモン・アプローチ」「羅生門メゾット」といわれる、同じ出来事を三者それぞれの視点で繰り返して描く三幕の構成で、それによって「何が、誰が怪物なのか?」ということをあぶりだしていく。
何を言ってもネタバレになっちゃうので、ほかには何も書けないのだが、実に「闇の深い」重たい作品であった。
たぶん海外の賞で高評価を得られると思うが、日本での興行成績的にはやや不安。
個人的にはものすごく興味深いものの、かすかな表情やセリフ、出来事から意味を感じ取り理解する、脳をフル回転して観る必要のある作品でもあるため、観て爽快感はなく、積極的かつ単純に「面白い」と言いにくい。
作文のシーンなど再確認したい気持ちはあるものの、観るとどっと疲れるのでリピートは難しい。
光
台風豪雨の中、初日に鑑賞。
台風豪雨の中でも初日に観たいという魅力が是枝作品にはある。
まず、安藤さくらの母親の身になってだんだんと不安が募ってくる。学校の先生たち、特に校長の態度に我慢がならなくなってくる。(よく角田さんつれてきたなぁ、まさに適役)
次に瑛太が演じるホリ先生、田中裕子の校長の視点から描かれると、謎解きのように面白くなってくる。(今の時代、教師にはなりたくないなぁ)
ミナトとヨリの子どもたちのパートに移り、そうだ、これは是枝作品だ、ミステリーではないんだ。
わかりやすい感動の結末が待っているわけではない。
坂本龍一さんのピアノの調べのように強く深く哀しみの中にも光が見えてくる。
(子どもたちはいい顔してたなぁ。)
是枝作品には台風豪雨の中でも観に行って良かったと思う光があった。
ぶっ壊れた家族の、絶望。
柵
最後、「行き止まりの柵」がない。
このワンシーンで、思考停止した。
考えさせる場面は沢山あったが、このシーンの印象が強すぎて、他の印象が薄れてしまった。
それでも、最後のシーンを否定できない。
先入観
小学5年生の息子の異変に気づき本人から話しを聞いて担任を糾弾するシングルマザーと糾弾される担任、そして息子の話。
断髪に水筒にと違和感を見せ始めたと思ったら、でかけたまま帰って来ず耳にケガをしているは走行中の車から飛び降りるはと奇行ラッシュの息子。
そして息子の話しを鵜呑みにし担任による不当な扱いと決めつける母親に、まともに調べもしなければ議論もせずとりあえず無機質に謝罪をする学校という不快な流れから始まって行くけれど、気付けば時間を巻き戻し実は…そしてまた実は…。
見えているものや印象と真実との乖離というところをみせていくのはわかるけれど、最初の実は…は概ね想定ないというかそりゃあそうだろうね。
子供を題材にしている作品ながら、なかなかショッキングな展開は意外だったし、そこからの実は…はきくらか意外性もあったけれど、こういう作品でもやっぱり性自認ネタ入れるんですね。
正直最近の何でもかんでもLGBTQネタは正直食傷気味。
言いたいことはわかるし、重くし過ぎない様にこういうつくり何だろうけれど、結局怪物は…。
この手の作品で飽きさせずに観せてくれたのは大したものだし、面白くはあったけれど、実はの部分にガツンと来る程のギャップがなかったし、悲しさややりきれなさもマイルドだし、何より決めつけることの恐ろしさはあまり感じなかったかな。
深いような。うっすいような。
ふっかい様な
うっすい様な。
どこにでもありそうな
誰にでもありそうな話な様な。
怪物とは何だったのだろうか。
子の為に必死な母親は
先生にとって怪物。
学校を守る為に嘘をつかせる
校長も怪物。
放火する怪物。
虐待する怪物。
校長の夫らしき人物との
面会シーンでの
お菓子泥棒?のくだりは
何だったのだろうか。
雰囲気や演出に
ドギマギさせられて
観てました。
それぞれの視点が終わったら
また最初の視点に個人的には
戻って欲しかった。
エンドロールの「ゆってぃ」が
目に付きました。
どこかに出てたのかな。
追伸、観終わってから日にちが
経つと何かジワジワきますよ。
「全ての人が手に入れるモノこそ幸せ」、そうじゃないものは、執念?
三節構成でテーマがどんどん深くなってて思ってたより見応えあった
第一節
シングルマザーvs学校の先生
教師への不信感を煽る
日本社会によくある「すみません主義」的な症候群に着目させられた。マニュアル通りに動いて楽になりたい学校側に対して、観客の悲しみと怒り、弱い方への同情がただただ引き出されている
第二節
教師vs子供(生徒)
子供の行為に疑問点を置く
教師がその理解者でいるのに苦労する描写をしつつ、視点を変えるだけで物事が違うように見えるという第一節を凌駕したことを観客に気付かせる
特に子供が常に合理的な行動を取るわけではないからクリーピーで怖い、ホラー映画によく子供のゴーストが出るのと同じ効果が出た気がする
第三節
子供vs宇宙
子供の見ている世界:謎を解く
ミナトとホシカワの目線を通して宇宙を見上げる。劇中の問題解決のカギとなる人物----校長先生がようやく言葉を発した。少数の人の幸せは理解されないモノであり、幸せとは言えないと彼女が淡々と言った。「視点」への議論をさらに「人間の幸せ」というより具体的で身近なテーマに変形させる
自分の求める、正しいと思ってるモノのための行動は他所の他人から見れば、不気味で狂ってるかもしれない
その幸せと呼ばれることのない執念こそ、怪物を動かすエナジーのミナモトとなる
けれど、それでもよかった
生まれ変わらないくても、怪物には怪物の、雨上がりの、太陽に照らされるキラキラな新緑の森がある
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全編について
ところどころ伏線があって、
いろんな視点が提供されているうちに、どんどんその伏線回収ができた点が一番面白く感じた
女の子が保利先生にミナトが死んだ猫を見てたことを話したのに、のちの否定が子供の不安定性を示している
保利先生が校舎の屋上に登る時に、背景音に大きな音がした。次の節に、それはミナトと校長先生が楽器を吹いていた頃だとわかる
......
ただ苦手なのは
いろな映画に彷彿させる安藤サクラの母子会話とどこかまた穴一つ増えたらすぐ破裂しそうな日常シーン
我慢強く観てた
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坂本龍一さんのご冥福をお祈りしております。
オススメの映画では無く私の好きな映画
黒澤明の羅生門を崇拝している私なのでこの映画は本当に心に刺さりました。
人間は醜くも美しく生きようとしている
そして大人の世界と子供の世界の対比
絶妙にテンポ良く描かれています。伏線回収さすがでした。
最後は子供の世界の希望に満ち溢れた「将来」を感じさせられるカットの終わりで感動しました。
そして大人チームの安藤さくらさんと瑛太さんのパートのラストの大人から見る「将来」の薄暗さも好きでした。電車の中から窓の壁の泥をとってるシーンのカット素敵すぎます。
子供たちは自分たちの気持ちに向き合え光の中に消えていきますが、大人たちは自分の過ちに気づき車内をのぞく薄暗いカットで終わります。物語として対比が散りばめられていてほんとに深みがありました。
話がまとまらなくなってしまいましたが、この映画は好みはあると思いますが「オススメの映画」というより「私の好きな映画」でした。
トロンボーンとホルンの音色は彼を救ったのか?
子役2人の演技力が怪物
黒川想矢と柊木陽太のとんでもない演技力が、監督や脚本家の企みを破壊してしまっている。2人に気を取られるあまり、作品が問いかけようとしている命題が気にならなくなり、ラストに至っては、ホントにどうでもよくなった。
もう、2人の物語でよくない?
最初は、母親の視点で始まり、途中から幾人もの視点で、時系列を前後して物語が語られていく。進んでいくにつれて、解像度が上がっていき、真実の輪郭が見えてくる。
ようやくわかってきたところで、「ここから先は、見ているあなたが物語を完成させてください」と、突き放されてしまう。
人間が目にする情報だけでは、真実を捉えることはできない。それは、わかる。違った視点から起こった事象をトレースしていくと、別な真実が見えてくるが、それも一部でしかない。
シュレーディンガーの猫のように、見る行為で客体が決まる。そう考えた方がいいのかもしれない。
安藤さくらに田中裕子の演技力が過剰に発揮されるがあまり、ピースのハマり方が鮮やかすぎるあまり、嘘くさく感じてしまうきらいはある。
そんな気持ちを吹き飛ばしてしまうラストでございました。
傑作!面白かった。
A面、B面で構成されていた。もしくはC面まで。
前半は色々起こりあっという間!
後半はその理由を説明。
無駄な話しは一切なかったけど、ちょっと子供同士のやり取りには途中飽きた(笑)
安藤サクラが主役は途中まででしたね。
主役は子供2人だった。
最初は怪物だらけで、え?こんなに?って思ったら、結局怪物はゼロ?もしくはどうしようもない脇役教師だけだったのかも。
まさかの校長も結局はまともだったのかな。
ラストシーン、私にはちょっと曖昧でよく分からなかった。
この映画のみせどころで、是枝監督らしい、いいエンディングなんだろうけど。
エンディングと途中飽きたから5.0の4.8かな。
怪物になれるくらいないとダメなのかも・・・
怪物がいた•••。
見る映画がないなと思ってふらっと見た映画でした。でも内容はとてつもなかったです。ヒリヒリする展開、共感するような日常を切り取ったような風景、はっきりと浮かび上がるような敵とか犯人がいない構造。いじめの構造の中で紡ぎ出される心理描写、微妙なボタンのかけ違い的な表現を見事に表現していました。そして、そこには確かに怪物がいるように見えました。物質のない部分を覆う、空気的なところにそれは存在しているように感じました。
学校の中で起こるいじめを、うまく言葉にできない感じ、親にも相談できない葛藤、これらが作品を覆う怪物をうまく言語化できない感じにも似ていました。
いつも映画を見る時は、長くてチラチラとスマホの時計を見てしまうのですが、今回は一秒たりとも映像から目が離せませんでした。スリリングな映画でした。
日本映画はあまり見ませんでしたが、派手なアクション、VFXなしで、ストーリーと演技でこのまで見せる技術に驚かせられました。
是枝×坂元+坂本
これは、なかなか見応えがありました。もう絶対にネタバレ厳禁だと思います。ネットニュースのタイトルだけでもネタバレしてたので、何も知らずに観られてとてもラッキーでした。誰もが「●●●」を想起すると思いますが、それとは別に「●●●●の●●●●」もふと思い出しました。カンヌで脚本賞受賞も納得でした。正直、冒頭からしばらくは「…」だったのですが、それが後に効いてくるんですよね。近頃は、ファスト映画とか早送りという映画の見方も珍しくないようですが、今作はワンカットさえ見逃せないですね。バラバラに見えた日々のシーンがパズルのピースのように散りばめてあって、終盤にピースがはまってくると「怪物」の正体が見えてくるという本当に見事な脚本であり、演出であり、演技であり、そして、坂本龍一さんのピアノがさりげなく鳴っているという極上の映画体験でした。あのラストシーン、心の奥の方に突き刺さり、爽やかな涙でいっぱいになりました。「ベイビー・ブローカー」(22)がマイベスト是枝作品でしたが、今作がさらに好きになりました。
無事でいてくれて良かった⁇
是枝裕和監督が、
脚本家・坂元裕二によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ。
音楽は、
2023年3月に他界した作曲家・坂本龍一で、
彼は微かに響く法螺貝音で首尾一貫してこの話を紡いで完結させた。
脚本は、
脚本賞を受賞しただけに大きな期待をして鑑賞。
その世界は、
不条理で不実な社会に翻弄されて育つ児童が、未成熟で不調和で不安定な出来事を引き起こして行く姿を克明に紐解いて行く。
それは見事だ。
そして監督は、
困難な作品を纏めてあげてくれたが、
最後に無事でいてくれて良かったと思えるほど無邪気な明るさが足りないことが残念だったなぁ
^_^
でも、
もう一つの視点「先生と母の捜索」の結果なら…
今回は考えないで置こう…
大きな湖のある郊外の町。
息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。
そんなある日、学校でケンカが起きる。
それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、
当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。
そしてある嵐の朝、
二人の少年がこつ然と姿を消してしまう。
登場人物それぞれの視線を通した「怪物」とは何か?
是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という日本を代表するクリエイターのコラボレーションで描く。
^^
タイトルの意味
「怪物」のイメージは固く感じる
も少し優しい感じにして
「怪物と呼ばれた天使達」くらいで良かった様な…
でも社会問題も加味した色んな意味での「怪物」なんだろう
それは、世間体であったり、未熟な子供達であったり、親の愛であったり…
どの立場に立ったとしても、私も同じ間違いをしてしまうだろうなと思いました
瑛太も安藤サクラも田中裕子も名優だ
散りばめられた言の葉に、理不尽さと諦めと再生を感じました
秘密基地での笑顔とラストのシーンが印象的な、哀しくも美しい物語でした
それにしても残された大人達は、其々に虚無感と共に長い人生を生きるしかないのが切ない…
それなら、いっそのことラストの美しいシーンは気を失った2人の夢の中であり、奇跡的に生命を取り留め助かり、母親と共に助け出した先生は逆転、名誉挽回で汚名返上…の流れが良いな
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