怪物のレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
予告のみの情報で映画を観ましたが、自分の思っていたテイストとは少し異なった。(ミステリー系のものだと思っていた)
しかし是枝監督ということを考えると、納得のストーリー。
皆さんのおっしゃる通り置かれてる立場・視点によって、誰でも怪物になりうるのだと観て感じられる映画。
LGBTの要素というか、恋愛に近い感情がストーリー的に必要だったのかなと思った。
(個人的な意見だが、友情だけで完結させた方が良かった気がする・・・)
是枝監督の狙いとは異なると思うが、この映画を通して育児の大変さを最も感じた映画だった。
子供といえど、他人であり、感情や考えをもつ立派な人間であり、今何が起きていて、何を考えているのかなんて100%分かるわけがない。
映画のようにシングルマザーで子どもを立派に育てることは難しいことだと痛いくらいに感じる。
だからこそ、不安ながらも誰にも相談できず子どものために戦う親の姿は周りから見ると怪物にも見えるうるのかもしれない・・・
内容的にはいいが、テレビ放送を待ってからの視聴でもいいかも!
本当の怪物はだれなのか? 観てみて下さい!
子どもたちの世界に大人が介入すると居た堪れないけど子どもの変化に気づき優しく見守る母親の姿が狂気だった。
真実が表に現れず裏側が見え隠れする視点で描かれている。真実の表と裏側、そんな世界に少しばかり違和感が漂い気が重くなってしまうのであった。
教職員の児童に対しての指導が本来なのか?作ろう世界感に苦笑いしました。
子役の2人も熱演でしたし安藤サクラは素晴らしい!
スッキリしないけど納得はする
それぞれの視点から見る事で真実はどこに。
ただ全てが映像からの解釈なので答えはわからない。
モヤモヤながらも、まったく飽きさせないのはスゴイと思える。演技力もさることながら、坂本龍一を感じながらの贅沢な一本。
是枝監督が使う子役は演技が上手いから、逆に怖い…
学校の闇が全く解消されない、そしてこれも現実。
生まれ変わりの話題で個人的にはドラマを思い出し「クスっ」としました。
現代的なテーマを用いた人間の本性の描写
先日発表された第76回カンヌ国際映画祭で見事脚本賞を受賞した「怪物」を観に行って来ました。何カ月も前から予告編をやっていたので、どんな映画なんだろうと思っていましたが、「怪物」という題名の通り、かなり怖い映画だったというのが第一印象でした。
予告編の印象では、子供が「怪物」として描かれているのかなと思っていましたが、実際は子供だけじゃなく、親、先生のいずれの登場人物も「怪物」の側面を持っていることが描かれており、流石はカンヌの脚本賞を受賞した作品だけのことはあると感じたところです。
構成としては、まず親(湊の母親の早織)の視点で描かれる1章目、続いて先生(保利)の視点で描かれる2章目、そして最後に子供(湊と依里)の視点で描かれる3章目という3部構成になっており、それぞれほぼ同じ時間軸の話を概ね繰り返す形でした(別に何章だと明示されている訳ではありませんが)。偶然ですが、先日観た藤井道人監督の「最後まで行く」も、前半は岡田准一の演じる刑事の視点で描かれ、後半は綾野剛演ずる監察官の視点で描かれていました。ストーリーは全く異なりますが、同じ時間軸の物語を、別々の登場人物の視点で繰り返して描くことで、前章で疑問が残った部分を次章以降で答え合わせをするという手法の映画を連続して鑑賞したことになりました。こういうの流行ってるのでしょうかね?
物語の内容としては、学校のイジメやシングルマザー・シングルファーザーの家庭、学校という組織、そうした環境下で抑圧された子供、SNSで飛び交う流言、そしてLGBTQと言った、実に現代的なテーマを複合的に描いており、中々深いお話でした。映画が全て具体的な現実を描いている訳ではありませんが、この時代学校に通わせる親も、通う子供にも、相当なリスクがあるんだと感じると同時に、先生の疲弊はいかばかりのものかと、改めて感じたところでした。
カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した是枝監督の「万引き家族」は、格差社会の象徴として万引き家族を描いていた感があり、ああした家族はいるかも知れないけど、何処にでもいるというものではない感じでした。しかし本作の登場人物たちは、何処にでもいる人たちであり、その分リアリティが極めて高く、それが怖い映画だという第一印象に繋がったんだと思います。
そして、題名である「怪物」、そして副題である「だーれだ」という問いに対する答えですが、冒頭にも触れたように、誰しも「怪物」の側面を持ち合わせており、誰もが「怪物になり得る」というのが私の答えでした。基本、個人として完全な悪人はいないものの、完全な善人もおらず、それが自分の属する集団や対人関係に応じて、悪にも振れれば善にも振れるということではないかと。本作は、そうした人間の本性を描写したかったのではないかというのが私なりの結論です。
俳優陣ですが、1章から3章までのそれぞれの主役である安藤サクラと永山瑛太、そして黒川想矢、柊木陽太は、いずれも迫真の演技でした。安藤サクラが上手いことには定評がありましたが、特に子役の2人が実に良かった!この2人の演技がなければ、本作は成り立たなかったと言っても過言ではないでしょう。彼ら以外では、校長先生役の田中裕子がいい味を出してました。隠蔽と論点ずらしにより保身を図る役柄で、ちょっと抜けたところがあるのかと思わせつつも、実は周到な策略を巡らせる一面も垣間見せるなど、相対的に「怪物」の要素が最も濃い人物を、絶妙な演技で表現していました。
最後に本作が遺作となってしまった音楽担当の坂本龍一に触れておきます。体調を崩された中での作曲だったようですが、透き通るようなピアノの音調が、逆に不安を掻き立てており、本作にピッタリだったように感じました。
そんな訳で、ストーリー、役者、音楽と言った各要素が見事に融合した本作の評価は、星5としたいと思います。
『わかりやすくない』
あー、そういう事かぁ。これはやられたわ💧
要するに、マルチアングルストーリーなのね。
例えていうなら黒澤明の羅生門スタイルかな😓
人間味の欠如した校長先生を演じる田中裕子が本当に絶品。あの得体の知れない気持ち悪さの底が知れなくて、ガチで嫌悪感を抱いてしまう。
自分の子どもに「お前の頭には豚の脳みそが入ってるんだよ」という暴言を平気で言い放つ中村獅童も横っ面をブン殴りたくなるし💦
逆に永山瑛太の担任教師が、自分自身ではどうしようもない何か大きな理不尽な力に押し流されるように、どんどん“問題教師”として公私ともに破滅へ向かって落ちていくのが怖かった。
ただ、あの子ども2人が性差を超えて惹かれあう設定までは、物語の展開としてお腹がいっぱいになりすぎて、個人的にはちょっと…
嵐が過ぎ去って2人が晴れ渡った草原を走り回るシーンで映画は終わるが、そこに結論は何も示されない。もしかするとあのシーンは2人の死後の世界なのかなぁ。
で、怪物って誰だったんだろう。。。
今まで是枝監督のは「万引き家族」「誰も知らない」等、見ていてげっそ...
今まで是枝監督のは「万引き家族」「誰も知らない」等、見ていてげっそりくるような家庭環境の物語だったのと、怪物というタイトルに苦手なホラーミステリーを予想してしまったので、すっかり遠ざけてしまっていた。ここ数日の評判の良さに、どうも違うぞということで鑑賞した。
相変わらず社会的マイノリティの子供たちを主人公にしているが、今までのとはテイストが若干異なって、おお?と思った。小学校のいじめを扱っているからかもしれない。
自分の小学生時代は、田舎の里山で、集落と集落の間にはおそらく集落に受け入れてもらえなかったであろう家があり、そこから通ってくる同級生がいた。その一方でできたばかりの新興住宅から通ってくる同級生もいた。当然学校内に格差というか分断というか壁が作られていたし、からかいといういじめも存在した。
この映画をみている間中、胸を締め付けられる感覚にとらわれていたが、おそらく当時のいろいろな事柄が思い出されたからかもしれない。
怪物というのは、臭い物には蓋をしてしまおうとする日本の社会そのものなのかもしれない。
久しぶりに引き込まれる作品だった。 加害者にでも被害者にでもなり得...
怪物はどこにでもいる
最初はよくある虐め問題かと思って観ていたら、途中から事件の真相が徐々に明るみになっていくことで予想外の方向へドラマが展開され、最後までグイグイと画面に引き込まれた。
脚本を担当したのは坂元裕二。前作の「花束みたいな恋をした」が評判になっていたことは知っていたのだが未だに観ておらず、その才能や如何に?と思いながらのぞんだ。結果から言うと、その手腕には脱帽してしまった。
時制と視点を交錯させながら謎が解明されていくという構成自体はよくある手法で特段驚きはないのだが、それにしても伏線と回収がよく計算されている。あのシーンの裏側ではこういうことがあったということが分かり、そのたびに一体誰が悪なのか?誰が怪物なのか?ということを常に自問しながら、気がつけば画面を注視していた。
特に、校長室のフォトフレームのクダリ、湊が車から飛び降りるクダリには唸らされた。
湊、母の早織、教師の保利、友人の星川、校長といったキャラクターたちが、夫々に心に傷を負った者として魅力的に造形されている点も特筆に値する。彼らの心中を察すると、今回の事件が辿る結末には悲しみを禁じ得ない。
但し、決して分かりやすい映画にはなっていない。こうなった原因はどこにあったのか?果たして誰が怪物だったのか?そうした単純なドラマではないからだ。むしろ、誰でも怪物になり得る、本作のメインキャラはすべて怪物だった…という言い方もできる。
湊の嘘は保利を傷つけ、早織は湊の苦しみを理解できなかった。校長も倫理に反する嘘をついていた。保利は学校の虐めに気付きながら無力だった。星川も重大な罪を犯していた。このように人は誰でも悪心を抱え、嘘をついたり、周囲を傷つけるエゴを持っている。人間とはそうした業を抱えた生き物なのだ…ということを暗に言われているような気がした。
ラストの意味を考えてみると、劇中にたびたび登場する”生まれ変わり”というフレーズが反芻される。果たしてこれをハッピーエンドと捉えていいのかどうか…。人が業から逃れられるとしたら、それは”生まれ変わり”しかないのか?だとしたらひどくネガティブな結末ではないか。そんな風に思った。
監督は「ベイビー・ブローカー」、「万引き家族」等の是枝裕和。
子役の起用に定評がある氏だけに、今回も湊と星川を演じた二人の子役が実に活き活きと活写されている。前半は鬱々としたダークなトーンが支配し同監督作「誰も知らない」を想起させられたが、後半から「奇跡」のような甘酸っぱく微笑ましいトーンが混入され、二人の絆を情緒豊かに綴っている。意外だったのはその関係に、これまで是枝監督が描いてこなかった要素を持ち込んだ点である。これも時流の流れだと思うが、良い意味で驚かされた。
それと、本作のクライマックスには同氏の「海よりもまだ深く」も連想させられた。風雲急を告げるとは正にこのこと。映像面から物語をドラマチックに盛り上げている。
キャスト陣はメイン所含め芸達者が揃っているので安心して観れた。ただ、校長役の田中裕子がやや作りすぎという気がしなくもない。もう少し自然体な方が、深みが出ると思った。
また、保利役の永山瑛太は、序盤と中盤の演技に少しチグハグな印象を持った。早織の前で初めて謝罪するシーンで彼は無作法な態度を取っていたが、あそこは今一つ理解できない。確かに少し変わった所がある男だが、そこを踏まえてもあの場面だけは浮いてしまっている。
大きな変化
はストーリー上は無いのに、一つの体罰騒動だけなのに、最後まで引き込まれます。大きく言うと3人の視点からの一つの出来事を追って行きますが、それぞれのストーリーにそれぞれの事情や思いが交錯します。怪物は‥、人が人と接する時に起こる大きな感情の事でしょうね。
「感動」で片付けてはいけない
まず坂元裕二の脚本が素晴らしい。
第1幕の主人公早織から怪物に見えた保利。第2幕の主人公保利から怪物に見えた湊。そして、第3幕の主人公湊から怪物に見えたのは、自分の知らない自分と、それを誰にも話せない空気を作る社会だった...
怪物に見える対象が次々に変化し、観客の感情移入を手玉に取る構成は見事としか言いようがない。
そして、怪物探しの果ての第3幕にあったのは、2人の少年のかけがえのない時間。ここは是枝監督の手腕が存分に出ていたと言って良いだろう。特に片足けんけんのシーンでは、この映画で初めて「他者を思いやり痛みを分かち合おうとする人間」が映されており、今年ベスト級の尊さを誇っていた。
ラストに関して、彼らが生きているのか死んでいるのか、それはどうでも良いと思う。
問題は、あれが何であれ現実ではないということ。
本当に素晴らしい撮影で、「感動」「美しい」「希望」という言葉でこの作品を締めくくりたくなるが、彼らは現実ではついに受け入れてもらえなかった。
あの美しい光景を、現実世界でも実現できるようにするために、僕たちはどうすべきなのか?何が出来るのか?
それを考えることが、この作品の価値なのではないかと強く思う。
本当に素晴らしい
是枝裕和監督の新作。
是枝作品としては珍しく速度が早い作りでした。
脚本が実に巧みで“立ち位置が違えば見え方も全く変わる”、その3つの視点を組み合わせた作りも見事。
多様性をテーマに、その危うさをじっくり見せてくれました。
導入のエピソードから物凄く不穏で、嫌な気持ちでいっぱいになるんですよ。
怪物。それは誰もが抱えていて、誰もが作り出せるというのがよく伝わってきます。
序盤は安藤サクラの芝居が全部持ってってますが、やはり子役の二人がすごいですね。
瑛太も2方向の教師をよく演じ分けていました。
それと最初こそ怪物そのもののような校長の存在。
怪物にみせてその実、要所要所で物語を動かしているのが、本当うまい位置付けでした。
3月に亡くなった坂本龍一の音楽も、作ったのは二曲だけなのに全ての曲が本当にフィットしているから驚きます。
そうして迎えた物語の終わり。
それは観客に見えている二人とは別に、やはり違う視点から見えている真実があるのだと信じています。
少なくとも二人は自分達を受け入れてくれる希望を見つけ、そこに向かって走り出していました。力一杯に。
そしてこれがとても美しいんです。
本当に素晴らしい作品でした。
ひとつでない真実
この物語で眼中に入ってこなかった人々。
それは、教師の見えないところでいじめを働く子供たち。
自分の子供が他人の子供を傷つけていることを知らない親たち。
体罰や虐待があたりまえだと思っている親、教師。
弱いから、不潔だから、勉強も体育もできないから。片親だから。
そんな理由で、感じやすい子供から大切な学校時代を奪い去る人々。
おそらく、「暗い映画だね」のひとことで、あらぬ噂を立てるだけ。
あの子はもともとそういうい子よ、と決めつけるだけ。
感じやすい子供が、自分を見失うことを恐れて、真実から目を背けることを知る由もない。
そんな人々をあえて無視した、是枝監督の功績は大きい。
それぞれの真実を抱えた、感受性の強い母親、教師、子供だけに人格が与えられた。
そのこだわりの演出と坂元裕二の脚本のなにげないひとことに心が揺れる。
孤独な少年二人が共有する、「怪物だーれだ」のゲームは意味深だ。
彼らが考えた怪物に対して、矢継ぎ早に繰り出されるヒント。
だが、ヒントだけでは怪物の正体を当てることはなかなか難しい。
まるで、真実はひとつという言葉をあざ笑うかのように。
みんなが無責任にヒントを出し合えば出し合うほど回答は遠のく。そんな現実。
「誰にでも手に入れられるものを幸せというんだよ」
孫を失くした傷心の校長の、怪物とは真逆の言葉だけが、なぜか回答に一番近いヒントのように思えた。
タイトルなし
三者視点で物語が違って見える話
こういうのって視点が変わることで、人間の隠された陰湿さとか実はこんな思惑、真実が…とかの展開になりがちだけど、明かされてくほどに誰も悪い人も怪物もいなかった…
母から見た教師はすごくやばい奴にしか見えないけど、不器用な善良教師で
教師から見た生徒は問題児にしか見えないけど、本当はクラスメイトからのいじめをかばう友達同士で
子供視点で本当のことがわかる
自分から見える世界はどれだけ狭く、偏り、見ようとしたものしか見えない、見ようとしても見れないことで溢れてるんだろうか
三者とも同じ時系列なのにまるで別世界だった
そして誰もが誰かを想っていた
なんで髪切ったんだろ?ってことがわかった時、みなとが嘘をついた理由がわかった時なんとも言えない気持ちになった
親に豚の脳みそって言われる理由が頭が悪いことではなく同性愛者だからということに震えた
親視点では殺伐としてた世界は、二人の視点からだととてもキラキラしていた
まぶしくて不自由でくるしくて愛しかった
みなとが最後に「生まれ変わりなんてないよ」って言ったことがよかったな…
親達が必死で捜してる中、子供達二人は二人だけの世界を陽の光のなか走っていて希望に満ちていた
永遠に続いていきそうなくらい美しかったし、二人だけのピュアラブストーリーだった
…えっこれもしかして二人死んでるってことないよね?
二人が二人なりに生きていくこと、二人の絆を再確認した、もしくは親の呪縛から逃れた描写かと思ったんだけど、ワンチャン二人が逃れるにはこの世界からいなくなる…とかじゃないよね?信じてる…
でもそれすらもわからないんだよ、いっそ
自分の見たい世界しか見ないし、見れないし、わからないんだもの私達は
だから無理解が生まれて、分かり合えなくて、人の数だけ踏みこめないその人だけの世界があって、なのに私達は知らない人間の事件を、だれかの噂話を、さも自分は真実を知ってるかのように何もかもわかってるかのように語る
私達は何もわかってないこと、誰かの全てを知りえないことを、そしてそれを忘れて全て見えてる気になってることを優しく突きつけられる映画だった
もう一度観る!
なんて美しいんでしょう
予告見ただけで事前情報入れずに鑑賞して正解。1回目見て、その次の回で2回目も見てしまった。
前半は社会派サスペンスなのかなと思いきや後半は純粋な愛(愛と表現するのも違う気がするが)
母親視点50分、保利先生視点25分、湊視点50分でした(時計見た)
母親から見た保利は態度最悪、面談中に鼻噛むわ飴舐めるわ、シングルマザーがどうこう言うわ。後に保利は何も悪くないと分かるが、何故こんな態度悪くしてたんだ?と消化不良だったが2回目見て理解。駅で恋人からシングルマザーだと過保護になるとか飴口に入れられて「そんな深く考えなくていいんじゃない?」と言われます。それをそのまま実行したのだと。
それにしても保利って変な人ですよね。自分が体罰教師と書かれた週刊誌見てニヤニヤしてるんですよ。付箋貼って。これはきっと誤植を見つけたんでしょう。恋人にも「誤植見つけて出版社に電話入れる」って言われてたし。でもこれが伏線となって、依里の作文のトリックに気づくんですよね。
湊は最初は自分の気持ちを認めなくなかったんだろうね。だから依里に触られた髪を切ったり、クラスメイトに「好きなの?」って揶揄われたとき依里を攻撃したり。苦しかったんだろうな。
でも私は、母親に「普通に結婚してくれたらいい」って言われて車を飛び出したときに「あ、そうかな?」って思いました。もう本当これ言われるの嫌ですよね。分かる人にはもうここで分かっちゃうというか。
そして湊の隣の席の女の子は多分私と同類。BL本みたいなの読んでるし、先生に「麦田と音楽室行け」って言われた時「星川くんも音楽係です」って二人で行かせようとするし、悪ガキたちが依里の雑巾投げて遊んでる時に、湊にパスするし。「お前なんとかしてやれよ」って目してたし。でも謎なのは何で保利先生に「麦田くんが猫で遊んでた」って言ったの?あの証言になんの意味がある?そのせいで保利先生に湊が猫殺す子だと誤解されちゃったし。
それにしても依里くん、身体と声は幼い子供なのに、思考が達観しすぎてて何とも言えない魅力があるなぁ。ナマケモノのことを「攻撃されても力を抜いて感じないようにする」って言って「それは星川依里くんですか?」って湊が言ったシーン良かったなぁ。いじめられてもニコニコ笑ってるのが彼なりの自衛だったんでしょう。あと、もう一つ良かったのが「花の名前知らない男はモテないってお母さんに言われた」って言われたシーンですね。その後に「暗いところ怖がる男はモテないよ」って言ってトンネルに湊を誘うんですよ!ここ、なんかすごかった…そりゃあ湊は依里くんにモテたいからトンネル入りますよね。人生何周目ですか。
そして秘密基地で湊が依里にぶつかって怪我させちゃうシーンですよ。その後に廃電車の中で手当てしてる最中に転校を告げられます。その時の湊の「やだ!」って感情の露呈でもう涙。その後に抱き合って依里が「みなと」って下の名前で囁くんですよ。え、これどういうこと???そしてその後に突然湊が「はぁ?そういうんじゃないから」みたいに怒って依里が「大丈夫。僕もそうなることあるから」って…。"そうなる"って何ですか!??考えすぎだったら申し訳ないんだけど身体的な変化があったのかなって。それを認めたくない感じもあったし…
そして許せないのは依里の父親とクラスの悪ガキたちですよね。この二人にも罰当たってほしい。台風のシーンで依里の父親がすっ転んでる場面はありましたがそれだけでは足りないですよ!最初の場面で見ていたテレビも伏線というか暗喩というか。まずは「ドッキリ」と「お肌もちもち〜」のオネエタレントね。クラスの悪ガキたちは「これドッキリだから」と正当化して依里をいじめます。更には女子の味方をする依里に「お前女子なの?お肌もちもち〜」って馬鹿にするんですよね。これ、実際のいじめでもこういうことあるんだろうな。メディアの悪影響ですよね本当に。
そして何故湊は保利先生を悪者に仕立て上げたのか。最初の火事を母親と二人で見てるシーンで豚の脳がどうこういって「それ誰に言われたの?」って母親が聞くんですけど、おそらくここで依里の名前を出したくなかったんでしょうね。とっさに「保利先生」と答えてそこから戻れなくなってしまったんだろうな。まぁ子供なんて自分を守るためにいくらでも嘘つきますもん。私も自分で汚した服を母親に「クラスメイトに汚された」って嘘ついてしまったこともあります。
校長先生はなんだったんでしょうね。湊とトロンボーンとホルンを吹くシーンはとてもいい先生に見えました。言えないことはこれに吹く、ってところで涙が出ました。その後のすっきりした湊くんを見てよかったねぇって。孫を轢いた件については回収されないままだったし謎。
モヤモヤしたままの箇所もありますがとても良い作品でした。一つだけ嫌だったのは保利先生の彼女のゴムがどうたらって直接的なワード。これがなければ親と観れるのになぁ。是枝作品ってちょいちょいこういうの入る気がする。
誰のために怪物になれるのか
あまり前情報を入れないで観ようと思っていたのに、クィア・パルム賞受賞で壮絶なネタバレに…
何も知らない状態で観ていたらどの時点で気づいたのか気になるところ。
周りの人が「この人は良い人」と言うからそういう人なのだと思っていたら、めちゃくちゃ嫌な奴だった。人は良くも悪くもその人の側面しか見れないし、どの側面もその人の一部であることに変わりはない。
大切な人や物を守るために、どうでも良い人を切り捨てる。保身のために少しずつ嘘を積み重ねる。
子供は周りをよく見ている。
自分達と少しでも違うところを見つけ攻撃する。大人が思うより事情を察し気を使える。
しかしやはり子供、思慮が足りずホリ先生が可哀想なことに…でも何であの場で飴舐めたんやホリ先生…
お話は、母親視点→先生視点→子供視点と切り替わっていく。普通こういう展開だと最後に全部の視点が合わさって大円団というのが定石だけど子供視点で終わる。
子供達は無事に帰れたのだろうか?
ホリ先生の名誉は挽回されたのか?
いじめはなくなったのか?
気になるところはたくさんあるけど、観たいような、観るのが怖いような。
さすがと言う作品です。特に子供たちが素晴らしい。
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