怪物のレビュー・感想・評価
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今年観た映画の中で一番
今年観た映画の中で一番面白かった。大人は勿論、子役の2人の演技が上手い。特に依里役の男の子の演技は素晴らしいと思った。自分は最後は死んでしまったのだと解釈した。
かいぶつ、だれだ。
怪物とは、我のことなり。
人はそれぞれに先入観や思考や想像や信じてしまうこと考えてしまうことの癖があり、それゆえに誰もが誰がに対する加害者や害悪になってしまう。お前は怪物だ、という私こそが怪物。
結婚して普通の家庭を、
とか、
男ならできるだろ
とか、
プロポーズは夜景の綺麗なところでするものでは
とか、
母子家庭だから、
とか、
生徒の親=モンスター
とか、
なんでも良いのだ、人の心に浮かび人の口から出たことは、なんらかの形で悪意を持ち誰かを傷つける、
それぞれの視点視野から見えたもの。だから嘘ではないかもしれない。その角度からの事実が次々と明らかにされる。
自分が嘘をついたとわかればそれは嘘。
堀先生も、湊くんも。依里くんも。嘘がなさそうな子ども2人も気遣い、空気読み、保身してしまうのだ。
存在感を薄めよう、としてより一層際立つ田中裕子の存在感に全てかすんでしまうところがあるが、
誰にでも手にはいらないようなものは幸せじゃない
一部の人にしか手に入らないものは幸せとは言えない
と年老いた田中裕子校長は小学生の湊くんにいい、ホルンやトロンボーンに、そんな時は
フーッと、フーッとするのだ とおしえる。
子どもたらちは台風のビッグバンを経て怪物ではなく人間としての自分を生きるだろう。生きようとして挫折するだろう。
森の中の秘密基地とか、火遊びとか、遊び方は昭和なところがあり、今の子どもにはなかなかできないこと、子どもっぽい遊びがができて羨ましいと思うけど、親だから気を使うという気持ちは今どきな感じの会話で、それはまた真実の子どもの気持ち。
押し付けがましいところが全くないのがよい。
万引き家族とはまるで逆。なにも押し付けてこない。淡々と凝り固まりがちな視座を動かし我にかえり、という作業。
諏訪湖もまた、海のようにとてつもない大きさに見えたり箱庭の、子どもらの秘密基地のなかの池のように見えたり。そんなところもよかった。
最後の映画音楽作品なのか坂本龍一の音楽も、押してこないところがよい。しずかに自らの怪物性を顧みる。誰もが手に入れるような幸せじゃないとだめなんだ、幸せじゃないんだ。
誰もが優しくあったからこその悲劇
視点が変わる度に、さっきまでこういうことだろう、こういう人物だろうと思ってたものがガラリと変わる。
立場や視点で起きてる事実はひとつでも受け取るイメージがあまりにも違うのに驚かされる。
さらには誰もができるだけ大切な人を傷つけまいとついた嘘が、巡って1番のダメージを与えることになる悲しさだ。
ずっと、なぜ?と抱く問いの答えが徐々に明かされていくに従い、なぜからどうしてに変わっていく。
完璧な組み立て。
あまりにも悲しく切ない。
走らないはずの線路、窓が上部になってたということは、車両が嵐で崩れた土砂で横転したということなのだろう。
つまりラストはそういうことだよね…。
怪物というのは、己が理解出来ないものを外部が勝手にそう呼ぶ言葉。自分からそうは言わない。怪物を生み出すのは周りの人間なのかもしれない。
追記として。田中裕子演じる校長が、湊くんに「誰でも手に入れられるものを幸せと~」のセリフ。
すぐには自分の中で理解ができず引っかかっていたのですが、時間を置いたら納得が出来ました。
私が独身だったころに母がいきなり「あんた達(私を含めた友人数人)でAちゃんは幸せね。公務員と結婚して子供もいて」と言いました。当時私は、独身でも私けっこう楽しく過ごしてるんだがそこは無視?え?娘に私は不幸だわって思って暮らして欲しいのか?となんとも嫌な気持ちになったものでした。
作中のあのセリフを思うにこういうことなのですね。いわゆる「みんな」「平均的に」そうしてる、というものをほとんどの人は幸せと呼び、当てはまらない人々の気持ちや考えなどは見ようとしない。
改めてすごい脚本だと唸りました。
本当の…
坂元裕二さん作品、とても好きです。
余白を存分に残してくれ、その中で自由に思考を巡らせることができるところが。
極力内容を知らずに観ると決めて鑑賞。
前半、理解不能な大人たちの対応に観ていて本当に腹が立ってきた。それに対して真っ向から立ち向かう母(安藤サクラさん)を援護射撃するような気持ちで観ていたところ…
子供や家族の気持ちを分かっているようで本当は何もわかってないのかも知れない。
同じように自分の言動も正しく(自分の思い通りに)理解されないことがあっても仕方がないことなんだろう。
世の中にあるマイノリティーに対して寛大にとか弱者だからという視点で世の中が動く時、当事者が本当は何を望んでいるのか、その声の吸い上げは根気よく丁寧に行いたい。と同時にその機会が身近にない。
依里さんへ"もう大丈夫、安心して生きてほしい"と言いたい。それには何が出来るのか。
余白部分に引き続き思考を巡らせたい。
坂本龍一さんのご冥福をお祈りします。
親になる覚悟
お前らはそれでいいのかもしれないが
タイトルからホラー映画かなと思ったのに…(笑)
いわゆるBLモノ。ポリコレ意識か。
ただそれをズバリ言うのではなく、ぼかした表現にしている。
他の事件も明確に答えを出さず、全体を通してフワッとした感じ。
「逆転のトライアングル」に似た投げっぱなしジャーマン。
解釈を客に投げるようワザとやってるんだろう、監督の思うつぼか(笑)
視点を変えて同じ日々を3回繰り返してはいるが、時系列が微妙に繋がっていないような気がした。
時系列を合わせて再編集しても面白いかと。
大人たちの最後が気になるトコロ。
子役2人の演技はすごい。
母、教師、子供、複数の視点から物語を捉える
予想外の展開
最初は誰が悪いのか犯人探しのミステリーかと思ったら、違った。
それぞれの視点で行きつ戻りつ語られていくうちに物語はだんだんと姿を表すが、それぞれの言い分も見方を変えると悪いのはどちらなのか分からない。
かわいそうでひどい人ばかりが出てくるけれど、ラスト手前、衝撃の事実が判明する。ここまでの物語は全てそれを隠すためのものだったとは。
男らしく、女らしく、そんなセリフに耳を澄ませていると見えてくるはず。
校長の真実は、ラストはどうなったのか賛否両論だと思うけど、私個人的にはあの真相を隠すための物語というところに衝撃を感じた。実際にあり得る話だし、知らず知らずのうちに追い詰める人にならないように気をつけたい。
子供には明るく生きて欲しい
闇の中から見つめるものの正体。
胸が締め付けられる。
胸が締め付けられるとはこういうのかと、
なんか初めて感じた。自分が歳をとったせいもあるのだろうが、
何か凄いのを見たという感想。
面白いとか、凄いとかってのとは違う。
どのジャンルかもよくわからない。途中、スタンドバイミー的な感じもしてしまったが、そういうのでもない。
邦画ならでは感じるような。
怪物は誰だったのか。中村獅童演じる親か、クラスのいじめっ子たちなのか。
汚れのない子たちが汚されて、怪物に変えられる。
心締め付けられた。
辻褄合わせっていうか、回収って言葉にしたくないが、映画の作りも内容も思っていたのと違いすぎて、終わりまで惹きつけられました。
間違いなく良品でした。
他の映画と迷ったが、これ見て良かった。
狭い世界のよくあるお話。
これは…警告!…か?
暴力教師…実は…。いじめ…実は…。我々は自分が見聞きした事象を事実だと思う。そして行動する。それは自然だ。しかし…本当に事実に即した対応なのか?「完全な誤解」という危険性はないのか?見る視点を変えれば、見える現象が違ってくる。そういうことは当たり前のことであるはず。我々は理解してるだろうか?我々は常に偏見を有している。そして、SNSの発達は、ある意味、我々の偏見が支えている。偏見が商売のエサになる世の中で、我々は適切な行動を取れているのだろか?少年は…こうあるべき…小学5年生はこうあるべき…我々は思い込んでいるかも知れない。時代の進化は、大人たちだけが影響を受けるわけではなく、子供たちも同時代を生きている以上、影響を受ける。これも自然な論理だが…我々は意識できているか?以前とは違う時代認識のなか、その空気を吸って子供たちは「純粋」に育つ。そして、以前使った定義とは違う育ち方をする。そのことに我々はきちんと向き合えているだろうか?示唆に富んだ映画だ。この脚本はシンドい。さすが!カンヌ脚本賞!BRAVO!🤣
怪物だーれ だったんだ?
予告から何度も見せられていた、印象操作のような必死な母親と重大案件なのにヘラヘラしている笑顔の怖い教師と取り巻く覇気のない教員たち。
冒頭のこの描き方で母親目線の怒りを持たせたかったのはとてもよくわかったのだが、私はどんどん母親に腹が立っていきました。
いいから少しは黙って話を聴けよお前。
相手のペースを待て。急かしてかき乱すな。
あー、ダメだこの母親には感情移入できないや。
そこから目線を変えて罪を着せられ追い込まれていく教師に。
教師パートのラストシーンは一瞬ドキッとしました。
最後は、友達への複雑な想いと学校生活における自分の安全や勇気や母親からの無言の重圧などの色んなことの折り合いがつけられない男の子がついた小さな嘘が「怪物」のようになっていく話として、これまで見ていた2つの目線の「事実」が改めて紐解かれる。
人は大抵の場合、自分の立ち位置からしか物事を見られないが、こうやって映画として目線を変えられても全てを把握など出来ないし、受け手によって解釈が変わる。
起きた事実は1つでも、物事はときに怪物のようになり、台風のようにもなり、太陽のようにもなる。
静かにそう締めくくられるラストシーンが、どうか映画の中のリアルであって欲しいと希望を抱きつつ、静かなエンドロールを迎えるのでした。
結局、怪物などいなくて、みんな必死に生きる1人の人間であるものの、誰の中にも怪物がいて、物事はそうなる可能性をいつもはらんでいる、という風に私は個人的に解釈しました。
素晴らしい作品だと思います。
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