怪物のレビュー・感想・評価
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怪物は自分たちだった
まず、是枝監督の作品はやはり面白い。
それから田中裕子さんの実力がすごい。
少しの動きとわずかな表情だけで憎らしく思えたり、苦しさを飲み込んでいるんだなと思わせる。
社会問題を提起する作品だけれど、サスペンス要素が軸となり、交錯した3者の視点で展開する。終始引き込まれて見ごたえがあった。
何が「怪物」であるかという認識は、個人の立場によって大きく異なる。母親であれば学校であったり、教員にとってはモンスターペアレンツだったり。しかし、最終的に私たち自身、つまり「世間」こそが怪物なのではないか。他人の過ちを糾弾し過剰に攻撃を仕掛ける社会が。
このような「怪物」から自身の社会的立場を守るため、教師たちは必死になる。彼らは身を守ろうとするあまり、自らも怪物と化し、その行動はエスカレートしていくのだ。
皆が自分を守るために権力に屈したり、忖度によって嘘をついたりするようになる。
子供の世界であっても同様で、影響力のある側に付くことも、見ない振りをしたり、間違っていると思っていても抗わない術を既に身につけている。
息子に依存する母親、嘘の自供をしてしまう教師、みな自分自身が怪物になっているとは気付かず、むしろ被害者だと思い込み続けている。
子どもたちを犠牲にしてしまったのは、他ならぬ大人たち自身だったのではないか。
人を傷つけ、犠牲にし、怪物と化した自身の行動が。
大人たちも罪悪感を抱え苦悩していたという事実が、せめてもの救いと言えるだろう。
根源は人間の弱さにある。この弱さが保身へと走り、結果として世間の目という形で人を罰する怪物となるのだ。多くの人が、寛容さを失った今の世の中を異様に感じながらも、その流れにただ身を任せている。自分の手を汚していないようでいて、知らず知らず加害者になっているのかもしれない。
結局の処、み~んな「怪物」!!ラストも「皆さん、どうお感じに?」と視聴者に託すみたいな!?
あとから効いてくる
今までとは毛色の違う是枝作品。
今までの是枝監作品と言えば、脚本から編集まで全て自己完結。何気ない日常を切りとったような静かな画がスクリーンに映し出されていた。が、今回の脚本は坂元裕二さん。一つの事柄を立場の違う人たちが多方向から見ることで、感じ方や受け取り方が全く違ってくることの怖さ。そして、誰もが怪物(モンスター)になりうるし、善と悪を単純に線引きも出来ないことが上手く描かれていた。田中裕子演じる小学校校長の能面のよう表情の不気味さに気持ちがザワザワした。無表情の中にも喜怒哀楽を表現しているところが流石と思った。子どもたちには子供たちの、親には親の、そして学校には学校の立場から見えるものや感じることが有って、何が正解で間違いなのか?これって普段の生活の中でも有ることで、一方的な見方考え方に警告を出していてくれているのか?と思ったりもした。
LGBTQ映画とは思わないで見て
カンヌで
LGBTQを扱う作品として
賞をとったので
そういう作品と思って
見てしまうけど、
そう思って見ないで欲しい。
自分は忘れてて
終盤になって、
そういえば、コレのことか
って感じだった。
そんなことよりも
めちゃくちゃ素晴らしい脚本!
視点の変化で
こんなにも変わるのか
という驚き!
はじめの母親目線。
誰もが「ひどい担任教師!」と思う。
ところが
担任教師目線になると
「子どもたちヤバい!」
[怪物]って子どもたちのことか
と思った。
でも、
子ども目線になったら…
まさに
【怪物だ~れだ】
みんな見て下さい!!
懐かしい。日本版スタンドバイミーのような
モンスターペアレント。虐待教師。DV,
LGBT,
色んな問題の要素をふんだんに詰め込んだ作品でした。
3つの視点から物語が描かれていて、どの視点から観てもそれぞれの解釈が生まれて面白かったです。
はじめの視点は、子供の親からの視点
自分の子供が先生からの暴力を受けていると学校に相談に行くが
そこで対応が母親を怪物に変えてしまったと思った。
次に来るのが先生側から見た視点。
そこでの先生は、周りから見られている人柄とは全く違った人物として映っていた。
最後に描かれていたのが子供側から見た視点。
全ての真相があるのだが、それを伝えてしまうと全てが狂ってしまうという恐怖から本当の事を言えないでいた。
それぞれの役者もさることながら、子供達の演技が素晴らしかったです。
誰が怪物なのか?
ではなくて、誰が怪物を作ってしまったのか?
どうして気付けないでいたのか?
そこに物語が詰まっていると感じました。
誰も悪くない。
ただ、他の人の幸せが正しいと思ってしまったばかりにどんどん違う結末を迎えてしまっただけ。
最後は、とても悲しく、とても懐かしく、
とても切ない終わりでした。
ホルンの音色が悲しく聞こえる
物語をそれぞれの視点から作り上げていくと、本当はこうだった。と、見方がどんどん自分の中で変わっていく。
これは、本当にいじめなのか?暴力なのか?
親の視点から見ると、怪物は教師。
教師の視点から見ると、子供も親も怪物。
子供の視点から見ると………
私の視点から見ると、嘘が怪物を作り出す? 言葉にまとめられない…が、本当の感想。
「お父さんみたいになれなくてごめんね」の本当の意味が分かった時の衝撃が、涙になる。
2人がクリーンな緑の中で走り回る姿を見て、じわじわと涙になる。
2人には2人にしか分からないことがあり、2人のこの時間を壊さないで…と願い、観終わった。
やはり、この映画はスゴい。
そして、スゴい演技力です。
田中裕子さんが、ホルン片手に語った言葉とシーンがとても心に残りました。
本当の怪物は…
展開が早く、良かった
人の見方で、こんなにも違って見えてしまう
言い方、表情、タイミング、
これを、テンポよくすすめていくので、
え〜、へ〜、そーなんだ…
言い過ぎも、言葉足らずも、伝わらない
見ても聞いても、理解できない
ほんとに、人間は怪物と紙一重ですね
わたし的には、校長先生がやばいかなぁ…
やっぱり最後・・・。
是枝監督の映画は、好きではありません。
映画の終わり方が気に入らない。いつもどっちなんだよ!とツッコミ入れたくなるから。
毎回モヤモヤします。だからもう2度と観ないと観るたびに心に誓ってました。
でも、今回は脚本が違うということなので、それじゃぁということで鑑賞することに。
観た感想は・・・。
私の息子も義務教育課程の教員をしておりまして、思わず先生やめたほうがいいんじゃない?と言ってしまいそうな、どうにもこうにもやりきれない理不尽さに引き込まれてしまいました。映画の終わり方は好きじゃないけど、この人の映画は観ているほうを引き付ける魅力はあるんですよね。
でも、やっぱり最後はモヤモヤでした。
おい、このあとどうなるの????というところでエンドロール。
そしてまたモヤモヤ。
そのモヤモヤがいいと評価されているのは重々承知していますが。
やっぱりこういうのって好きになれない。
いろいろ社会問題をテーマにするところ、そして、我々が目をつぶってしまっている世界を見せてくれるという点では、いい映画なんだろうなと思いますが、私はスッキリ観終われる映画が好きです。
噂や憶測の醜さ
極上のサスペンス
是枝裕和が坂元裕二の脚本で映画を撮る…と、聞いただけで期待感が上がった本作。
やはり、坂元裕二の作劇は見事で、教師による行き過ぎた指導、学校内のいじめ、組織的隠蔽という社会問題を材料にすることで観客を巧みに惑わせる。だがしかし、これは歴としたサスペンスだ。
是枝監督の子供への演出は相変わらず上手い。
それに応えた黒川想矢くん、柊木陽太くんの二人が素晴らしい。
そして、本作もまた安藤サクラである。一人息子を全身で愛し全力で守ろうとする、夫と死別したシングルマザーを自然体で演じてリアルだ。どんな監督の下でも説得力のあるパフォーマンスを見せる安藤サクラではあるが、是枝監督こそ最も相性が良いのではなかろうか。
そこに永山瑛太、田中裕子という坂元裕二馴染みの役者が加わって実力を発揮している。
坂元裕二という脚本家に初めて衝撃を受けたのは、テレビドラマ「わたしたちの教科書」だった。学校を守ること(=学校という制度を守ること)が最大の正義だと考える女性校長の存在が、このドラマと本作で共通している。
同じ事象でも視点によって見えない事実があることを描いている点においても、「わたしたち…」に共通するように思う。
対立側の視点で再現することで種明かしする構成はサスペンスでは珍しくないが、本作はそれを“羅生門効果”で見せていく。
また、種を明かした後の解釈を観る側に背負わせるところも「わたしたち…」に通じ、これは是枝作品全般にも通じるものだろう。
少年はなぜ、教師を貶めるような言動をしたのか。
少女はなぜ、少年のことで教師に嘘をついたのか。
子供たちはなぜ、目の前で起きた事実をそのまま教師に伝えることができなかったのか。
校長はなぜ、一人の教師に全てを背負わせることができたのか。
同僚教師たちはなぜ、追いつめられた教師を助けられなかったのか。
虐待親父はなぜ、息子のことを恐ろしいと言ったのか。
教師はなぜ、たったひとつの作文で二人の少年の関係に気づけたのか。
疑問は謎のまま、このテクニカルなサスペンス映画の仕掛けを純粋に楽しみたい。
実にお見事な映画だ。
永山瑛太の二面性の描きかた、少年たちの同性愛を匂わせたところにやり過ぎ感があり、☆0.5減点。
エンディングの後、母安藤サクラはどこまで真実を理解するに至るのだろうか…。
子役が瑞々しい
映画はあまり前情報を入れずに観に行きます。私の語彙力が乏しいのが残念ですが…素晴らしい映画でした。
「桐島部活辞めたってよ」みたいに視点が変わっていきます。ひとつの出来事でも立場によって感じ方、捉え方が全く異なるんだなぁと改めて思いました。安藤サクラの学校側に話が通じない苛立ちに共感し、校長や先生方に憤りを感じ、理不尽な目にあい、薄情な恋人にも去られる瑛太に同情し、子供時代の制御不能な複雑な感情を思い出し、たくさん心を震わせた映画でした。最近めっきり涙もろく、2回くらい涙がほろりとこぼれたのでした。
学校の管理職が怪物
あの火事からそれぞれの登場人物の視点で語られる物語の真実。どんどん謎が解明されていく展開が良かった。しかも、その謎もなんとも切ない。
先生の人間性や自殺の描写などがうまいミスリードを誘っている。
学校の校長教頭など管理職の対応がとても良くない。
あと、担任もあれだけ派手ないじめがおきていたらさすがに気付きそうだが。もしかしたら見て見ぬふりをしていたところもあったのかもしれない。
いずれにせよ、学校の保身に走った管理職たちが1番の怪物と言っていいのではないか。
クラスの子供たちや、学校の先生たちなど、個人だけでなく、複数人になればなるほど怪物になっていくのかも。
子どもには子どもだけの世界がある。2人の関係性は恋愛とも言い難い何か特別な関係性だったと思う。
答え合わせがしたい。
無いことも描く事の是非
同じ出来事を複数の目線で見て比べると違うものに見える、という描き方は好きな手法ではある。が、この作品はおそらく意図的だろうけど、違う物を見せてる。
例を示すと保利先生は目線によって全く違う描かれ方をしている。謝罪の時に飴を舐め出す異常性。これは母親の疑いというバイアスが見せた幻であり現実なのだろう。
私が好きな目線を変えると見え方が変わるというのは、あくまでも「同じ物」を見せるのだが、本作はある意味見た角度の違いに感情や内面を通した「その人にしか見えない事実」を描いている。
これは描き方として正しいのか?
私には鑑賞者の見方に委ねないやり方のように見えた。
それが悪いとは思わない。作り手の意図がストレートに映る、こう見て欲しいという意図の通り受け取れる。悪いことでは無いと思う一方、じゃあ真実はどうなのか?
全て見れば保利先生は謝罪の途中に飴を舐め出すような人では無いとわかる。じゃあ飴を舐め出す演出は必要だったのか?
この映画の本質はいない怪物を鑑賞者が見つけたくなる事へのアンチテーゼではなかろうか。その作品でこの手法を取ったのはどういう意図からか?
考えさせられる作品だった。
にしても、子供が叫びながら走る演出ってどうなんだろうねw
ここまで【演出・手法に関して】
【映画の中身に関して】
子供って平気でウソをつく、大人は立場で嘘をつく。
子供は残酷で大人もまた残酷だ。
どちらも後戻りは難しい。
子供も親も先生もほとんどの人のほとんどの言動に悪気はない。だからみんな幸せになってほしいな。
【音楽:坂本龍一 に関して】
パンフレットを見て知ったが書き下ろしと演奏は2曲のみだったそうな。難しい作品に向き合われたが「残念ながら」と記されていた。それでも静かに映画を支えるに足る良い音楽だと思いました。
当たり前の幸せって、、?
とてもとても楽しみにしていた怪物観てきました!
期待以上でした。
主人公である2人の小学生が持つ特性については、口コミで知った状態で観ました。
そのためか、他の登場人物の何気ない言葉が突き刺さるようでした。
「結婚して、子供が産まれて、そんな普通の幸せでいいのよ」
「男らしくないぞ!」
私自身、子どもを妊娠した時、この子が同性愛者でも、トランスジェンダーだったとしても、
"理解してあげよう"
"できるだけサポートしてあげよう"
と思っていました。
でも、そんなことを思っている時点で、私の中には、抵抗感があったのだと思います。
そんな私のちっぽけな抵抗感を悠々と超えたところに、この映画は私を連れて行ってくれました。
主人公である2人が一緒に笑い合いながら走っているだけで、涙が出てきました。
おそらく今まで経験したことがない種類の涙です。
人が人と心を通わせる、自分が自分でいられる、その瞬間はなんて美しいんだろう、と思いました。
終盤で校長先生が言っていた、
「一部の人にしか手に入らないことを幸せとは言わない。
みんなが手に入れられることを幸せって言うんだ。」
というセリフにもドキっとしました。
私自身、就活、婚活、妊活を経て現在に至りますが、その〇〇活をしてたとき、とても苦しかったのを思い出しました。
みんな当たり前に手に入れているのに、なぜ、私は手にできないの?という焦燥感と劣等感に苛まれていました。
でもその「みんな」って誰なんでしょう。
「普通」ってなんなんでしょう。
「当たり前」ってなんなんだろう。
自分の外側に求め続けて、でもまだ足りなくて。
そうなる前に自分の中に幸せを見出していたら、また違う人生だったかもしれません。
この映画に出会えて、私は幸せです。
いい作品
日本語字幕つきで鑑賞。 全く予備知識なしにまっさらな頭で見ると先ず...
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