「私が見えているものなんて私の感情でしか作られない。誰かを可哀想な人...」怪物 ばななーぴーさんの映画レビュー(感想・評価)
私が見えているものなんて私の感情でしか作られない。誰かを可哀想な人...
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私が見えているものなんて私の感情でしか作られない。誰かを可哀想な人や悪者にするときに思わなきゃいけないのは、それが全部私の気持ちだけで作られたものだということに自覚を持つことだ。どんな物語だってそう、悪役には悪役の正義がある。みんな自分を守りたいしそのために誰かを責めたい。映画を見てる私が怪物になっていたと、観終わってから自覚する。誰かを悪者にして怒りをぶつけるのは簡単だけど、全部は知るところから始まりたい。許すことも許さないことも、信じることも諦めることも。私には、どんな事情でも受け入れる覚悟と、知る勇気が必要だと知った。人のままならなさ、報われなさ、わかってもらえない悲しさを抱えながら、それぞれに大切なものがあり、それを守るのにどうにも必死で、自分の大切なものだけは、それだけは守られますようにと、登場人物の全員が思っていたと思う。それが他人なのか、自分なのか、そこで生き方が変わってしまう。この映画一本から、自分が向き合うべき対象がいくつも浮かび上がって、何にここまで心を震わせられたのかと一言では説明しづらいほどの濃密さだった。まだしばらくこの映画について考えると思う。でももう二度とこの映画を「初めて観る時」には戻れないのが悔しい。できるなら何度でも、初めてこの映画を観たい。
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