劇場公開日 2023年6月2日

「「感動」で片付けてはいけない」怪物 Jongoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「感動」で片付けてはいけない

2023年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

まず坂元裕二の脚本が素晴らしい。
第1幕の主人公早織から怪物に見えた保利。第2幕の主人公保利から怪物に見えた湊。そして、第3幕の主人公湊から怪物に見えたのは、自分の知らない自分と、それを誰にも話せない空気を作る社会だった...
怪物に見える対象が次々に変化し、観客の感情移入を手玉に取る構成は見事としか言いようがない。
そして、怪物探しの果ての第3幕にあったのは、2人の少年のかけがえのない時間。ここは是枝監督の手腕が存分に出ていたと言って良いだろう。特に片足けんけんのシーンでは、この映画で初めて「他者を思いやり痛みを分かち合おうとする人間」が映されており、今年ベスト級の尊さを誇っていた。

ラストに関して、彼らが生きているのか死んでいるのか、それはどうでも良いと思う。
問題は、あれが何であれ現実ではないということ。
本当に素晴らしい撮影で、「感動」「美しい」「希望」という言葉でこの作品を締めくくりたくなるが、彼らは現実ではついに受け入れてもらえなかった。
あの美しい光景を、現実世界でも実現できるようにするために、僕たちはどうすべきなのか?何が出来るのか?
それを考えることが、この作品の価値なのではないかと強く思う。

Jongo
大吉さんのコメント
2023年6月6日

感動(または批判)で片付けてはいけないですよね。この作品の価値が多くの人に伝わればいいと思います。

大吉