「本当に素晴らしい」怪物 白波さんの映画レビュー(感想・評価)
本当に素晴らしい
是枝裕和監督の新作。
是枝作品としては珍しく速度が早い作りでした。
脚本が実に巧みで“立ち位置が違えば見え方も全く変わる”、その3つの視点を組み合わせた作りも見事。
多様性をテーマに、その危うさをじっくり見せてくれました。
導入のエピソードから物凄く不穏で、嫌な気持ちでいっぱいになるんですよ。
怪物。それは誰もが抱えていて、誰もが作り出せるというのがよく伝わってきます。
序盤は安藤サクラの芝居が全部持ってってますが、やはり子役の二人がすごいですね。
瑛太も2方向の教師をよく演じ分けていました。
それと最初こそ怪物そのもののような校長の存在。
怪物にみせてその実、要所要所で物語を動かしているのが、本当うまい位置付けでした。
3月に亡くなった坂本龍一の音楽も、作ったのは二曲だけなのに全ての曲が本当にフィットしているから驚きます。
そうして迎えた物語の終わり。
それは観客に見えている二人とは別に、やはり違う視点から見えている真実があるのだと信じています。
少なくとも二人は自分達を受け入れてくれる希望を見つけ、そこに向かって走り出していました。力一杯に。
そしてこれがとても美しいんです。
本当に素晴らしい作品でした。
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