「タイトルなし」怪物 ゆっこさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
三者視点で物語が違って見える話
こういうのって視点が変わることで、人間の隠された陰湿さとか実はこんな思惑、真実が…とかの展開になりがちだけど、明かされてくほどに誰も悪い人も怪物もいなかった…
母から見た教師はすごくやばい奴にしか見えないけど、不器用な善良教師で
教師から見た生徒は問題児にしか見えないけど、本当はクラスメイトからのいじめをかばう友達同士で
子供視点で本当のことがわかる
自分から見える世界はどれだけ狭く、偏り、見ようとしたものしか見えない、見ようとしても見れないことで溢れてるんだろうか
三者とも同じ時系列なのにまるで別世界だった
そして誰もが誰かを想っていた
なんで髪切ったんだろ?ってことがわかった時、みなとが嘘をついた理由がわかった時なんとも言えない気持ちになった
親に豚の脳みそって言われる理由が頭が悪いことではなく同性愛者だからということに震えた
親視点では殺伐としてた世界は、二人の視点からだととてもキラキラしていた
まぶしくて不自由でくるしくて愛しかった
みなとが最後に「生まれ変わりなんてないよ」って言ったことがよかったな…
親達が必死で捜してる中、子供達二人は二人だけの世界を陽の光のなか走っていて希望に満ちていた
永遠に続いていきそうなくらい美しかったし、二人だけのピュアラブストーリーだった
…えっこれもしかして二人死んでるってことないよね?
二人が二人なりに生きていくこと、二人の絆を再確認した、もしくは親の呪縛から逃れた描写かと思ったんだけど、ワンチャン二人が逃れるにはこの世界からいなくなる…とかじゃないよね?信じてる…
でもそれすらもわからないんだよ、いっそ
自分の見たい世界しか見ないし、見れないし、わからないんだもの私達は
だから無理解が生まれて、分かり合えなくて、人の数だけ踏みこめないその人だけの世界があって、なのに私達は知らない人間の事件を、だれかの噂話を、さも自分は真実を知ってるかのように何もかもわかってるかのように語る
私達は何もわかってないこと、誰かの全てを知りえないことを、そしてそれを忘れて全て見えてる気になってることを優しく突きつけられる映画だった