「禁じられた中田ホラー」禁じられた遊び 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
禁じられた中田ホラー
賛否はあれど『ミンナのウタ』『あのコはだぁれ?』で低迷を脱した感のある清水崇だが、こちらは…。
未だ低迷中の中田秀夫。何せ歴史に残る『“それ”がいる森』なんて撮った訳だし。それでも監督作が途切れないのが驚き。
こちらは歴史に残る『“それ”がいる森』の後の2023年の作品。劇場では観に行かず、レンタルはやってないらしく、先日のWOWOW放送でやっと鑑賞。
ちょっと見たいと思っていた。あらすじだけ見ると、久々の本格派で今度は期待出来そうな…。
そう言い続けてきて何度落胆失望した事か。
いやいや、今度こそ。それとも、やっぱり今回もやっちゃった…?
一流会社に勤める直人はマイホームを建て、妻・美雪と息子・春翔と夢のような幸せな暮らし。
ある日春翔がトカゲの尻尾を見つける。トカゲは尻尾が切れてもまた生えてくる事から、尻尾も埋めてある呪文を唱えるとまた身体が再生するとつい嘘を付く。
信じた春翔は尻尾を埋め、毎日庭で呪文を唱える。エロイムエッサイム、エロイムエッサイム…。すると、トカゲが…!
突然の悲劇…。美雪と春翔が交通事故に遭い、春翔は一度は心肺停止するも何とか一命を取り留めたが、美雪は…。
母親の死を受け入れられない春翔。こっそり母親の指を切り落とし、庭に埋める。そして毎日唱え続ける。エロイムエッサイム、エロイムエッサイム…。
妻の死、嘘を教えそれを信じる息子に心が傷む直人。
だがやがて、埋めた土が盛り上がり…。
原作小説はあるようだが、スティーヴン・キング原作の『ペット・セメタリー』を彷彿。
これ、家族だけの話に絞れば、愛する人を生き返らせようとする余り残酷な悲劇が…と『ペット・セメタリー』のようにもなった筈だが、おかしな要素やおかしな展開へ…。
直人の元同僚である映像ディレクターの比呂子は葬儀で直人と再会。以来、奇怪な現象に見舞われる。
それは以前にも。直人に密かに想いを抱いていた比呂子。奇怪な現象に襲われる。
それが直人への想いを知った美雪の“生霊”である事が分かり、比呂子は会社を辞めたのだが、再会した事により怨霊となって…。
私の夫に近付かないでッ!
凄まじい女の嫉妬。生霊や怨霊となってまで…。
死んで怨霊になるのは分かるけど、目新しいとは言え、生霊って…。ちょっと無理矢理感が…。
何故美雪がそんな霊力を持っているか一応は過去も描かれるのだが、貞子の過去のように深み無く淡白だし、驚きも無いし、『リング』の二番煎じ。
もっとホラーやミステリーでゾクゾクさせて欲しかった。
織田無道みたいなシソンヌ長谷川が出てきた時点で気付く。あ、これ、コメディだったんだ。
その織田無道みたいなシソンヌ長谷川と清水ミチコが出てきた時点でまた気付く。あ、これ、バラエティ番組だったんだ。
にしても、橋本環奈ってこんなに演技下手だったっけ…? 特別上手いと思った事ないけど、今回はいつにも増して。恐怖にひきつった顔なんて福田学芸会に出てる時の顔芸と同じ。ホラーは演技力が求められる。演技力の不味さが露見してしまった。
今回微妙なハシカンに比べ、重岡大毅は幾分マシだが、役柄も含めファーストサマーウイカが強烈インパクト。ラストの特殊メイク時より、良妻賢母のように見えて素顔で嫉妬と凄みを見せた時の方が怖っ…。
ウイカの怪演と話の分かり易さで歴史に残る『“それ”がいる森』なんかよりマシだけど、それでもねぇ…。
セクハラ/パワハラ描写があからさま過ぎて、ダサッと言うか、古ッ…。
織田無道みたいなシソンヌ長谷川とその助手が並んで防御呪文を放つシーンは笑いを堪えるのが困難なショートコント…?
織田無道みたいなシソンヌ長谷川のオフィスで怨霊美雪が襲い来るシーンはちゃちぃドタバタ劇。
クライマックスもお決まりのグダグダ。ウイカの怪演と特殊メイク虚しく、モンスター化した怨霊美雪は『貞子3D』のクライマックスと何が違う…?
一度死んで生き返った者はさらに恐ろしく。美雪の事かと思いきや…すぐ分かる。ダミアンや俊雄クン狙い…?
落雷による炎上のCGがショボくてゲンナリ…。
悲しいラストを誘ったつもりだが、『ペット・セメタリー』の爪の垢を煎じて飲みなさい!
歴史に残る『“それ”がいる森』よりちょっとマシなくらいで、結局は今回もまた期待に違わぬ劣化Jホラー、駄作中田ホラー。
そりゃそうだろう。ホラー一筋の清水崇と違って、携帯落としたミステリーや駄菓子屋ファンタジーなどふ~らふら。
ホラー一本でやれとは言わないけど…、せめてもっと本気の怖さと面白さを見せてくれ。
次はまた“事故物件”に住むみたいだけど、前もガッカリ物件だったし、期待は無理だね。
中田ホラーはまだまだ禁じられたまま…。
それから、
子供に嘘教えちゃいけません!